ジョーイ・ロガーノ(Team Penske/フォード・マスタング)が失地回復、起死回生の今季初勝利を奪取 前週タラデガでの失格処分を経て、迎えた2025年NASCARカップシリーズ第11戦『ウルト400』では、その当事者のひとりであったジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が失地回復、起死回生の今季初勝利を奪取。残り4周で競り合ったマイケル・マクドウェル(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が散り、最後は僚友ライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)とロス・チャスティン(トラックハウス・レーシング・チーム/シボレー・カマロ)を抑え切ってのオーバータイム決着を制し、シリーズ3冠の実力を誇示する今季7人目のウイナーに輝いた。
その役割は“ベビーフェイス”か、はたまた“ヒール”か。何かと論議を巻き起こすチャンピオン経験者のロガーノは、今季待望のトップ5フィニッシュを達成したかに見えた前戦タラデガの決勝後、再車検で車両規定違反が発覚。ロガーノの22号車はNASCAR規則によるスポイラーボルトが1本欠けた状態だったことが発覚し、奮闘もむなしく失格の処分が降されていた。
「僕ら、チーム・ペンスキーはあからさまに不正行為をするようなチームではない」と改めて強調した当のロガーノ。「それは僕らのやり方ではないからね。基本的に(スポイラー)ブレースのボルトからナットが外れてしまっていたようだが、ボルトはまだそこにあった。ただ少し歪みが生じたのは確かで、競争上のアドバンテージになるか? と言われたら少しは影響するだろう。それでレースの順位が変わったか? と言えば『NO』だし、全員がワイドに争っている集団のなかで、そこに違いは生まれないよ」
「ただし、それがルール違反であるという事実は変わらない。だから……ペナルティを受け入れるしかないね」
そう語っていたロガーノは、改めてこのテキサス・モーター・スピードウェイでチームやクルーとの仕切り直しを誓うことに。その一方、週末のプラクティスから躍動を見せたのは好調カーソン・ホセヴァー(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)で、そのまま予選でポールウイナーに輝き、カップシリーズ56戦目の出場にして初のポールポジションを射止めてみせた。
「本当に大きな勝利だ。彼らにとって本当に大きなことで、彼らが成し遂げたことは本当に感銘を受ける」と、まずはチームの働きを称賛したホセヴァー。
「ピットロード内外、本拠のワークショップなど、この77号車に取り組んでいる全員が、僕が昨季スパイア(・モータースポーツ)でスタートを切ったときからともに変わらない、まったく同じグループなんだ。多くのメンバーがレースの真っ只中にあって、僕らチームをここまで成長させることができたのは非常に大きなことだね」
迎えた決勝は序盤戦からいくつものトラブルが発生し、合計で12回のコーションと13名のドライバーによる20回のリードチェンジが記録されるなか、今季連勝も果たしているデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が突如のパワーダウンに見舞われ、自身の燃料漏れによる引火でサイドウェイ状態に陥りながらリタイアを喫し、アンダーイエローのまま前戦勝者オースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)がステージウインを得ることに(最終的に60周をリード)。
続いてジョシュ・ベリー(ウッド・ブラザーズ・レーシング/フォード・マスタング)とカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が牽引したステージ2は、ふたたびコーション発動のなかラーソンが制していく。
ベリーは最終ステージの序盤でクラッシュするまで首位を走り、全ドライバーのなかで3番目に長い周回(41周)をリード。残り50周で6回のコーションフラッグが出されるなか、チェッカーまで39周で3番手からスピンしたカイル・ブッシュ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)や、残り31周で多重クラッシュに巻き込まれたポールシッターのホセヴァー、さらにステージ1覇者シンドリックも残り21周でマルチタングルの犠牲になるなど、有力候補が次々とアクシデントに沈んでいく。
そしてレース最多の90周をリードしたラーソンも、残り23周のリスタートでマクドウェルにパスされ主導権を失うと、さらにターン3でタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)にもアウト側を抑えられ、大きくスライドして失速。そのレディックも週末スペシャルカラーをまとってトップ10圏内を走行したが、残り14周のターン1でダニエル・スアレス(トラックハウス・レーシング・チーム/シボレー・カマロ)に撃墜されてしまう。
ここで主役の座の一角に躍り出たのが27番手発進だったロガーノで、ラスト10周勝負からマクドウェルとブレイニーを追走し、残り4周でトップに躍り出る。このターン2で71号車マクドウェルのボトム側へダイブした22号車ロガーノに対し、ブレイニーとの攻防を強いられたマクドウェルは1周後にクラッシュ。これで最後にして日曜午後12回目のコーションが発動される。
このオーバータイム決着で先頭に並んだチーム・ペンスキー艦隊に割って入り、最後はチャスティンがロガーノを追ったものの、ホワイトフラッグでも届かず。「ゆっくりと着実に、少しずつ、少しずつ、順位を上げていった」と語った不遇のチャンピオン経験者が、チームを救う今季初優勝を手にした。
「ピットストップの状況は本当に厳しかったが、ピットクルーはうまく対応してくれて、あちこちで何度かチャンスを掴むことができた。昨日は予選でうまくいかなかったのは分かっていたが、とにかく粘り強く頑張った。あちこちで粘り強く続ければ、最終的にここで勝利を掴むことができる。勝利を掴むことができて本当にうれしい……本当にうれしいよ」と、自らの境遇も念頭に喜びを語った勝者ロガーノ。
「このスポーツは本当に急速に変化する。こんなジェットコースターのような展開は信じられないくらいスゴいよ。チームを誇りに思うし、ついにAAAインシュアランスをビクトリーレーンに導けたことを誇りに思う。彼らは僕がペンスキーに加入して以来、13〜14年もの間ずっとパートナーだった。彼らとはまだ一度も勝利したことがなかったから、ここで勝利を収めることができて最高だ。楽しい夜になりそうだね!」
併催されたNASCARクラフツマン・トラック・シリーズ第8戦『スピーディキャッシュ・ドットコム250』は、ポイントリーダーのコーリー・ハイム(トライコン・ガレージ/トヨタ・タンドラTRD-Pro)が2度のオーバータイム勝負を制し今季3勝目、キャリア通算14勝目を獲得。同じく併催のNASCARエクスフィニティ・シリーズ第12戦『アンディーズ・フローズン・カスタード300』では、先週タラデガで負傷したコナー・ジリッシュの代役として、その88号車をドライブしたカイル・ラーソン(JRモータースポーツ/シボレー・カマロ)が、こちらも2度のオーバータイムをレイトストップ戦略を駆使して今季2勝目、テキサスでは2度目、そしてキャリア通算17度目の勝利を飾っている。
https://youtu.be/8LVwS8TxA5Y
[オートスポーツweb 2025年05月07日]