
数年前のこと。高知県内のとある川の岩の上に生まれて間もない茶トラの子猫2匹がたたずんでいました。まだ体が小さく、遠目には凝視しないと確認できないほどでしたが、万が一川に落ちてしまったら、そのまま流され命にかかわる事態にもなりかねません。
【写真】車の内部に入り込んだ子猫。居場所はなかなかわかりませんでした
これを知った心ある旅館の経営者がまずはこの2匹の子猫の保護に成功。しかし、旅館の業務が忙しくお世話まではできないという理由から、地元の愛護団体、アニマルサポート高知家に相談し、以降2匹の命を託すことにしました。
隙をつきクルマのダッシュボードの中に潜り込んだ子猫2匹
快諾した団体スタッフは後日、子猫2匹を迎えに旅館を訪れましたが、ここでハプニングが起こりました。なんと旅館経営者と団体スタッフの隙をついて、子猫2匹がそのまま脱走。小さな体でヒョヒョイと、団体スタッフのクルマのダッシュボードの隙間に潜り込み、そのまま出てこなくなってしまったのです。
当初、団体スタッフは「ちゅ〜る」などでおびき寄せようとしました。匂いにつられ、ダッシュボードの隙間から一瞬顔を出す2匹でしたが、捕まえようとするとまたすぐ奥へ。
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こんなことを繰り返しながらも、ダッシュボードの奥で「ニャーニャー」と鳴いていた2匹でしたが、そのうち全く鳴き声がしなくなってしまいました。まさかクルマの部品などが体に引っかかるなどして、意識を失うほどの大けがをしていたら……そんなことを想像すると「消えた鳴き声」にゾッとしました。
自動車修理のプロが現場に駆けつけてくれた
いてもたってもいられない団体スタッフは「急がば回れ」とばかりに自動車会社に連絡。すぐにプロの修理スタッフが現場に来てくれ、クルマの中に消えた子猫2匹を救うために、インパネ周りを大分解。もはや鳴き声が聞こえなくなってから、どこに子猫が潜り込んでいるかを運頼みで探し当てるしかありませんでした。
そこで、ようやく見つけたのがフロントボードの中。子猫2匹ともぐっすりお昼寝中で、保護した瞬間は寝ぼけまなこの様子。「私は誰?」「ここはどこ?」と言わんばかりの無垢な表情を前に、怒るどころか「良かった」と胸をなで下ろす団体スタッフと修理スタッフでした。
無事保護しスクスク成長した後、2匹とも幸せに
好奇心旺盛で、すばしっこいところは猫の魅力のうちですが、ときにはそのことで、大変な事態となり、場合によっては命を脅かす事故をも招きません。そんなことを実感させるハラハラドキドキの捕物帖でした。
保護後、2匹の子猫は純粋無垢なままスクスクと成長を遂げ、さらに2匹とも「ずっとのお家」を掴み今では幸せに過ごしています。川の岩の上やクルマの中ではなく、どんなに自由に過ごしていても安心できる環境と縁が結ばれたことに、まずは本当に良かったと思いました。
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(まいどなニュース特約・松田 義人)