ボンネットから救出した子猫をお迎え。わずか3歳で旅立った茶トラ・りんくんの穏やかな日々と飼い主さんの想い

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2025年05月20日 16:20  女子SPA!

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保護当日のりんくん
【今日のにゃんこタイム〜○○さん家の猫がかわいすぎる Vol.174】

 いつの日か、愛猫を撮れなくなる日や愛しいデータが増えなくなる時が来るから、触れ合える今、たくさん写真や動画を撮ってほしい。

 そう呼びかけるのは愛猫りんくんを肥大型心筋症で突然亡くした、さいとーさん(@rin_and_gaku)。りんくんはわずか3歳で、お空に旅立っていきました。

◆来店客のボンネットに入り込んだ子猫を救出

 2020年9月20日、自動車整備士の旦那さんは勤務先で来店客から、「ボンネットに入っている猫を出してくれ」と依頼され、救助活動。ボンネットを開けると、オイルで汚れた子猫がいました。

 幸い子猫に怪我はなかったものの、来店客は「野良猫だから連れて帰らない。適当に捨ててくれ」と言い、退店。困った旦那さんは妻である飼い主さんに連絡をしました。

 小さな命をなんとか繋ぎたい。そう思った飼い主さんは、「子猫を連れて帰ってきて」と返答。飼育に必要なものを急いで買い揃えました。

 旦那さんが連れ帰ってきたのは、やせ細った生後3ヶ月ほどの子猫。耳ダニやノミがおり、猫風邪も患っていたようで鼻水が見られ、しゃがれ声でした。

 段ボールから出すと、子猫は洗濯機の裏へ。しかし、飼い主さんが「ちゅーる」を差し出すと、瞳を輝かせながら出てきてくれました。

「その姿に夫婦で爆笑。あの時のお顔、本当にかわいかったです」

◆筋肉質なのに臆病で甘えん坊だった“うちの子”

 動物病院へ連れて行くと、猫風邪をこじらせて鼻炎になっていることが判明しましたが、他に病気は見られず、飼い主さんは一安心。

 お迎え当初、旦那さんは里親を探すつもりでしたが、かわいさにノックアウトされたのか、1日で心変わり。子猫は「りん」という名前を貰い、飼い主さん宅で暮らすことになりました。

 りんくんは筋肉質なのに、臆病な性格。玄関のチャイムが鳴ると走ってベッド下へ逃げ込み、立ち向かえるのは1cm以下の虫だけ。クラッキングも「はにゃにゃ……」と弱々しいものでした。

「本人はいたって真剣に、短くて太い2段階鍵しっぽを振りながらクラッキング。その姿がかわいく、おかしくて、いつも笑っていました」

 個性あふれるりんくんは甘えん坊さんでもあったよう。いつでも飼い主さんの視界に入りたがり、視線で静かなラブコールを送っては目を合わせようとしていました。

「大抵、見ながら寝てしまっていましたが…(笑)目が合うと爆音でゴロゴロと言い、嬉しそうに目を細めて何度も瞬きしてエアーふみふみ。全力で『大好き』を伝えてくれる姿が、愛おしかったです」

◆旦那さんにはなぜかツンデレ

 ただし、旦那さんにはツンデレ。飼い主さん夫婦が揃っている時に旦那さんが呼ぶと、りんくんは素通りして飼い主さんのもとへ。

 しかし、旦那さんがリビングでうたた寝をしている時には足の間に挟まったり、体に寄りかかったりして一緒にスヤスヤ。旦那さんのインナーを給水器に浸す遊びも好きでした。

「お気に入りのおもちゃを給水器にダイブさせる子だったので、パパのインナーもお気に入り=パパが好きってことなのかなと解釈していました(笑)」

◆深夜に大切な愛猫が急変!

 楽しい暮らしが一変したのは、2024年1月4日のこと。深夜、寝る前のお遊びタイムを満喫していたりんくんは突然、階段を駆け上がるなど大興奮。その後、足を引きずるような音がしたため、様子を見に行くと、りんくんは息を荒くし、足を舐めていました。

 足を痛めたのかと思ったものの、妙な胸騒ぎがし、飼い主さんはかかりつけ医に連絡。病院では肥大型心筋症で血栓が飛んでおり、命の危険があるとの診断が……。りんくんは即、集中治療室に入院し、酸素室へ。飼い主さん夫婦は獣医師の厚意によって、付き添いを許可されました。

 できる限り安心してもらいたいと思い、飼い主さんは自身の上着を酸素室の中へ。りんくんは上着の匂いを嗅ぎ、寄り添いましたが、やがて酸素室の中で大暴れ。飼い主さん夫婦は、腹圧で便や尿が出て汚れた体を拭き取りました。

「お世話のために触る以外は声をかけながら見守ることしかできず、もどかしかったです」

◆異変から15時間後に天国へ

 やがて、りんくんは動くことも鳴くこともしなくなり、下顎呼吸に。祖父母を看取った経験がある飼い主さんはその呼吸の意味を察し、獣医師を呼びました。すると、別れの時が来たことを告げられ、涙。

「酸素室を開け、夫婦で撫でながら、『愛してる』『大好き』『かわいいちゃん』『宝物ちゃん』『ありがとう』と伝えました」

 病院に連れて行ってから15時間後、りんくんは小さな声で「んなぁ……」と2回鳴いた後、息を吐き、お空へ。獣医師は心臓マッサージをしてくれましたが、飼い主さんはこれ以上苦しませたくないと思い、「このまま逝かせてあげてください」とお願いしました。

「獣医師から、階段を駆け上っていたのは血栓が飛んで痛くて苦しかったから暴れたのだろう、足を舐めたのも血管が詰まって痛かったからだろうと言われました」

 猫の心臓病は、早期発見が難しいもの。尿閉だったりんくんは2〜3ヶ月に一度、通院して血液検査やレントゲン撮影を行っていましたが、心エコーは受けていませんでした。

「心エコーをしても気づけないことがあるとは聞きますが、定期的にしていれば…と悔やまれて、今も自分を責め続けています」

◆ペットロスで「家にいたくない」ほどの状態に

 りんくんを亡くした後、飼い主さんはペットロスに。自身の呼吸や家電のモーター音しか聞こえなくなった自宅が冷たくて広く、寂しい場所に思えました。

 愛猫がいない現実を突きつけられるから、家にいたくない。でもお骨があって、りんがいるから家にいたい。そんな矛盾する気持ちの間で苦しみ、後を追おうとしたことも。

「でも、夫をこれ以上悲しませるわけにはいかないと、思い留まりました。りんに似せて作ったお骨壷カバーで包んだ骨壷を抱きしめ、ただただ泣いていました」

◆2匹の子猫を迎えて変わった「愛猫の死」の受け止め方

 そんな日々から抜け出すきっかけをくれたのは、ひょんなことから迎えた2匹の子猫たち。生後10日ほどの乳飲み子を育てるのは、初めての経験。必死に育猫をしていると、子猫たちは生前のりんくんと同じ行動を取るように。

「その姿を見て、りんは今もこの家にいて、この子達に色々教えてるのかなって思いました。悲しみは減りませんが、5人家族でこれからも一緒に過ごしていくんだと思えるようになりました」

 実は、「愛猫の写真や動画を撮れるうちにたくさん撮る」という教えは、25歳の長寿猫を看取った飼い主さんの投稿から学んだことだったそう。

「おかげで、かわいい姿や声、音をたくさん残すことができましたし、りんを失った時、改めて写真や動画を撮っていてよかったと思いました。2度とかわいい姿や声を見たり聞いたりできなかったら、私は耐えられなかったと思います」

 りんがうちの子になってからの記憶には、常にりんがいる。りんのいた景色、全てが大切な思い出――。そう話す飼い主さんの愛は、空にも届いているはずです。

<取材・文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>

【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291

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