興梠慎三が選ぶ対戦して嫌だったDF10人 思い出すのは「駆け引き上手」「腕の強い」選手たち

0

2025年05月20日 17:30  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

興梠慎三が選ぶ対戦して嫌だったDFトップ10

 昨シーズンを最後に現役を引退した興梠慎三氏に、ここでは自身がこれまで対戦してきたなかで嫌だったDFを10人挙げてもらった。FWを困らせる優秀なDFには、いくつかの共通点があるようだ。

前編「興梠慎三が選ぶ日本サッカー歴代FWトップ10」>>

【動画】↓↓↓

【絶妙な距離感にいるDF】

10位 冨安健洋(アーセナル)

 僕がリオ五輪にオーバーエイジで参加した時、帯同メンバーに当時高校生の冨安選手がいたんですよ。もちろん、その時は彼のことを知らなかったです。

 紅白戦では彼がセンターバック(CB)にいて、高校生なのに当たってもブレない。プロで活躍してるDFと遜色ないくらい体が強くてびっくりしました。しかも足元の技術もあって1対1も強くて、「うまいなぁ」と思ったんですよ。それでリオ五輪から帰ってきて「じつは高校生で、すごくいい選手がいるから絶対取ったほうがいいですよ」と浦和の人に言ったくらい。衝撃でしたね。

 その後はとんとん拍子に日本代表の中心になって、アーセナルまで上り詰めて、「ほら、取れって言ったじゃん!」という感じでしたね(笑)。今の活躍はすごくうれしいです。ケガに苦しんでいますけど、彼は日本サッカーにすごく大事な存在なので、焦らず治してほしいですね。

9位 岩政大樹(元鹿島アントラーズほか)

 岩政さんとは鹿島時代に一緒にやっているんですけど、練習でも1対1の強さ、空中戦の強さはずば抜けていました。あと、とにかくうるさい(笑)。指示の声が当時は「うるせえなぁ」と思ってたんですけど、それはすごく大事なことなんですよね。

 ああいう声を出せる存在が、後ろには必要だと思います。今は北海道コンサドーレ札幌でもすごく熱い監督というのが伝わってくるし、「変わってないな」と思いながら見ています。

 あと、彼のすごいところは、セットプレーで点を取るところ。常に彼の頭にボールが吸い寄せられていくんですよね。なんかそういう能力があるのかなというくらい。しかもそれを決めるんですよ。鹿島が3連覇できたのは、彼の存在がすごく大きかったと思います。

8位 山本英臣(ヴァンフォーレ甲府)

 甲府のレジェンドですよね。甲府がJ1にいる時はいつも彼が出ていて、マッチアップしていました。特別に体が強いわけではないんですけど、なんか嫌なところにいるんですよね。

「あれ、フリーなのかな? マークにつかれているのかな? 今どっちだ?」みたいな感覚にさせられる絶妙な距離感にいるんですよ。FWはDFを手で触って距離感をつかみたいものなんですけど、その手が届かない。「じゃあフリーなのかな」と思った瞬間に、ガツっと寄せられる。

 目立ったプレーとかはないんですけど、そういった駆け引きがめちゃくちゃ上手でした。そうしたうまさがあるから44歳の今も現役を続けられるんでしょうね。44歳まで続けるというのは、ちょっと想像がつかないです。

【攻守に能力が高い】

7位 塩谷司(サンフレッチェ広島)

 リオ五輪で同じオーバーエイジとして戦いました。彼はシンプルに強い。対人の守備がめちゃくちゃ強くて、攻撃参加も抜群にうまくて、ゴールも決められる。

 セットプレーでゴールを決めるDFは多いですけど、自分で持ち出してミドルシュートを決める力があるDFはなかなかいないですよね。さらに、シュートを打つかなと思ったらクサビのパスを入れたり、スルーパスを通したり、とにかく攻撃能力が高いんですよ。攻守に能力が高く、3バックの右をやらせたらもう抜群です。

 彼のDFとしての特長は、腕が強いところです。腕で体を抑えられたら逃げたくても逃げられないので、僕はすごく嫌でした。だから彼が腕を伸ばして届く距離には近づきたくなかったですね。

6位 酒井宏樹(オークランドFC)

 浦和で一緒にやっていましたけど、フィジカルはものすごく強いし、対人も空中戦も強い。それから前への推進力もあって、クロスの精度はJリーグではなかなか見ることができないレベル。

 ただ、彼は練習ではもう適当な感じなんですよ(笑)。「そんなミスするか?」というような簡単なミスをする選手なんですけど、試合になったらピシッと決めてくる。ケガをしないようにとの考えがあったと思うんですけど、練習で本気を出すより、試合で100%以上のものを出す選手でした。

 彼はキャプテンもやりましたが、練習から必死にやって背中で見せるみたいなキャプテン像があると思いますけど、試合になったら頼もしいという新しいキャプテン像を見せてくれましたね。

5位 茂庭照幸(元FC東京、セレッソ大阪ほか)

 茂庭さんも強かったですね。すごく印象に残っているのが、寄せの速さです。

 ゴール前でシュートを打てるところにボールを止めて、目の前に誰もいないんですよ。それで「よし、いまフリーだな」と足を振って打とうとした瞬間に、もう近くまで寄せられているんです。必ず彼の体に当たってシュートが枠を外れるというシーンがほとんどでした。

「なんで? いなかったじゃん!」となるんですよ。予測の鋭さと、1、2歩で寄せてくるスピードがすごかった。足音とか聞こえてきたら、心の底から嫌でしたね。

 それから、駆け引きとかはとくになかったんですけど、「舐めたプレーするとケガするぞ」みたいな顔でにらんできたり、とにかく圧がすごかったですね。先日サッカーのイベントで一緒になって、一般の方と試合をした時に、そうした人たちにも後ろからバーンと行って(笑)。もう空気とか読まないですからね。それくらい"守る"となると、スイッチが入る人でした。

【腕が強い選手が嫌】

4位 チアゴ・マルチンス(ニューヨーク・シティFC)

 横浜F・マリノス時代に対戦したチアゴ・マルチンスは、とにかく速くて、強かった。僕はなるべく彼とは反対のCBと勝負していました。それで裏を取って、FWとしては完全に勝ったなという状態。こっちはもう「GKと1対1だ」と思っていたら、逆サイドからスピードで追いつかれてブロックされてしまう。

 ものすごい勢いで、ひとりだけバイクにでも乗っているんじゃないかと。「これでダメなら俺はなにをすればいいんだ」と思わせるくらい、本当に打開できなかったCBでしたね。僕は彼から点を取ったことがなかったです。

 彼のあのスピードと強さがあったから、当時の横浜FMのディフェンスラインは、あれだけのハイラインを保って守れていたんだなと思います。

3位 坪井慶介(元浦和レッズほか)

 高卒で鹿島に入団して、初めて先発で出て、「ここで結果を出せばスタメンを勝ち取れる」という大事な試合が浦和戦だったんですよ。当時僕はMFで出ていて、その時に対峙したのが坪井さんでした。

 スピード勝負で全部取られて、「あ、プロの世界って、こういう人が第一線で活躍するんだな」と。当時、坪井さんはもう日本代表に入っていたので、「こういう人が代表なのか」とも思いました。

 結局、前半で交代になって、それから一時はメンバーにも入れないことが続きました。だから、坪井さんに会ったら毎回のように「坪井さんのせいで、僕が活躍するのに時間がかかった」と話しています(笑)。

 スピードはもちろんですけど、間合いの取り方がうまいんですよね。坪井さんのイメージがわかるというか、仕掛けられた網のなかに自分で入っていくみたいな感覚でした。

2位 森重真人(FC東京)

 塩谷選手の時にも話していますが、僕は腕が強い選手が嫌なんですよ。その点で、森重選手はJリーグのなかで一番腕が強い選手ですね。彼の腕が届く範囲に入ってしまうと、ほとんど腕で抑えられてしまって、僕からしたら一番嫌なDFでした。

 しかも彼はその強さだけではなくて、足元の技術があって、攻撃のセンスも高い。チームメイトに森重選手みたいな人がほしかったなと思うくらいですね。

 彼とマッチアップした時は、なるべく手が届く範囲に自分からは入り込まないようにしていました。ちょっと距離を置いて、スピードで勝負したり、味方とのコンビネーションで勝負していました。でもそう簡単にいかないのが森重選手でしたね。

 だからといって、彼から離れて違う選手と勝負するのは、負けた気がしてすごく嫌でした。いいDFだからこそ、ストライカーとしてそこを上回りたいし、勝った時の気持ちよさは格別でした。

【ねちっこく、へばりついてくる】

1位 槙野智章(元サンフレッチェ広島、浦和レッズほか)

 広島時代はそこまですごいイメージはなかったんですけど、浦和で一緒にプレーして、紅白戦でマッチアップした時ですよね。彼も腕が強くて、彼の前に入ったら90%くらいの確率で取られていた感覚です。

 そして、腕で抑えられて動けない状況から、彼は足が伸びてくる。そこが森重選手と違うところでした。そこでボールを突かれて......。こぼれ球が運よく味方に行ったとしても、個人的には負けでした。

 本当にねちっこいというか、へばりついてくるんですよ。だから簡単に抜けない。あれはファウルだと思うんですけど、ボールを突いているからなのか、ファウルに見えないようにへばりつくのがうまかったですね(笑)。

 2017年のACL準決勝で、対戦した上海上港にフッキ選手がいたんですよ。そこをどう抑えるかとなった時に、とりあえず槙野をつけようと。そうしたら彼がフッキ選手を完封して、槙野のおかげでACLを優勝できたと言っても過言ではないくらい、本当にすごかったですね。

 それと印象に残っているのが、プレーとは関係ないんですけど、槙野が試合で円陣を組む時に「ラグビーのニュージーランド代表がやっている『ハカ』をやろう」と言い出して、みんなに動画まで送ってきたことがあったんですよ。

 あれは体がゴツいラグビー選手たちがやって、ハカというものをみんな知っているから盛り上がるわけで、ヒョロヒョロしたやつらがやっても恥ずかしいし、ドン引きされるだけだから「絶対に無理」と、僕と阿部ちゃん(阿部勇樹)は言ってて。あれは本当にやらなくてよかったですね(笑)。

興梠慎三 
こうろき・しんぞう/1986年7月31日生まれ。宮崎県出身。鵬翔高校から2005年に鹿島アントラーズ入り。2007〜09年の鹿島のリーグ3連覇に貢献。2013年からは浦和レッズでプレーし、9シーズン連続二桁ゴールなど得点を量産。AFCチャンピオンズリーグ制覇ほか数々のタイトル獲得に貢献した。2022年は1シーズン北海道コンサドーレ札幌でプレーし、浦和に復帰。J1通算2位の168ゴールを記録し、2024年シーズンを最後に現役を引退した。2025年から浦和のパートナー本部パートナー営業担当とアカデミーロールモデルコーチとして活動している。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定