「成功体験は封印して」 水難救助で夫を亡くした研究者の訴え

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2025年05月17日 07:46  毎日新聞

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ライフジャケット着用の大切さを訴える岡真裕美さん=大阪市で2025年5月5日午後4時52分、広田正人撮影

 5月も半ばを過ぎ、これから怖いのは水難事故。香川県出身で、水難救助で夫を亡くしたことをきっかけに、子どもの安全教育などを研究している大阪大大学院特任研究員の岡真裕美さん(45)=大阪府茨木市=に、本格的な盛夏を控えて、水辺での注意点について聞いた。


 ――水難事故を防ぐために、まず訴えたいことは。


 ◆ライフジャケットの着用に尽きます。特に川は急に深くなったり、水かさが増したりして非常に危険です。子ども用は、またの間に通すひもをキッチリ締めることが大切です。


 ――香川県内の水難事故の特徴は。


 ◆海も川もため池も用水路もあり、水難の危険はいっぱいです。ため池の事故は過去に何件もありましたが、用水路にベビーカーごと子どもが落ちて亡くなるケースもありました。網も張ってない水路が至る所にあります。高齢者から見れば、それは日常の「景色」なんですが、ずっと大阪にいて久しぶりに帰った私は「危ないなぁ」と改めて感じます。


 ――ため池の事故を防ぐには。


 ◆もともと水をためるためだけの施設で、人が入る設計にはなってないので、すり鉢状で傾斜も鋭く、入ったらなかなか出られない「アリ地獄」みたいな形状が多いです。死亡事故を教訓に4年ほど前、一般社団法人「水難学会」(新潟県長岡市)がため池の危険性を訴える動画を作り、啓発したこともありましたが、その時だけ盛り上がってブームが去る感じでした。ため池にも網をかぶせたり、人の立ち入りを想定してはしごやロープを設置する工夫も必要でしょう。


 ――おぼれている人を見つけた場合は。


 ◆助けるために飛び込んではいけません。ペットボトルや木切れなど、近くに浮くものがあれば投げ渡し、119番することです。


 ――もどかしい思いをしそうですが……。


 ◆人を救えた「成功体験」を持つ人がおられると聞きます。それは封印して、決して助けに行かないで。まず自分の命を守ることを第一に考えてください。亡くなった私の夫も学生時代、溺れる人を助けたことがあったと、夫の友人が教えてくれました。もう一度、会えるとしたら、真っ先にそれを訴えたい。そして子どもたちには、そうした教育が必要だと感じています。【聞き手・広田正人】


きっかけは夫の死


 岡さんは、2012年4月に夫隆司さん(当時34歳)が、自宅近くの川で溺れていた小中学生を助けようと川に飛び込み死亡したことをきっかけに、事故防止を研究している。


 また、全国各地を巡り、講演でライフジャケットの重要性を訴え続けている。そんな岡さんの活動に大阪市内のスポーツアパレルメーカーが共感し、ライフジャケットを提供してくれることになった。6月以降、岡さんが小学校などで講演する際、20着ずつほどを寄贈していくという。


 講演でライフジャケットの話をしても、現物を寄贈できないことにもどかしさを感じていたという岡さんは「水遊びの時に多くの子どもが持っている浮き輪と比べ、ライフジャケットは丈夫」とアピールする。


おか・まゆみ


 1980年生まれ。香川県綾川町出身。朝日放送(大阪市)の情報番組「おはよう朝日です」の火曜コメンテーターや、同県丸亀市の市民団体「子ども安全ネットかがわ」副代表なども務める。共著に「事故・ケガで我が子を死なせないために 子どもを全力で守る本〜」(いそっぷ社)



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  • 確かに助けた側が亡くなって助けられた側は別に助けなくても生きてたんじゃね?ってのはよくあるパターンだよな。
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