2025年F1第7戦エミリア・ロマーニャGP 角田裕毅(レッドブル) 2025年F1第7戦エミリア・ロマーニャGPの土曜日の予選で角田裕毅(レッドブル)クラッシュした後、レッドブルとホンダ・レーシング(HRC)のスタッフたちは深夜までサーキットでの作業を続けていた。
通常であれば、予選が開始して、最初にコースインした瞬間にマシンは『パルクフェルメ状態』となり、レースがスタートするまで原則セットアップの変更ができない。さらに現在のF1では予選後にマシンにカバーがかけられ、物理的にも作業ができなくなる。これらを破ると、日曜日のレースは強制的にピットレーンからスタートしなければならないため、土曜日の夜、基本的にチームのスタッフは早めにサーキットを後にする。
しかし、予選Q1でクラッシュした角田のマシンは大破したため、修復作業を行わなければならなくなった。こうなると角田のマシンはパルクフェルメ状態を維持する必要はなく、スタッフはマシンの修復作業を優先。その作業は深夜0時過ぎまで続いた。
マシンにかけられたカバーが国際自動車連盟(FIA)のスタッフによって解除されるのは、日曜日の午前10時。それまではスタッフは作業ができないため、現在のF1では日曜日の朝もチームスタッフは以前に比べて遅めのサーキット入りとなる。
だがカバーオン・ルールを破っている角田車にはこのルールは適用されないため、レッドブルのスタッフはいつもより早めにサーキット入りしていた。こうしたスタッフたちの努力の結果、角田のマシンはレース前に修復作業を終え、無事レースに参加することとなった。
とはいえ、ほとんどのパーツを交換して組み立てられた角田のマシンは予選まで走らせていたものとはまったく同じではなかった。しかし、レースがスタートするまで、マシンを走らせる機会はない。そのため、フォーメーションラップの40分前から10分間だけ行われるレコノサンスラップが重要になった。ここで角田は「土曜日のセッティングからほとんど変更しなかった」という車体のフィーリングを確認した。
この日、角田のマシンには主要な5つのコンポーネントが3基目となるフレッシュなパワーユニットが搭載されていたため、HRCのスタッフたちもこのレコノサンスラップでエンジンの状態をテレメトリーで確認していた。「そこで気になる点が見つかったため、ピットインしてきたタイミングで角田のマシンをガレージに入れて、データをチューニングした後にもう1周走らせて確認しました」(折原伸太郎/トラックサイドゼネラルマネージャー)という。
こうして、ピットレーンからスタートした角田は、予選Q1でいきなりクラッシュしたという汚名を返上すべく、日曜日のレースではミスのない走りを披露。バーチャルセーフティカー(VSC)にも助けられて、入賞争いするまでにポジションを上げた。その後、セーフティカーが導入され、54周目に再開された後、ピラテラでニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)を抜いて10番手に浮上することに成功した。
レース終盤、ヒュルケンベルグを抜いて猛追してきたフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)と角田は1秒以内のデッドヒートを繰り広げるも、10番手のポジションを死守。マイアミGPに続いて2戦連続のポイントを獲得した。
「正直、土曜日の予選でクラッシュしたことはいまでも鮮明に覚えていますし、頭からなかなか離れませんでした。でも、メカニックたちが夜遅くまで作業してくれたおかげで、あれだけの大きなダメージだったにもかかわらず、今日のレースをスタートすることができました。その努力に対して、少しでも何かお返ししたかったので、ポイントを獲得できたことはよかったです」
ミスを犯した事実は、消すことはできない。しかし、人間はミスをする動物である。そのミスから何を学び、どう生きるかによって、そのミスが価値のあるものになるのか、無意味なものになるのかが決まる。
[オートスポーツweb 2025年05月19日]