
最新のJNN世論調査で石破内閣の支持率が前の月から2.7ポイント上昇し、33.3%となった。石破総理が新人議員に商品券を配っていた問題が発覚するなど先月の調査では、就任後過去最低の30.6%となったが、やや持ち直した形だ。その原因とは?
【写真を見る】石破内閣の支持率が微増 消費税減税は見送り方針で新たな物価高対策の行方は?
内閣支持率上昇 関税交渉への期待感が要因か?石破内閣の支持率は、18~50歳代のどの世代でも支持よりも不支持のほうが上回る。「60歳以上」でようやく「支持できる」割合が不支持を上回るという“高齢層に支えられた”内閣といえる。若年層になるほど支持が低い傾向は内閣発足当時から変わらず、実はこの傾向は岸田前政権も同様だった。
先月調査では自身の「商品券問題」もあり就任後過去最低となったが、今回の調査では微増という結果となった。一見、支持率は底を打った印象だが相変わらず低調に推移している。
支持率が微増となった要因のひとつは、アメリカ・トランプ政権の関税措置への対応が考えられる。石破総理の最側近・赤沢経済再生担当大臣がアメリカ側とこれまで2度の交渉を行っているが、まだ目立った成果は出ていない。しかし野党も打ち出すことができる経済対策とは異なり、今回の関税交渉は現政権に託されているため、今度の交渉への期待感があるのかもしれない。
内閣支持率は3割台だが、今後の政府の交渉について「期待する」は44%「期待しない」は50%とほぼ拮抗している。こちらは内閣支持率ほど世代間に顕著な差はなく、どの世代でも4割以上が今後の交渉に期待している。今後の交渉で国益を損なうと判断される結果となれば支持率は下がるし、成果次第では支持率回復も見込めるという、政権にとっては今後の命運を左右する重要な案件だと言える。
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各党の支持率に目を向けると、1位は自民党だが、2位には野党第3党の国民民主党が定着している。国民民主が野党第1党の立憲民主党、第2党の日本維新の会を上回る傾向は6か月連続で続いている。各世代ごとに分析すると、18〜30歳代での国民民主への支持は自民党支持を超えて1位となっていて、この傾向も変わらない。
「手取りを増やす」をスローガンに去年の衆院選を戦い躍進した国民民主だったが、「年収の壁」引き上げをめざし、2025年度予算をめぐって与党と交渉したが結果は決裂した。引き続き178万円までの引き上げをめざす方針で、その他にもガソリン税の暫定税率廃止など「手取りを増やす」分かりやすい政策が若者世代中心に支持を得ている。
一方、「高校の教育無償化」を与党との交渉で実現した維新は依然、支持率は低調だ。最終的に2025年度予算に賛成し自公の補完勢力とみられたことや高校無償化が思ったほど支持を得られなかったことが低迷の理由だと考えられる。
また野党第1党の立憲民主党は、野田代表就任後から衆院選後までは支持を伸ばしたものの、その後の見せ場が乏しく、埋没感がある。参院選公約に消費税の減税を盛り込むことを決めたものの、野田氏の過去の発言との整合性を問われる事態となっている。
さらに参院選での比例投票先を聞いたところ、こちらも政党支持率と同様、1位は自民党、2位は国民民主党だった。
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夏の参院選を控え、物価高対策として野党だけではなく与党からも消費税の減税を求める声が高まっている。ただ各党の主張は微妙に異なっていて、立憲民主党は食料品の消費税を原則1年間ゼロ、日本維新の会は食料品の消費税を2年間ゼロに、国民民主党は時限的に一律で5%に下げることを訴えている。
また、かねてより共産党は「消費税率を5%にして廃止をめざす」、れいわ新選組は「消費税の廃止」を訴えている。
以上のことからJNN世論調査では消費税の扱いについて、「維持」「廃止」「食料品減税」「一律引き下げ」の4択で聞いたところ、結果は多い順に以下の通りだった。
▼「食料品の税率を下げるべき」35%
▼「一律で税率を下げるべき」 27%
▼「いまの税率を維持すべき」 19%
▼「消費税は廃止すべき」 16%
一方、忘れてはならないのは消費税を減税することで失われる税収だ。財務省は食料品にかかる税率をゼロにすることで年間5兆円、国民民主や共産が主張する一律5%への引き下げで年間15兆円税収が減ると試算している。
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消費税は医療、介護、年金、子ども子育て支援など全世代型社会保障制度を支える財源となっているため、減税により失われる財源を補填しなければ社会保障の質が低下する恐れがある。その点不安がないか聞くと、55%が「不安を感じる」と回答した。減税のうち財源が最も少なくて済む「食料品の税率引き下げ」を選ぶ人が35%と最も多いが「税率維持」も20%近くいるのは「不安」の裏付けではないかと考えられる。
こうした中、石破総理は今回物価高対策として消費税の減税を行わない意向を固めた。
5月8日夜、都内の日本料理店で石破総理と森山幹事長が会談した。今後の政権運営について意見を交わしたほか、消費税の減税は行わない方針を確認したものとみられている。
実施しない最大の理由は財源で、財源の裏付けのない減税は国際的な信頼を失うとの懸念がぬぐえなかった。石破総理としては物価高の影響が大きい低所得者への支援を厚くすべきと考えているものの、依然として与党・公明党は「経済対策の骨格は減税だ」との主張は堅持し、夏に選挙を控える参院自民党からは減税を求める声は上がり続けている。今後は党の税制調査会で消費税に関する勉強会を開き、この場を利用して自民党執行部としては減税派の主張を抑える狙いがある。参院選にむけて今のところ目玉政策がなく焦る参院自民や公明党を押さえ込めるか、そして何より物価高に苦しむ国民に有効な対策を打ち出せるか、総理の手腕や調整力が求められている。
「選択的夫婦別姓」結論は急がなくて良い?後半国会最大の焦点は「選択的夫婦別姓」導入をめぐる議論になるはずだったが、“トランプ関税”対策や経済・物価高対策に関心が高まり、機運はややしぼみつつある。
立憲民主党は4月末に制度導入にむけた法案を提出したが、維新などは夫婦同姓を維持した上で旧姓の使用に法的効力を与える案を主張している。国民民主の玉木代表も当初は導入に賛成だったが、支持層が拡大したことでトーンが変わりつつある。古川代表代行は5月7日の会見で保守層を意識し「家族のあり方とか懸念を持たれる方も含めて安心できるような制度設計を目指していく」と話した。近く独自の法案を提出予定だという。
一方の自民党は、選択的夫婦別姓導入には保守派を中心に依然反対論が根強く、党内での議論は停滞している。自民党幹部は「うちはもうやらない」と明言しているほどだ。いまの国会での成立が見通せない中、なんらかの結論は出すべきなのか。
世論調査では「いまの国会で結論を出す必要はない」が54%をしめた。さらに参院選で重視する政策を聞いたところ、物価高対策、少子化対策、景気対策が上位にランキングされる中、「選択的夫婦別姓制度」は9つの全選択肢の中で最下位だった。
ただ、このテーマは世代間や男女間で大きく差が出る。例えば40代男性は“急ぐ必要はない”と思っている人が7割を超えるが、30代未満の女性は7割近くが“急ぐべき”と答えている。
今後各党から独自の法案が提出されるが、いまの国会で導入に向けた議論が熱を帯びるかはまだ見通せていない。
【5月JNN世論調査の結果概要】
●石破内閣の支持率は33.3%(先月調査より2.7ポイント上昇)。不支持率は62.1%(先月調査より4.0ポイント下落)
●政党支持率は、自民党23.5%(先月よりポイント0.4下落)、立憲民主党5.6%(先月よりポイント2.8下落)、日本維新の会4.3%(先月より1.4ポイント上昇)、国民民主党10.2%(先月より0.5ポイント下落)。
●物価高対策としての消費税の扱いについて「税率を維持」が19%、「食料品の税率下げるべき」が35%、「一律で税率を下げるべき」が27%、「消費税は廃止すべき」が16%
●消費税を下げた場合、社会保障の質が低下することへの不安は「大いに感じる」が17%、「ある程度感じる」が38%、「あまり感じない」が28%、「全く感じない」が15%
●アメリカ・トランプ政権の関税措置について日本政府の交渉に「期待する」が44%、「期待しない」が50%
●選択的夫婦別姓制度について、「いまの国会で結論を出すべき」は35%、「今の国会で結論を出す必要はない」は54%
●夏の参議院選挙で望ましい結果は参議院全体で「自民と公明の議席が過半数を占める」で39%、「いまの野党が過半数を占める」が49%
●今、参院選挙で投票する場合比例代表でどの政党かどの候補者に投票するかについて
自民党 26%
立憲民主党 11%
日本維新の会 9%
公明党 6%
国民民主党 15%
共産党 3%
れいわ新選組 7%
参政党 2%
社民党 1%
日本保守党 1%
それ以外の政党 4%
●参院選で最も重視する政策は多かった回答順に
1位「減税などの物価高対策」28%
2位「少子化対策や子育て支援」17%
3位「景気対策」16%
4位「社会保障対策」10%
5位「政治とカネ」の問題など政治改革 9%
6位「外交・安全保障」4%
7位「地域の活性化対策」4%
8位「憲法改正」1%
9位「選択的夫婦別姓」1%
「それ以外」5%
【調査方法】
JNNではコンピュータで無作為に数字を組み合わせ、固定電話と携帯電話両方をかけて行う「RDD 方式」を採用しています。5月3日(土)、4日(日)に全国18歳以上の男女2737人〔固定750人、携帯1987人〕に調査を行い、そのうち37.5%にあたる1026人から有効な回答を得ました。その内訳は固定電話421人、携帯605人でした。インターネットによる調査は、「その分野に関心がある人」が多く回答する傾向があるため、調査結果には偏りが生じます。より「有権者の縮図」に近づけるためにもJNNでは電話による調査を実施しています。無作為に選んだ方々に対し、機械による自動音声で調査を行うのではなく、調査員が直接聞き取りを行っています。固定電話も年齢層が偏らないよう、お住まいの方から乱数で指定させて頂いたお一人を選んで、質問させて頂いています。今後とも世論調査へのご理解、ご協力のほど何卒よろしくお願いします。
TBS政治部 世論調査担当デスク 室井祐作