Microsoft Build 2025基調講演まとめ　テーマは「AIエージェント時代」

　米Microsoftは5月19日（現地時間）、年次開発者会議「Build 2025」を開催した。今回の基調講演の主要テーマは、AIエージェントの時代とオープンなエージェント指向Webの構築だった。

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　Microsoftは、現在はプラットフォームシフトの「中盤」にあたり、物事が大規模に展開される時期であるとしている。

　本稿ではその基調講演で発表された主なこと（完全な網羅ではない）を簡単に紹介する。発表された新機能や機能強化のほとんどは、同日から利用可能になる。

●GitHub Copilotの機能強化

　GitHub Copilot Chat in VS Codeをオープンソース化する。AI機能をVS Codeのリポジトリのコアに直接統合する。

　GitHub Modelsに、プロンプト管理、軽量な評価、エンタープライズ制御などの新機能が追加され、GitHubを離れることなく最先端モデルでの実験が可能になる。

　エージェントモードでは、Java AからJava 21、.NET 6から9へのフレームワークアップグレードや、オンプレミスアプリのクラウド移行などのタスクを実行できるようになる。コードや依存関係の計画を作成し、修正案を提示し、変更から学習する。

　さらにSRE向けに、メモリリークなどの問題を自動的にトリアージする自律エージェントが導入される。これは独自のブランチで動作し、開発者によって構成されたMCPサーバのみを使う。他のエージェントによるコードレビューも可能だ。

●「Foundry Local」

　Foundry Localは、アプリサーバおよびアプリ構築機能をエッジやクライアントにもたらす機能。

　高速で高性能なランタイム、モデル、サービスとしてのエージェント、ローカルアプリ開発のためのCLIが含まれる。Windows AI Foundryに組み込まれており、WindowsとMacでサポートされる。

●「Windows AI Foundry」

　Windows AI Foundryは、AI開発ライフサイクル全体をサポートするための、Windows上の統合されたプラットフォーム。

　Foundry Localを通じてローカルで実行可能な事前最適化されたオープンソースモデルのカタログを利用できる。LoRAアダプターを使用して組み込みのベースモデルをカスタマイズする機能を提供する。プライバシー保護されたベクターストアにインデックスを作成するためのセマンティクスAPIも提供し、ハイブリッドRAGアプリを構築できるとしている。

●Azure AI Foundry Modelsに「Grok」追加

　AIアプリやエージェントを設計、カスタマイズ、管理するための統合プラットフォーム「Azure AI Foundry」で利用できるモデルの集合体であるAzure AI Foundry Modelsに、イーロン・マスク氏率いる米xAIのAI「Grok」が加わる。Grok 3およびGrok 3 miniを推論、調査、応答モデルを単一モデルとして提供する。Microsoftがホストし、課金する。

　Hugging Faceとのパートナーシップを拡大し、Foundryで1万1000以上のモデルにアクセスできるようになる。

　また、モデルのランキングや特定のクエリに最適なモデルを選択できる機能などのモデル評価のための新たなツールを導入する。

●「Microsoft 365 Copilot Tuning」

　Microsoft 365 Copilot Tuningは、顧客が自身の会社データ、ワークフロー、プロセスを使用してAIモデルをチューニングし、エージェントを作成するための低コードソリューション。

　会社独自のトーンや言語、専門知識、知識をCopilotに学習させ、チューニングすることで、ドメイン固有のタスクをMicrosoft 365サービス境界内で安全に実行するエージェントを作成できる。例えば、法律事務所は自社の専門知識とスタイルに合わせた文書生成エージェントを作成できる。

●プラットフォーム全体でのMCPサポート

　GitHub、Copilot Studio、Dynamics 365、Azure AI Foundry、Semantic Kernel、Windows 11を含むプラットフォーム全体でMCPをサポートする。

　MicrosoftとGitHubはMCP Steering Committeeに参加し、プロトコルの普及を支援している。また、エージェントにデータやサービスへのアクセスを許可するための認証仕様の更新や、MCPサーバーエントリ用の中央リポジトリとしてのサーバレジストリサービスの設計にも貢献している。

●新オープンプロジェクト「NLWeb」

　NLWebは、「エージェント指向WebにおけるHTMLと同様の役割を果たす可能性を秘めたプロジェクト」。

　WebサイトやAPIを簡単にエージェント対応アプリにする方法を提供する。開発者はLLMの能力を活用して既存のサービスや製品を強化できる。ユーザーは選択したモデルとデータでWebコンテンツと会話型インタフェースを通じて直接、セマンティックにやり取りできる。

　全てのNLWebエンドポイントはMCPサーバでもあるため、WebサイトはそのコンテンツをAIエージェントが発見・アクセス可能にできる。GitHubリポジトリでコードが利用可能。

●Windows Subsystem for Linux（WSL）のオープンソース化

　Microsoft BUILD 2016で発表したWindows Subsystem for Linux（WSL）は、Windowsで直接Linuxディストリビューションを実行できるツール。

　Windowsの一部であるいくつかのコンポーネントを除いて、そのソースコードをGitHubで公開した。

●「Microsoft Discovery」

　Microsoft Discoveryは、研究者がエージェント指向AIによって発見プロセス全体を変革することを支援するための拡張可能なプラットフォーム。

　科学研究開発に特化したプラットフォームで、ソフトウェア開発におけるGitHubや知識労働におけるMicrosoft 365／Copilotと同様の役割を目指すという。

　Azure上のHPリソースや将来の量子コンピューティングを管理し、数カ月／数年かかるプロセスを数日／数時間に短縮できるとしている。