スーパー耐久ST-Qクラスに参戦するGR Yaris DAT Racing Concept 2025年のENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONEは、4月26〜27日に三重県の鈴鹿サーキットで第2戦が行われた。今シーズンも他のクラスに該当しない、STMOが認めた開発車両が参加できるST-Qクラスはさまざまな車両が集っているが、第1戦、第2戦に出場しているGR Team SPIRITのGR Yaris DAT Racing Conceptは、どんな目的をもっているのだろうか。
2025年については、第2戦からMAZDA SPIRIT RACING、Team SDA Engineeringが参戦を開始しているが、第1戦から参戦を続けているのが、スーパー耐久の名門GR Team SPIRITが走らせるGR Yaris DAT Racing Conceptだ。トヨタの開発ドライバーである大政和彦がAドライバーを務め、山下健太、第1戦では松井孝允、第2戦では中山雄一、さらにエンジニアも兼任している河野駿佑がドライブしている。
そんなGR Yaris DAT Racing Conceptだが、名前から分かるとおり2023年にスーパー耐久に初登場したダイレクト・オートマチック・トランスミッション(DAT)を使っていることは分かるが、それ以外の開発目的はどんなものだろうか。チームに加わり、トヨタ自動車でGRヤリスの開発を担当する山田寛之主査は、この車両の目的について「GRヤリスは年々進化していて、お客さまにお届けしていますが、未来のアイテムについてレースという現場で鍛え、フィードバックを繰り返すために参戦しています」と説明した。
この車両自体は、2024年までORC ROOKIE Racingが使用していた32号車ORC ROOKIE GR Yaris DAT conceptがベース。ブラックとレッドのデンソーカラーに変更されているが、「サスペンション等、いろいろな諸元を変えているので、昨年までとは乗り味が違います」という。具体的にどんなアイテムが開発されているかは、将来の商品計画に関わるためまだ秘密な部分があるものの、やはりスーパー耐久というフィールドを使って開発を行うことは、TOYOTA GAZOO Racingが掲げる『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』の考え方のとおり、アジャイルな進化に繋がっている。
「一方で、参戦にあたってはプロのレーシングドライバーの皆さんと、プロのレーシングチームであるGR Team SPIRITさんにサポートしていただいていますが、レースのノウハウもあり、我々では埋め切れないセンサーが優れています。ドライバー同士の経験と感覚、チーム運営をスパイラルアップすることを目指して競技に参加させていただいています」
今季の目的は、ズバリ「あるタイミングのモデルイヤーに対する、最終的なアイテム、性能目標を決めること」だという。もちろんDATの制御も、終わりなき開発のメニューに含まれている。TOYOTA GAZOO Racingがサーキットでプロのレーシングドライバーとともに開発を進めるようになってからの進化は劇的なスピード感があり、GRモデルは非常に早いモデルサイクルで進化を遂げている。GR Yaris DAT Racing Conceptはその進化をさらに加速させるための一台というわけだ。
こういった取り組みは、すでにGRモデルを購入したカスタマーに対しても、アップグレードとしても提供されているものもある。今季、GR Yaris DAT Racing Conceptがスーパー耐久への参戦を通じて得られたものは、近い将来のモデルや、アップグレードに反映されるはずだ。もちろん、同時進行でニュルブルクリンクを舞台に戦っているTG-RRのGRヤリスからも反映されるだろう。フィールドが多ければ多いほど、その収穫は多い。ファンのみならず、これらの戦いを通じて得られた“成果”を楽しみに待ちたいところだ。