京大病院=京都市左京区 脳内の免疫機能を調整するタンパク質がなくなると、アルツハイマー病の原因物質が減少して認知機能が改善すると、京都大などの研究グループが7日までに発表した。このタンパク質を標的とした新たな治療法の開発が期待されるという。論文は英科学誌ネイチャーに掲載された。
アルツハイマー病は認知症の大部分を占め、脳内にアミロイドベータ(Aβ)と呼ばれるタンパク質が蓄積し、神経細胞が破壊されることで発症する。近年、脳内の免疫細胞「ミクログリア」がAβの除去に深く関わっていることが報告されている。
研究グループは、ミクログリアに存在し、免疫機能を調整するタンパク質「Tim―3」が脳の成長につれて増加することを確認。アルツハイマー病のマウスを使い、遺伝子改変でTim―3をなくしたところ、Aβの蓄積が50〜60%減少し、認知機能が改善した。マウスの遺伝子を解析すると、Aβの除去に関わる遺伝子が増えていたという。
近年、Aβを除去する薬剤「レカネマブ」を使った治療法が注目を集めているが、脳のむくみや出血といった副作用が懸念されている。Tim―3の働きを阻害してAβを除去する薬剤を開発することで、レカネマブとの併用により、副作用を低減させる可能性もあるという。
京大大学院医学研究科の木村公俊特定講師(臨床神経学)は「他にもミクログリアでAβといった原因物質の除去につながる物質が存在する可能性があり、アルツハイマー病など多くの神経疾患の治療に結びつけたい」と話している。