2025年、WEC・LMGT3クラスにデビューを果たしたセリア・マルタン 女性ドライバープロジェクト『アイアン・デイムス』の一員として、今季WEC世界耐久選手権LMGT3クラスにデビューを飾ったセリア・マルタンは、「毎レース、着実に進歩している」と現状を語った。
33歳のマルタンは、開幕戦カタール1812kmレースにおいて、85号車ポルシェ911 GT3 RのブロンズドライバーとしてWECデビューを果たした。彼女がラインアップを組むのは、長年同陣営に所属するラヘル・フレイとミッシェル・ガッティンだ。
今季のマルタンは、ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズにも同プロジェクト(チーム)から、ガッティン、サラ・ボビーと組んで参戦している。
■キャリア開始は2018年。ニュル24時間ではクラス優勝も
マルタンのレーシングキャリアは2018年にニュルブルクリンク北コースでスタート。NLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)とニュルブルクリンク24時間レースの両方に参戦した。
特筆すべきは、2021年のニュル24時間でクラス優勝を果たしていることだ。彼女は、キャリー・シュライナー、2度のIMSA GTDチャンピオンに輝いたクリスティーナ・ニールセン、そしてインディ500に複数回参戦したピッパ・マンととに、Giti Tire Motorsport by WS RacingのアウディR8 LMS GT4をドライブした。
その後ADAC GT4ドイツに参戦し、昨年はミシュラン・ル・マン・カップにアイアン・デイムスから参戦した。
そんなマルタンは、ベルギーのスパ・フランコルシャンで行われている『スパ・フランコルシャン6時間レース』でWEC参戦3レース目を迎えた。
5月9日に行われた予選で、マルタンは13番手となった。ハイパーポール進出ラインにはコンマ5秒強、届かなかったことになる。なお、同じくポルシェ911 GT3 Rを使うマンタイ・ファースト・フォーム92号車のライアン・ハードウィックは、マルタンより1秒以上速いタイムを刻み、2番手でハイパーポールへと進出した。
予選後マルタンは、「WECは非常にレベルが高く、すべてが重要で、すべてが影響する。だからこそ、ハイパーポールをコンマ数秒差で逃すのは悔しい」と語った。
「でも、ある意味、それは良いことでもある。なぜなら、常に向上し続け、すべてをまとめるためには、常に努力しなければならないからだ。スパではそれが簡単ではない」
「私は毎ラウンド、進歩している。最終的に重要なのは、一貫性と進歩だ。正直に言って、シーズンをもっと良い形で終えられるといいなと思っている」
ここまで、ハイパーポールへの出場権はまだ獲得していないものの、マルタンはWECデビューシーズン序盤の予選で着実な進歩を見せており、スパでの13番手は自身最高位となった。彼女はシリーズデビューとなったカタールで15番手、第2戦のイモラでは14番手に終わっていた。
「予選はレースのアプローチとは全く異なるので、理解し、慣れていく必要がある」と彼女は語った。
■ELMSにも並行参戦。走行時間を稼ぐ
WECとELMSのデュアルプログラムについて、多くの走行時間が得られるため、2年目のGT3シーズンでの学習プロセスを加速できるという大きなメリットがあると、マルタンは言う。
「(スパの)FP2とFP1は少し混乱していたので、ELMSでも追加の走行時間があるのは良いことだ」
「もちろん、(オペレーションする)チームが違うというだけの話。私の場合はプロトンとマンタイなので、慣れるのに少し時間がかかる」
「でも、結局マシンは幸運なことにどちらもポルシェなので、そう、走行時間はある。このように成長を続けられる機会を得られたことに、とても感謝している」
自分のドライビングでもっとも改善すべき点は何かと聞かれると、マルタンは「すべてを、少しずつ」と答えた。
「時には、それは単にプロセスの問題であったりする」と彼女は言った。
「予選はまったく異なるもの。トラックリミットを犯すことはできないし、良いラップを、ミスなく走らなければならない」
「レースとは違う。レースは限界に挑戦するものだが、限界の種類が違う。だから、それはプロセスの問題だ」
「ドライビングテクニックに関しては、より正確になってきていて、運転もどんどん良くなってきている。それから、メンタル面でも、週末に向けたプレッシャー、そしてル・マンが迫っている中でのアプローチがある。だから、いろいろなことが少しずつできてきている」
「正直に言うと、GT3に参戦することが私にとって最大の夢だったので、ル・マンに目を向ける勇気はなかった」
「だから今、ル・マンに参戦できる可能性があるなんて、まだ信じられない気持ちだ。すごくワクワクしているし、まだ完全には実感できていいない。実際に参戦したら、また違った何かが得られるのだと思う」
[オートスポーツweb 2025年05月10日]