演技は理論か才能か――。母と親友、ふたりの天才と対峙する少女を主人公に描かれる漫画『母親の才能を受け継げなかった子供の話』がXで投稿されている。
これはヤングマガジンで連載中『到達のアクタ』の第1話。演技を理論側から描く異色作品はどのように発送されたのか、作者・信楽優楽さん(@sigaraki777)を直撃した。(小池直也)
――Xでの反響はいかがですか?
信楽優楽:前作から追いかけてくれている読者の方からの反応もありましたし、雑誌連載もあるので反響は多かったです。
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――キャッチーなタイトルはどのように?
信楽優楽:登場するキャラクターがどれもストイックな性格なのと、名前で演技系の内容だと伝えたかったんです。それから「アクター」から長音を取った「アクタ」はすぐ決まりました。また「到達」というワードも個人的に禁欲的な雰囲気に合うかなと。
――芝居や演技論をテーマに描いたのはなぜでしょう。
信楽優楽:約5年前に役者を題材にした『悪役の幸福』という読切漫画がヤングマガジンの「ちばてつや賞」で優秀新人賞をもらったんです。それから昨年、担当編集さんから「もう一度役者ものを描いてみませんか?」という提案があって構想していきました。俳優さんや映画監督に取材もしましたね。
――演技経験もあるんですか?
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信楽優楽:ないのですが、映画や演劇が好きなのとハリウッド映画などの脚本術について少し詳しいので題材にしてみようと。演技できる人だけでなく監督、カメラマンさん、照明さんなど作り手の皆さんは尊敬しています。
――演技における才能と理論の対立軸を理論側を主人公にして描いたのは、ユニークだなと思いました。
信楽優楽:先ほど挙げた『悪役の幸福』は才能のある主人公を描いていたのですが、それから自分が本などで脚本術などの知識を得た分、今度は逆側から描けそうな気がしたんです。その点でも今までにない演劇漫画にしようと考えていました。
――ご自身は漫画について、どちら側だとおもいますか。
信楽優楽:漫画賞の選考に6回落ちた時は「自分に才能はないのかな」と考えましたが、今は両方とも何パーセントかずつで構成されているなと思います。ただ出版社の忘年会とかで才能のすごい方々に会うと、「自分ももっと頑張らなきゃ」と感じますね。
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――血縁関係が物語のなかでも大事な要素になっています。これについては?
信楽優楽:親戚に有名な人がいるとか、2世の芸能人とか、親がすごいと主人公のアリサちゃんのように比較されて辛くなる瞬間があると思うんです。あとは「隔世遺伝」というよくわからない遺伝子的な恐怖も描きたかったポイントでした。
――作画面でこだわっている点などが教えてください。
信楽優楽:天才への恐怖と凄みを描きたいのでホラーテイストの漫画のような、描き込み量が多い絵柄を意識しています。
――今後『到達のアクタ』はどのように描いていきます?
信楽優楽:アリサちゃんが辛い幼少期を経て、母親などの才能に刺激されながら、どう成長していくのか、そのメインテーマをしっかり描いていきたいです。
あとは海外などでメソッド演技についての賛否が実際に議論になっている現状があるので、そういったことも漫画にできたらなと。
◼︎『到達のアクタ』は「週刊ヤングマガジン」で好評連載中。7月4日(金)に単行本第1巻が発売予定。
(文・取材=小池直也)
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