都倉俊一氏、文化庁長官と並行しミュージカル上演、主演松坂慶子と大原櫻子 長崎被爆家族の物語

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2025年05月08日 15:00  日刊スポーツ

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ミュージカル「幾光年−Light Years−」製作発表記者会見に出席した、左から都倉俊一氏、松坂慶子、大原櫻子(撮影・村上幸将)

文化庁長官で作曲家の都倉俊一氏(76)のオリジナルミュージカル「幾光年−Light Years−」製作発表記者会見が8日、都内のI'M A SHOWで行われた。


「幾光年−Light Years−」は、長崎の被爆をモチーフにした作品で、被爆80年を機に7月31日、8月1日に同所で上演する。都倉氏が、1994年(平6)11月に英ロンドンのシャフツベリー劇場で上演した全編英語の舞台「OUT OF THE BLUE」を現代風に書き直した。


被爆者の両親を持つ77歳のハナと孫娘ヒデミが主人公で、松坂慶子(72)がハナ、大原櫻子(29)がヒデミと若きハナの1人2役を務め、ダブル主演する。今回はトライアウト公演という位置付けで、都倉氏は「ロンドンで残念だったのは全く無関心…遠い、遠い極東のできごとだった。今回、1度(日本で)上演しなければいけない…トライアウト公演から、また米、英で上演したい。30年前の作品ではなく、これが原点」と強調した。


都倉氏は「大女優の松坂さんが話を受けてくれたことが本当にうれしかった。NHKで音楽を担当した作品で、ご一緒した」と松坂の主演を喜んだ。松坂から、ミュージカルについて「昔、ちょっとありましたけど…先生に(歌)教えていただけますでしょうか?」とリクエストされると、都倉氏は「松坂さんの曲、もう1曲書き下ろそうかな」と笑みを浮かべた。松坂も「特訓します」と答えた。


都倉氏は、文化庁長官としての顔もかいま見せた。「SNSが普及し、全てがデジタル化した中で、人間が人間に感情を伝えられるか? 生の歌で生の俳優が演じるのは不変」と強調。「文化庁的なことを言って申し訳ない。日本はコンテンツ、アニメもすごいが、まだまだライブパフォーマンスは先進国で遅れてる。これからの作曲家人生の中心はライブパフォーマンス。どう工夫を凝らした演出ができるか」と意気込みを示した。作品を踏まえ「今の世界情勢を見ても1番、犠牲になっているのは民、末端にいる国民。ウクライナにしても毎日、何千人と民が犠牲になる。消え去らぬ核兵器という事実がある。(今回の舞台は)反核運動をするのではなく、生身の人間の物語。犠牲者が何万人も出ている足元を振り返る」と熱く語った。


質疑応答で「文化庁長官の立場でありながら、並行してミュージカルを上演する思いは?」と質問が出た。都倉氏は「時間が本当になくて…今年、グランドミュージカルオペラとしてやりたくて、かなわなかった。私が、いかに公務に励んでいるか」と多忙な現状を吐露。それでも「すばらしいチーム都倉を得て、最終的に譜面を整備するのが作曲家としての仕事」と言い切った。そして「文化、芸術が日本を引っ張っていかないと。文化、芸術立国にならなければいけないのは明らか」と今後の日本の方向性を示した。

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