馬淵優佳が新たなスタートに立つ 実感した指導の難しさと選手育成の決意「全国優勝できる選手を育てたい」

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2025年05月18日 07:20  webスポルティーバ

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馬淵優佳 インタビュー前編

 2024年2月に二度目の飛込人生に区切りをつけた馬淵優佳。そして昨秋には環境を大きく変えて、新たに指導者としてスタートを切った。テレビでのコメンテーターや飛込の解説を行なうなど、多忙な毎日を送っているなかで、この4月から新たな領域にもチャレンジしている。その内容と思いを聞いた。

【選手クラスをスタート】

――4月から新たなスタートを切ったということですが、具体的にはどのようなことですか。

 4月から飛込の選手クラスを作りましたので、本格的に選手を育てるための指導をすることになりました。詳しく話をしますと、昨年、「一般社団法人びわこウェルビーイングコミュニティ」が設立されたんですが、そこが主体となって、飛込競技のトップアスリートの育成と地域活性化を目指した「滋賀・立命館ダイビングクラブ」を新設しました。いろんな方々に出資をいただきましたので、私はトップの選手を育てるだけではなくて、地元の方々に愛されるようなチームづくりをやっていきたいなと思っています。

――滋賀・立命館ダイビングクラブには希望すればすぐに入れるのでしょうか。

 ありがたいことに、一時はキャンセル待ちが多く、入れない時期もありました。今は私の父(馬淵崇英氏、飛込日本代表コーチ)がトップ選手、私がジュニア選手を教え、現役選手にも指導に携わってもらい、チームをつくっています。クラブチーム全体でジュニアの育成に携わっていますが、入会は指導者の推薦で受け入れを行なっています。

――ではセレクションをして加入者を絞ったのでしょうか。

 昨年の年末と今年の年始に「飛込選手発掘プロジェクト」を初めてやりました。対象年齢は小学1年から4年生までです。そこで推薦された選手がクラスに入れるようにしました。今年は5月31日と6月7日に「飛込体験教室」を開催します。飛込を楽しめる場が少ないので子供たちに飛込の魅力を知ってほしいです。

【指導の難しさを実感】

――馬淵さんは昨年秋頃からここで飛込の指導をされていますが、これまでの半年間はどのような指導内容だったのでしょうか。

 今までは育成クラスを担当していて、子供たちに対して飛込の楽しさを伝える指導をしてきました。自分は3歳から飛込をやってきて、これまでチームを持ってしっかりと教えることがなかったので、気づくことがたくさんありました。そのなかで感じたのは教えることはすごく難しいなということです。

 シンプルに後ろにジャンプして入るという技をやらせようとしたら、後ろに飛べない子がいるんです。飛込って飛込台から足を半分出すので、必然的につま先に体重を乗せないと後ろに落ちちゃうんですね。まずそれができなくてバランスを崩しちゃう。それでつま先に体重を乗せることができるようになったら、今度はつま先の力でグッと後ろに飛ぶ。それができない。新しい発見でした。じゃあできない子にどうやってできるようにさせるのか、すごく考えました。だから陸で後ろに飛ぶときの筋肉を覚えてもらうようにしました。

 ただ、うまくなってもらうためにいろんな指示を出すんですが、いっぱい出したらいけないんだなというのも学びました。指示を出しすぎるとこんがらがるんですよね。だからひとつかふたつまで。それ以上出すと失敗します。ここもここも直して、と言いたくなるんですけどね。

――4月から大きく変わったことはありますか。

 練習時間と、練習の質や内容になります。今までは月・水・土にそれぞれ1時間半の練習をやっていましたが、今後は時間も徐々に長くしていって、日にちも増やす計画にしています。これまでは楽しさを伝えることに焦点を当ててやっていたんですが、ここから先は、とにかく全国大会を目指すところが目標になりますので、私自身もよりパワーを入れて、コーチングしないといけないと思っています。飛込に向き合う時間が確実に増えていきますね。

――今後はよりレベルの高い子供たちを指導することになりますが、厳しい指導になるのでしょうか。

 厳しくはなると思いますが、どうだろう、怒っちゃうかな? でも時代は変わっていて、昔みたいな指導をしても、うまくなるわけじゃないと思っています。自分で考えられるように、全部答えを言うんじゃなくて、自分から取り組めるようにしたいですね。

【全国で優勝できる選手を育てたい】

――お父さんとは違うカテゴリーの子供たちを教えるんでしょうか。

 父は玉井陸斗選手、板橋美波選手、伊藤洸輝選手を指導しているので、違うカテゴリーにはなりますが、私もまだこれからコーチとして学んでいくことがたくさんあるので、いろんな相談をしながら、すべてを共有しながら一緒に育てていくという感じです。これまでは育成クラスを担当していますが、そのなかから意欲的で、トップレベルにいけるかもしれないという選手に声掛けして、学年関係なく指導をしていきます。

――玉井選手はこの4月から立命館大学に進学されて、このダイビングクラブでさらなる高みを目指していくことになります。馬淵さんは玉井選手が小さい頃からずっと見てきたと思いますが、どのような子供だったのでしょうか。

 他の子とは違うものを持っているなと思っていました。器用な子でしたね。身体的というよりも、言ったことができる子。コーディネーション能力というか、玉井選手はその能力はすごく長けていました。伸びるのはすごく早かったです。

――天才肌なのでしょうね。ただすぐに習得してしまう子は、その能力に胡坐をかいてしまうケースもありますが。

 本当にそう思います。天才肌の子はいますが、やはりそのうち胡坐をかいてしまう。端から見ていると本当にもったいないですよね。それが玉井選手にはなかったです。自分の才能に溺れないというか、そういうメンタルを持っているんだと思います。指導する立場として、そういうメンタルを持っている子を早いうちから見つけるのは難しいですよね。最初のうちはわからないと思います。

――この滋賀・立命館ダイビングクラブでの目標を教えてください。

 本格的に指導者としてやっていくので、まずは自分の教える子供たちが全国大会で優勝してもらうことが一番近い目標です。そのなかで飛込の楽しさも伝えていきたいですし、もっと地元に愛されるようなチームづくりをしていきたいですね。

インタビュー後編: 『馬淵優佳が超保守的な自分に後悔 「これでいいや」を払拭し「ちゃんと攻めた」過去を明かす』

【Profile】
馬淵優佳(まぶち・ゆか)
1995年2月5日生まれ、兵庫県出身。3歳から水泳を始め、小学時代から飛込に励む。2009年に東アジア大会3メートル飛板飛込で銅メダルを獲得。2011年に世界選手権代表選考会の3メートル飛板飛込で優勝をし、世界選手権に初出場。2017年、22歳で引退した。2018年に第1子、2020年に第2子を出産し、2021年、26歳の時に競技復帰を決断。2022年8月、日本選手権の1メートル飛板飛込で優勝、3メートル飛板飛込で4位、3メートルシンクロ飛板飛込で2位となる。2023年4月の翼ジャパンダイビングカップ兼国際大会派遣選手選考会の3メートルシンクロ飛板飛込で優勝。2024年2月に現役引退を発表した。現在は指導者の傍らテレビでのコメンテーター、飛込の解説などを行なう。
「滋賀・立命館ダイビングクラブ」instagram

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