連勝で今季2勝目を挙げた51号車フェラーリ499Pの(左から)アントニオ・ジョビナッツィ、アレッサンドロ・ピエール・グイディ、ジェームス・カラド 2025年WEC第3戦スパ 2025年WEC世界耐久選手権のベルギー・ラウンドとなる第3戦『スパ・フランコルシャン6時間レース』が5月10日に行われ、フェラーリAFコルセの51号車フェラーリ499P(アレッサンドロ・ピエール・グイディ/ジェームス・カラド/アントニオ・ジョビナッツィ)が総合優勝。連勝で今季2勝目を飾った。LMGT3カテゴリーでも跳ね馬チームがクラスウイナーとなり、21号車フェラーリ296 GT3(フランソワ・エリオ/サイモン・マン/アレッシオ・ロベラ)が優勝トロフィーを獲得している。
雲ひとつない快晴の下、現地14時にスタートが切られたWECスパ。ル・マン24時間レース前最後のシリーズ戦となるこの第3戦は、戦いの舞台となるスパ・フランコルシャン・サーキットの7kmを超えるコース全長やストレートの長さも相まって“ル・マンの前哨戦”に位置づけられている。
そんなスパでの6時間耐久レースは、トラブルに見舞われた83号車フェラーリ499Pの脱落などもあり、3台で前日の予選を席巻したフェラーリ勢の牙城が早々に崩れ去る展開に。セーフティカー(SC)の介入もあって接近戦が繰り広げられるなか、とくに6番グリッドからまたたく間に順位を上げ2番手に浮上したフレデリック・マコウィッキ駆る36号車アルピーヌA424の活躍が光った。
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ポールシッターの50号車フェラーリ499Pが首位を守り、これを僅差で追いかける36号車アルピーヌが2番手、フェラーリ51号車が3番手というトップ3オーダーで迎えた3時間目。ここでついにトップが入れ替わった。3回目のルーティンピットで50号車より1周早くピットインし、マコウィッキからジュール・グーノンに乗り替わったアルピーヌが、フェラーリがコースインした直後にオー・ルージュ手前でオーバーテイクに成功したのだ。
レースの折り返しを迎えた直後、レ・コーム(ターン5)で佐藤万璃音のチームメイトであるショーン・ゲラエル駆る95号車マクラーレン720S GT3エボが、60号車メルセデスAMG GT3エボと接触しタイヤバリアに激しくクラッシュ。これにより2度目のSCが導入される。
この間に93号車プジョーを除く全車がピットインしたことで順位の入れ替わりがあり、小林可夢偉の7号車トヨタが36号車アルピーヌに次ぐ2番手にジャンプアップした。しかし7号車はリスタート後の51号車フェラーリとのバトルなかでバスストップでオーバーシュートしてしまい、他のライバルにもかわされ7番手に順位を落とす。
リスタートから約20分後、今度は59号車マクラーレンがバリアに刺さりバーチャルSCが出る。ここでも各車がピット作業を行うが、首位36号車アルピーヌと2番手の50号車フェラーリに先行してピットに飛び込んだ51号車フェラーリがここでトップに躍り出た。
レース再開後はフェラーリAFコルセが2台のポジションを入れ替えさせる。前に出たフォコの50号車は後続を引き離しにかかる。その後ろでは51号車フェラーリ、36号車アルピーヌ、20号車BMWによる三つ巴の2番手争いが展開されロビン・フラインスのBMWがこのバトルを制した。4番手に下がったアルピーヌは早めのピットインを選択し前戦イモラでの成功の再現を狙う。20号車もやや早めのピットインで同様の動きを見せていたが、残り40分を切ったところでトラブルが発生したかガレージに収められてしまった。
フェラーリは残り1時間を切ったタイミングで51号車、翌周に50号車をピットに呼び戻し燃料補給とタイヤ交換を行って2台をコースに送り出す。この際51号車が8号車トヨタ、36号車アルピーヌに次ぐ3番手で先行したのに対し、アントニオ・フォコからニクラス・ニールセンにドライバー交代を行った50号車は見た目上の7番手へと順位を下げた。
各車の燃料残量に注目が集まるなか、残り30分でアルピーヌがスプラッシュを敢行。ペースを落とし燃費をセーブしている50号車フェラーリの3秒後方でコースに復帰した。その後、7号車トヨタ、12号車キャデラックが最後の燃料補給のためにピットに向かったことで、50号車と36号車は表彰台圏内に復帰している。一方、同じく最後の給油が必要だった51号車はチェッカーまで残り11分でピットに飛び込み、わずかな給油のあと余裕を持って首位でコースに戻ると、そのままピエール・グイディがトップでチェッカーを受けた。
第2戦イモラに続く連勝を飾った51号車の後ろでは、ガス欠ギリギリのニールセン駆る50号車と、プッシュするミック・シューマッハーの36号車がファイナルラップの最終コーナーまで続いた手に汗握る争いを繰り広げ、最後はニールセンが逃げ切りフェラーリのワン・ツー・フィニッシュを完成させた。この結果、フェラーリ499Pの今季開幕からの連勝は「3」に伸びている。
4位はレース残り1時間40分の段階でいち早くピットタイミングをずらす戦略を執った8号車トヨタ。中盤には平川亮がドライブしたこのクルマは15番グリッドから決勝をスタートしており、ポジションを「11」上げてフィニッシュしたことになる。12号車と38号車のキャデラックVシリーズ.R勢が5位、6位で続き、可夢偉組7号車トヨタが7位に。8位には35号車アルピーヌが入っている。
LMGT3クラスはレース中盤にトップに立った27号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3エボが技術違反のペナルティによって後退を余儀なくされたあと、77号車と88号車のプロトン・フォードがワン・ツー体制を築いた。
しかし、マスタングGT3の優位性は長くは続かず前戦ウイナーの92号車ポルシェの一時リードを経て、54号車フェラーリが以降のレースで主導権を握っていく。一方88号車フォードも簡単には引き下がらず、つねにトップ3近辺での走行を続けていく。
その間に中団グループからがじわりじわりと順位を上げてきていた21号車フェラーリ。先週末はブランズハッチで296 GT3を駆りGTワールドチャレンジ・ヨーロッパのスプリント第1戦を制したロベラは、スタートから5時間目には姉妹車をかわし、ついにクラス首位まで浮上してみせた。終盤の短いFCYもちょうどよく最後のピットストップを行っていたフェラーリに味方するかたちとなり、終わってみれば21号車は後続を40秒引き離してのトップフィニッシュに。ビスタAFコルセは54号車が3位に入りダブル表彰台を獲得している。
一時はトップを走行した88号車フォードが2位。3位の54号車フェラーリと、惜しくも表彰台を逃した77号車フォードは“パック”でのフィニッシュとなり、それぞれのギャップは2位と3位が1.874秒、3位と4位の差は1.002秒だった。
レース終盤に登場した中山雄一は78号車レクサスRC F GT3で複数回のオーバーテイクを決め、その模様は国際映像にも映し出された。10番手でレクサスを受け取った“ルーキー”は一時6番手までポジションを上げたものの、アコーディスASPチームの78号車はチームメイトが犯したピット出口の赤信号無視に対するペナルティなどが響き最終結果は8位となった。佐藤の95号車マクラーレンは、レース中盤のクラッシュによってリタイアを喫している。
WECの次戦はシリーズのハイライトである第4戦ル・マン24時間レースだ。この伝統のレースは6月11日(水)から14日(日)にかけて行われ、前週にはテストデーが設定されている。
[オートスポーツweb 2025年05月11日]