写真 三越伊勢丹HDが、2025年3月期の決算説明会において、2022〜2024年度の3年間で実施した中期経営計画の総括を行った。中計最終年度となった2025年3月期(2024年度)の業績は、策定当初に掲げていた営業利益350億円に対して763億円、当期純利益280億円に対して528億円と、目標を大きく上回って着地。2年連続で過去最高益を更新した。
同社は2022年度からの3年間をコロナ禍からの「再生フェーズ」と位置付け、構造改革を実行。インバウンドの回復といった外部環境改善のほか、オンライン事業や海外事業の改革、基幹3店舗のリモデル、エムアイカード ベーシックカードの導入などの施策が奏功し、2024年度の営業利益はコロナ禍前の2018年度比で約2.6倍に伸長した。
オンライン事業では、新規顧客を自社オンラインストアに呼び込むため、SKU数を増やし間口を広げていた従来の手法から、上質な商品を求める高感度層に向け商品数を絞り込んだMD提案に移行。中計実行前の2020年度には28億円の損失を計上していた同事業だが、最終年度の2024年度で黒字転換を果たし、10億円のプラス収支となった。
海外事業では、成都伊勢丹や天津伊勢丹などをはじめとして、4店舗を閉店。エムアイカード会員やアプリ会員などの識別顧客を確保できない店舗を将来性が見込めないとして切り捨て、構造改革を進めた。また、2024年4月にシンガポール証券取引所に上場していたイセタン(シンガポール)リミテッドを完全子会社化。本社からの意思伝達をスムーズにし、こちらも構造改革を加速させるとしている。
基幹店舗のリモデルでは、「館の魅力で世界中から集客する」ことを掲げ、自社で収集したデータに基づいて顧客に合わせたMD提案を実行。結果、伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店の基幹3店舗の売り上げ額は、2024年度で前年比105%増と倍増した。特に伊勢丹新宿本店は年間売上額が4000億円を突破し、過去最高業績を更新するなど好調に推移している。
また、国内顧客の更なる拡大を目指し、3月にはエムアイカードに無料のベーシックカードを導入。それまでは有料プランしか設けていなかったが、無料プランを追加したことによりエムアイカードの新規登録件数は前年比61%増と大きく増えた。非会員と比べてエムアイカード会員の年間購買額は2倍以上となっているというデータもあり、今後も識別顧客獲得に注力していく方針だ。
2025年度からの6年間では、新たな中期経営計画を策定。2025〜2027年度をフェーズ1、2028〜2030年度をフェーズ2と位置付け、顧客一人一人にフォーカスし、適したアプローチを仕掛ける「個客業」への事業転換を推進する。2024年度の業績は、総額売上高が1兆3036億円で、営業利益が763億円。フェーズ1が完了する2027年度は、総額売上高で2024年度比7.4%増の1兆4000億円、営業利益で同11.4%増の850億円を見込んでいる。