2025年F1第4戦バーレーンGP スタート 2025年F1第6戦マイアミGPの金曜日に行われた国際自動車連盟(FIA)の会見で、メディアからこんな質問がトト・ウォルフ代表(メルセデス)とクリスチャン・ホーナー代表(レッドブル)に飛んだ。
「F1委員会では、持続可能な燃料の導入に伴い、来年の燃料コストが引き上げられました。その点についてどうお考えですか?」
これは、4月末に開かれたF1委員会の会合で、持続可能な燃料の開発費が想定よりも高額であることが明らかになり、重大な問題になっていることに対する質問だった。現在の燃料は1リットルあたり22ドルから33ドル(約3167円〜4750円)だといわれているが、2026年から導入される持続可能な燃料は、現段階ですでに170ドルから225ドル(約24474円〜32392円)と約10倍に跳ね上がると指摘され、このまま開発が進めば、300ドル(約43190円)を突破する可能性があると警鐘が鳴らされている。
この質問に対して、まずホーナーが次のように回答した。
「これはパワーユニットマニュファクチャラーのひとりから提起された問題だ。我々としては、これは重大な問題ではないと考えている」
「ただし、導入される新しい持続可能な燃料には、多くの開発コストがかかることは間違いない。なぜなら、燃料メーカーは新しい燃料の開発に非常に積極的に取り組んでいるからね。したがって、この問題は潜在的に大きな性能差を生む要因のひとつとなるだろうから、将来的に一定の枠組みを導入するべきかもしれないと思う」
ホーナーが比較的落ち着いた回答を行ったのは、燃料のコストが予算制限の対象外となっていることと無関係ではない。ただし、燃料メーカーからワークス体制で燃料を供給されているトップチームにとっては大きな問題ではないかもしれないが、燃料を購入しなければならないその他のチームにとっては差し迫った財政的負担に繋がる可能性がある。自チーム以外にもマクラーレン、ウイリアムズ、そして2026年からアルピーヌにもパワーユニットを供給するメルセデスのウォルフは、こう語る。
「私の見解では、コストが高くなる理由は、サプライチェーン全体とエネルギー貢献がグリーン化する必要があるからだ。そのすべてを実現するには、非常に高価な特定の原料が必要で、そのコストは誰もが予想していたよりもはるかに高くなっている。そのため、リットル当たりの価格を下げるために調整可能な点がないか検討する必要がある。我々はオープンマインドで臨みたいと考えている」
「ペトロナスは私たちの素晴らしいパートナーだ。彼らは技術的にプロジェクトに完全にコミットしており、彼らと共に、規制を変更して財務的に持続可能にする方法について検討を始めている」
サプライチェーンとは、原料調達に始まり、製造、在庫管理、物流、販売などを通じて、物資が消費者の手元に届くまでの一連の流れを指す。つまり、今回の燃料価格高騰の要因は開発競争の激化というよりも、化石燃料に代わる原材料費の価格と輸送費の高騰が関係しており、これはトランプ関税によって不透明感が続く今後も収まりそうにないだろう。
F1は走る実験室として莫大な開発費が注ぎ込まれ、それがチーム間の勢力図に大きく影響を与えてきた側面がある。そのために導入されたのがコストキャップだった。ウォルフが言う「規制を変更して財務的に持続可能にする方法について検討を始めている」というのは、2026年から導入される持続可能な燃料の価格が高止まりした場合、コストキャップの見直しの議論が始まるかもしれないことを意味しているものと考えられる。
[オートスポーツweb 2025年05月06日]