
5月14日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル 上席執行役員の宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「上昇が続く“金の価格”と“コメの価格”が下がらないその訳」というテーマでお話を伺いました。
(左から)宗正彰さん、ジャンボたかおさん、浜崎美保
◆金の価格が過去最高値を更新 その訳は
浜崎:宗さまには「上昇が続く“金の価格”と“コメの価格”が下がらないその訳」についてお話しいただきます。近年上がり続けてきた金の価格ですが、今月には過去最高値を記録したそうですね。
宗正:小売価格なので購入するお店で多少上下はしますが、少々前に遡って2023年9月に1gあたりの金の小売価格が初めて1万円を超えました。そして昨年10月には1万5,000円台、4月に入り1gあたり1万7,000円台に突入しました。
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宗正:直近で価格の上昇に弾みがついたのは、トランプ関税が大きく影響しています。株式市場に先行き不透明感が出てきた中、株が売られて株式市場から投資資金が抜け始めました。でも、株式市場を抜けた後、資金は必ずどこかのマーケットに移動します。その移動先が金のマーケットだったという訳です。
浜崎:そういう動きがあるんですね。
ジャンボ:今、金の価格が最高値ということは、このタイミングで買うことに関してはどうなんですか?
宗正:この後にお話ししますが、まだ上がる要因がいくつかあります。ただ、どのような投資も自己責任が原則ですので、そこはお忘れなく。
浜崎:金の価格が上がるいくつかの理由のなかに、近年の円安傾向も関係していますか?
宗正:最近は1ドル140円台の半ばあたりで推移している為替市場ですが、年単位の中長期で見れば円安と言える水準ですよね。金は世界中で取引されているので、基本的にはドル建てによる取引です。ドル建ての金の価格を日本円に換算するので、円安であればある程、日本の金価格は高くなります。
マーケット要因に近いところでもう1つ挙げられるのが、世界的な低金利です。コロナ禍以降、ごく最近まで世界の国々は景気対策のために低金利政策を取ってきました。金は持っているだけでは、債券のように金利がつくわけではありません。ただ金利の低い状態が続いたので、金に金利がつかないというネガティブな面もそれほど意識されませんでした。こうしたことも、金の価格が近年ずっと上がり続けている理由の1つだと思います。
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宗正:そうなんです。これまでの金の需要のほとんどは、例えば指輪のような宝飾品、他には投資用としての金、大きくこの2つでした。ところが近年、半導体のような電子機器関連の需要が著しく伸びて、工業用としての金が世界的な需要を押し上げています。
その一方で新たな金の鉱山がどんどん出てきているかといえば、そうではない。つまり金の生産量が頭打ちの中で需要が伸びているので、価格は上がるということです。
それからもう1つあります。近年、多くの中央銀行が金を買い始めているんです。中央銀行は、日本で言えば日銀、アメリカで言えばFRBを指しますが、世界の中央銀行の多くが2010年あたりから金の買い手に転じています。各国の中央銀行は対外的な債務の返済や、緊急時に何か必要なものを輸入するために、一定の外貨を持っています。外貨準備というものなんですが、為替介入のときに使う資金もこの外貨準備です。
これまで、各国の中央銀行の多くが特定の国の通貨を一定割合持っていたのですが、そうなるとその国のカントリーリスクも同時に負ってしまう。リスク分散の観点から、金の資産を買い進めたという背景があります。
ジャンボ:そうか。その国の通貨を持っているよりも、金を持っている方が間違いないという考えにシフトしているということですね。
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◆備蓄米放出にもかかわらず、コメ価格は上昇止まらず
浜崎:価格が高いと言えばお米もそうですが、春頃から政府の備蓄米が放出されたにもかかわらず、価格が下がらないのはなぜなのでしょうか。
宗正:政府が今年の3月から備蓄米を放出していますが、当初放出した備蓄米の量が約21万トン。4月の中旬までに小売店に届いたのは、その中のわずか1.4%なんですよ。
これでは価格が下がる訳がなくて、問題は流通経路にあるということなんですよね。米の価格の高騰を抑える有効な対策としては、この米の流通経路にメスを入れることが必要です。その他には新しい流通経路を作る、例えば輸入米の増加なども有効だと思います。
定期的に政府が発表する「消費者物価指数」という統計がありますが、2025年3月の消費者物価指数を見てみると、米価格の上昇率は前年比で92.1%の上昇。つまり1年間でほぼ倍になっています。
ジャンボ:いやもう、衝撃的に高いですもん。
宗正:「エンゲル係数」って、よく耳にしますよね。消費支出全体に占める食費の割合を示すものなんですが、これが最近は28.3%です。どれくらい高い水準かというと、1981年度以来なんですよ。
ジャンボ:本当ですか! その当時以来のエンゲル係数の高さになっているんですね。
宗正:つまり43年ぶりの高水準ということで、明らかに今の所得水準では食品価格の高騰に追い付けないということです。
ジャンボ:そうですよ。納得いかないですよね。給料は変わらないのに、米だけどんどん高くなって……。
宗正:お米をはじめ食品価格の高騰が家計を圧迫している状態です。ただ、米農家の方のご苦労って大変じゃないですか。だから今が適正価格なんだという見方も一方ではありますよね。
ジャンボ:私は本当にお米が大好きで、お米で太ったタイプなんですよ。お米の価格が倍になっていても、そのまま農家の方の収入が増えるならいいですけれど、そういう訳ではないらしいじゃないですか。結局、誰が悪いという話なんですか?
宗正:先ほどお話したように、流通の途中で滞ってしまっているという問題があります。確かに今ジャンボさんがおっしゃったように、価格が上がった分だけ農家の方に還元できればいいのですが、そうじゃないというところが非常に問題だと思います。
◆夏の参院選、どこに注目するべき?
浜崎:今の物価高対策はこの夏の参議院議員選挙の大きな争点の1つになりそうですが、物価高にはトランプ関税対策も必要ですか?
宗正:今の日本の物価高とトランプ関税が紐付けられて語られることが時々ありますが、トランプ関税で物価が上がるのは日本国内ではなく、アメリカ国内です。巡り巡って日本国民が影響を受ける事態も想定できなくもないですが、現時点では、トランプ関税と日本国内の物価高対策は、分けて考えたほうが良いと思います。
総務省が今月発表した、昨年度(2024年度)の家計調査を見てみると、2人以上の一世帯ひと月あたりの消費額は30万4,178円でした。物価変動の影響を除いた実質で見ると、前年度と比べて0.1%の減少、2年連続のマイナスです。その主な要因は、やはり食品を中心とした長引く物価高。食品の中でも先ほどお話ししたお米は日本人の主食ですから、そういう意味でもこの流通経路にメスを入れて価格が下がれば、高い効果が期待できると思います。
近年、政府がおこなう物価高対策は、ガソリン代の補助のような主にエネルギー関連が中心なんです。ただ今の時点では、輸入物価は下落していて、だから、そればかりを続けても物価高の有効な対策にはつながりません。
物価高といえば消費税減税なども紐付けて議論されることがありますが、消費税減税の話ばかりをして物価高対策に手をつけないでいれば、根本的な対策とは言えませんよね。
浜崎:この消費税減税も参議院議員選挙の大きな争点になりますか?
宗正:今くらいの時期から続々と各政党の候補者が名乗りを上げたり、各政党の政策も見え始めたりしています。日本では物価高のようなインフレ対策として、しばしば現金の給付が議論されがちですが、実際には多くの国では減税を採用しています。減税のほうが速攻性があることに加えて、費用対効果も高い。実際にアメリカではインフレに応じて、課税最低限や所得税率を変えています。
ジャンボ:消費税はずっと上がり続けていますし、消費税の減税って我々は経験したことないから夢物語だと思っていましたけれど、海外では普通にやっていることなんですね。
宗正:そうなんですよ。トランプ大統領が最近「日本の消費税は関税と同じだ。日本に消費税があるから、日本がアメリカのものを輸入しないんだ」と発言しています。要は消費税のせいで、購買力が下がっていると。日米の間で「トランプ関税」交渉が激しさを増す中、ひょっとしたら、トランプ大統領が日本の消費税を下げる引き金を引くかもしれません(笑)。
減税という言葉の響きは、選挙の際には非常に魅力的ですが、必ずそれに代わる財源が必要です。この夏の参議院選挙まであとわずかですが、各候補者や政党の公約を見たり聞いたりする中で、この国の問題の本質に気付かされるかもしれませんね。
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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月〜木曜17:00〜19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ〜)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/sky/
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