アウトドローモ・インテルナシオナル・ホセ・カルロス・パーチェを舞台に、ブラジルのモータースポーツにおける新時代の幕が上がることに ブラジルはインテルラゴスに位置する世界的なF1トラック、アウトドローモ・インテルナシオナル・ホセ・カルロス・パーチェを舞台に、ブラジルのモータースポーツにおける新時代の幕が上がることに。
新型SUVストックカーの『シボレー・トラッカー』に『トヨタ・カローラクロス』、そして『ミツビシ・エクリプスクロス』の3車種が登場する2025年のSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”開幕戦は、フリープラクティスのコースオープンと同時にトラックに飛び出し、公式にSUVストックカーをドライブする最初のドライバーとなったフェリペ・フラーガ(ユーロファーマRC/ミツビシ・エクリプスクロス)が、予選ポールポジション獲得から決勝を制覇するなど、初モノ尽くしの週末を席巻する結果となっている。
シリーズ45年の歴史を経て、セダンに取って代わる新型SUVストックカーが登場した週末。新開発の鋼管パイプフレーム“Audace SNG01”シャシーを採用し、車両重量1100kg、直列4気筒2.1リッター直噴ターボにより500PS/580Nmを発生するFRストックには、ペンスキー製ダンパーを採用した4輪ダブルウィッシュボーンや6速のXトラック製シーケンシャルシフトに加えて、クアルコム製チップのSnapdragon(スナップドラゴン)を搭載。この5G通信機能により、前方と後方の視界を確保したコクピットの360度カメラがファンにリアルタイムな双方向通信を提供すると同時に、カーボンファイバー可動式ウイングのDRSまで備わるなど、観る側にも新たな楽しみがもたらされる。
その新型SUVでいち早くコースインしたのが、同カテゴリー最年少優勝記録保持者であり、チャンピオン獲得経験を持つフラーガで、最初のラップを走り終え驚きを隠せない様子でその感触を振り返った。
「素晴らしいマシンだ。以前のモデルとは比べものにならないよ。よくできていて、しっかりと組み立てられており、とても頑丈だ。フル加速はしなかったが、本当にクールで大きな進歩を感じる」とフラーガ。
その僚友と同じく、今季より新天地に移籍加入したガエターノ・ディ・マウロ(ユーロファーマRC/ミツビシ・エクリプスクロス)も、最初のFPで13周を走行し1分37秒442という最速タイムを記録。以前、トヨタ・カローラが記録した1分38秒800のレコードを早くも更新してみせた。
一方、2回目のFPで最多周回を記録したのが、フラーガと入れ替わるように名門ユーロファーマRCを後にした“シリーズ3連覇男”のダニエル・セラ(ブラウ・モータースポーツ/ミツビシ・エクリプスクロス)で、総合2番手タイムをマーク。これで17年ぶりにSCBに復帰したミツビシ陣営はトップ5にさらに2名のドライバーを入れ、総合5番手に続いたエリオ・カストロネベス(RTRスポーツ・チーム/シボレー・トラッカー)が「本当に気に入った!」と語りつつライバル陣営の最上位となるなど、ミツビシが歴史的初セッションを席巻した。
その勢いは土曜の予選でも失われることはなく、Q1では今季TCRサウスアメリカ・シリーズにもフル参戦するネルソン・ピケJr.(スクーデリア・バンデイラスII/ミツビシ・エクリプスクロス)が、続くQ2ではFP最速のディ・マウロがトップタイムを計時していく。
そして最後の勝負で1分36秒922のベストラップを記録したフラーガが、このカテゴリーで通算14回目、記念すべきSUVシリーズ初のポールポジションを獲得した。
「本当に最高だ! 今日のポールポジションは本当に特別なものだった。このマシンで初めてポールポジションを獲得でき、特別な味わいがあるよ」と喜びを語ったフラーガ。
「でも、ほとんどの選手がトラブルを抱えていたので、全員の才能を過小評価してはいけない。でも今季にワクワクしているし、新しいプロジェクトを始めるのは大変で、僕はつねにこのカテゴリーの味方だ。チームの一員になれて本当にうれしいし、この船に乗せてくれたユーロファーマに感謝するしかない。明日もこの調子が続けばいいな」
そのフラーガから0.146秒遅れの2番手にも、同陣営の同じクルマに乗るリカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ/ミツビシ・エクリプスクロス)が着け、ミツビシがフロントロウを占拠する予選結果に。背後には5冠の“帝王”ことカカ・ブエノ(スクーデリア・キアレッリ/シボレー・トラッカー)と、現役最多勝の“予選最速男”こと、こちらも記録尽くしのチアゴ・カミーロ(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラクロス)が並ぶ2列目となった。
この週末はドライバーとチームの技術的適応のために、より多くのトラック時間を提供することを目的として、従来の週末2ヒート制ではなく特別な競技フォーマットを導入。機械的、電子的な設定を改良するための追加時間が提供されたことで、決勝は50分+1周の一発勝負に。
ここでもポールシッターの優位は揺らがず、フラーガが完璧なポール・トゥ・ウインを達成。その背後には8番手発進だった僚友ディ・マウロがエクリプスクロスと通算12度の王座を獲得する強豪ユーロファーマRCの盤石のコンビネーションを証明するかのように楽々と順位を上げ、その強さを誇示するワン・ツー・フィニッシュで歴史的一戦を飾ってみせた。
そして最後の表彰台には、昨季最終戦のウイナーでもあるギリェルメ・サラス(カバリロ・バルダ/シボレー・トラッカー)が入り、セダン時代最後の勝者が好調を持続するグリッド21番手からの復活劇を披露。ポディウム圏外の4番手争いでは、フェリペ・バティスタ(CARレーシングKTF/ミツビシ・エクリプスクロス)、ルーカス・フォレスティ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・トラッカー)、そして日本のモータースポーツでの20年以上の経験を掲げてシートを得たジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(フルタイム・ガズー・レーシング・チーム/トヨタ・カローラクロス)が、ファイナルラップまで三つ巴のバトルを繰り広げることに。
同週末、地球の裏側ではスーパーGTの2025年シーズン第2戦が開催されていたこともあり、その勝負を欠席して新時代SUV開幕戦での結果を得たかったオリベイラだったが、この最終周の接触事故によりペナルティを受け、レースタイムに20秒が加算されて13位に。ただし今週末の競技形式では、例外的に上位15名にポイントが与えられる採点システムが採用されたため、辛くもポイントを加算する結果となっている。
「ポールポジションを獲得し、レースに勝利し、ガエターノ(・ディ・マウロ)とともにファステストラップも記録することができ……本当に言葉がないよ」とパーフェクトな週末を終えた勝者フラーガ。
「このチームがつねに素晴らしいことは知っていた。全員が非常に冷静で、集中力があり、組織的。チームに迎え入れてくれたすべての人々に感謝するしかない。これからは、年間を通してその成果を得られるよう懸命に努力するときだね!」
同じく、チームの歴史的勝利に貢献したディ・マウロも「今日のチームにとってワン・ツー・フィニッシュという結果にとても満足している」と、その仕事ぶりを強調した。
「素晴らしいレースだったし、フラーガのレースにも祝福を送りたい。全力を尽くしたが、少し後方からのスタートでレース序盤にマシンをわずかに消耗させる必要があった。それでもとても満足している。ユーロファーマRCは、マシンの世代や状況に関わらず、最高のチームであることを証明してくれたね」
こうして幕を開けた新しいSUV時代のSCBストックカー・ブラジル“プロ・シリーズ”だが、続く第2戦は5月23〜25日にパラナ州西部カスカヴァルに位置するアウトドローモ・インテルナシオナル・ジルマー・ヴューで開催される。
[オートスポーツweb 2025年05月08日]