
東京六大学野球春季リーグ戦は、5月3日から5日に行なわれた立教大と早稲田大の3連戦に続いて、10日から12日の立教大と明治大との"紫紺対決"も激戦となった。
エース同士の息詰まる投手戦となった1回戦は、9回表に明治大の4番打者・内海優太(3年)の豪快なホームランで決着。2回戦は強打の立教打線が爆発して1勝1敗に。
勝ち点のかかった3回戦も立教大・小畠一心(4年)、明治大・毛利海大(4年)が先発マウンドに上がった。
【明治が総力戦で立教から勝ち点】
先攻の明治大・2番打者、榊原七斗(3年)の本塁打が飛び出すと、その裏に立教大のトップバッター・山形球道(4年)が今季4本目の本塁打で同点に追いつき、4番・西川侑志(4年)がセンターバックスクリーン横に放り込んで2対1。その後、逆転に次ぐ逆転というスリリングな展開となった。
試合は6対6のままで迎えた9回表。二死三塁から4番・内海がセンター前に弾き返して明治大が1点リードを奪い、7回からマウンドに上がった大川慈英(4年)が150キロ超のストレートで押し込み勝負を決めた。
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まだ試合が残っている東京大以外の4大学から勝利を奪いながら(早稲田大、法政大からは勝ち点)、立教大の8年ぶりのリーグ優勝の可能性はほぼなくなった。
立教大の木村泰雄監督は、明治大との試合後にこう語った。
「チーム全員で戦って、点を取られたら取り返すという展開になりました。これまでやってきたことを選手たちは出してくれました。こういう試合ができたことについて、選手たちを本当に褒めてやりたい」
ここまでチームが放った本塁打はリーグ最多の12本。しかし、明治大から勝ち点を奪うことはできなかった。
「彼らの努力がこうして形になり、自分たちの力をグラウンドで発揮してくれた。もうひとつ勝たせられなかったのは私の責任。明治大との力の差はないと思います。あとは、監督の采配を含めて、どう勝ちきるか」
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2勝したチームに勝ち点が与えられるリーグ戦は、勢いだけで戦い抜くことはできない。かつてはエースが3試合すべてに登板することもあったが、そんなケースは珍しい。
分業制が進んだ現在では、試合を優位に進めることができる先発投手がふたり、終盤を抑えられるリリーフ陣が複数必要だ。継投が増えたことで、代打起用などの選手交代も重要なポイントになる。
明治大は強打の正捕手、小島大河(4年)が故障のためベンチから外れたが、代わりに出場した福原聖矢(3年)が投手陣を巧みにリードし、好守備も見せた。2回戦に先発した高須大雅(4年)が6回からリリーフして大川につなぎ、総力戦で勝ち点を積み上げた。
【優勝をかけた大一番】
第1戦に続いて勝利を決める一打を放った内海が言う。
「勝負強さには自信があります。チャンスの場面では一段と集中力も上がるし、気持ちも高ぶるので。理想は打率が高くて、勝負強いバッター。今が打率を残せていないんですけど(打率.216)、ここ一番では打ちたい」
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立教戦の前まで打率1割台と苦しんでいた内海のタイムリーヒットは、「勝負強さ」を証明するものだった。どれだけ調子が悪くても、主力選手が勝負どころで仕事をするチームは強い。
リリーフとして試合を締めた大川が語った勝因は「気持ち」だった。
「同期の4年生のピッチャーたちがつなげてくれたので、絶対に勝ちきろうという思いで投げました。もし延長15回まで行っても自分で投げきろうと。『絶対に気持ちで負けない』と思いながら、マウンドに立ちました」
昨秋の慶應大戦の苦い思いが大川を成長させた。
「去年の秋、慶應との1回戦で9回ツーアウトから打たれたことがずっと頭にあります(清原正吾に本塁打を打たれて引き分け)。あとひとつのアウトを取ることが、自分のなかでポイントだったので」
彼らの言葉を聞くと、試合を決めたのは技術や能力だけではなく、気持ちと勝負強さだったということになる。明治大野球部の礎を築いた名監督・島岡吉郎の言葉を借りれば、「人間力」の勝利と言えるかもしれない。
明治大からプロ野球に進んだ30代のある選手に、「明治大とほかの大学との違い」について聞いたことがある。その選手の返答は「普段からやっていること」だった。グラウンドで相手と対峙する前に、練習、寮での生活から戦いが始まっていると言いきった。
気持ちも勝負強さも、なかなか数値で表すことができない。しかし、そのふたつが立教大と明治大の勝敗を分けたポイントだったのかもしれない。
5月17日から、勝ち点3でトップを走る明治大と3シーズン連続優勝を狙う早稲田大が激突する。昨春は早稲田大の2勝1敗、昨秋は2勝1分。両校による優勝決定戦でも早稲田大が勝利している。
「去年は早稲田大にやられっぱなしだったので、やり返さないと」と、戸塚俊美監督は闘志を燃やす。
大川は「去年の秋の早稲田戦(2回戦)ではイニング途中でノックアウトされたので、次は絶対に抑えたい」と語った。
優勝争いを左右するこのカードは、両チームの気持ちがぶつかり合う熱い戦いになるはずだ。ここ一番で、勝負強さを発揮するのは誰なのだろうか。