
この内容をお届けしたのは、5月2日(金)放送のJ-WAVE『THE NICHE WORKBOOK』。ナビゲーター・市川紗椰がゲストとともに、業界用語を入り口に世のなかの“いろいろ”をニッチな視点からのぞき見る番組だ。なお、トークの模様はポッドキャストでも配信中。
■ポッドキャストページ
ハンバーグにまつわる業界用語「ひきざい」とは?
今回のゲストは、J-WAVE『JAM THE PLANET』の水・木曜ナビゲーターとしても知られる石田 健。そんな石田と市川が2週にわたって考察するのは「ハンバーグ」だ。市川はハンバーグの業界用語として「挽き材(ひきざい)」という言葉を紹介。用語の意味を考察するふたりに、銀座にある吉澤畜産の代表取締役社長・吉澤直樹さんが解説をしてくれた。吉澤:我々は仲卸をやっているのですが、挽き肉にする前の段階のお肉は挽き肉の材料なので「挽き材(ひきざい)」という名前で呼んでいます。挽き材には赤身挽き材や霜降り挽き材、ごちゃ混ぜになっている普通の挽き材など、いろいろな種類があります。
市川:部位に分けての挽き材があるし、赤身のなかでも挽き肉材料になる部分と、ステーキ材料になる部分があるのですね。
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市川:今回のテーマは挽き材、ハンバーグのお肉の挽き方に注目していくということで、もう少し吉澤さんに訊いてみました。
吉澤:挽き方で言いますと、粗挽き・細挽き・二度挽きぐらいが一般的ですが、加えて挽き肉の機械の目の口径には粗め・中め・細めというのがありますね。また、あまり細すぎると肉を挽いていったときに練りものみたいになってしまうので、ある程度、挽きが担保できる口径はありますね。粗挽きも細挽きもそれぞれのよさやお客様の好みがありますが、たとえば食べたときにより肉感を感じるようなハンバーグだと粗挽きのほうが向いていて、部位で言うとスネやネックを中心に作ったほうがおいしいと思います。
さらに、吉澤さんはハンバーグに合う挽き方や部位について解説した。
食べたときに、口のなかでジューシーな肉のうまみをダイレクトに感じられるような食感のハンバーグだったら、細めのほうが合うと思います。細めにするときは、ある程度、脂の甘みの入るような部位、たとえばブリスケやバラを入れることで、より肉のうまみを感じられます。それがソースと合わさると(肉とソースの)マリアージュを楽しめるので、お客様は自分のお店の料理に仕上げていくときには素材と向き合って、ソースとの兼ね合いで「こういう挽き肉にしてくれ」という要望がありますね。
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数々の有名店に肉を卸しており、各店の要望に合った挽き肉を作る吉澤畜産では、曜日限定で生ハンバーグを販売している。また、缶に入ったハンバーグ「缶バーグ」も、店頭で販売中だ。
ハンバーグの魅力に気づかされた、名店との出会い
挽き材という業界用語を入り口に、ハンバーグの挽き肉の“挽き方”のみに注目してトークを進めるふたり。石田に事前に行った質問では「芝浦食肉のハンバーグが好き」と回答していた。市川:(芝浦食肉に)こだわりを教えていただいたところ、「和牛100パーセントならではのお肉の旨みと、舌触りを滑らかにする挽き、本気の手ごね」ということでした。
石田:僕は昔、池袋の店舗によく行っていて、いまでこそ(いろいろなお店で)「レアっぽいもの」などのこだわりが出てきましたが、芝浦食肉では10年前くらいからけっこうレアめなものもありました。また、熱くなった鉄板が用意されていて、自分の手元で追加で焼くこともできて、それがすごく楽しかったんです。お肉の専門店さんなのでお肉へのこだわりもあって、おいしいお肉を使ったハンバーグということで、よく知っているようなファミレスや冷凍のハンバーグ以外の選択肢があると知ったのが、ここのお店でした。
市川:なるほど。私もありました! 私は17年くらい前に茅場町の牛幸(うしこう)というすき焼きの老舗で、まさに鉄板があって自分で好みの焼き加減にできるお店と出会ってから、「ハンバーグってちょっと面白い」と思うようになりました。ちなみに、芝浦食肉さんはホルモン部位とともに固まりで仕入れているそうですね。
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市川:わかります! 焼肉屋さんなどで余った切れ端を使ってお昼に出しているハンバーグとか、おいしいし値段もちょっとお手軽だったりしますよね。あと、池袋はハンバーグ激戦区なんですよ。ハンバーグの名店がめちゃくちゃ多いので、個人的には「ハンバーグ好きは池袋に行く」というのが、ひとつの法則としてあります。
石田:へぇ〜! さっきの「肉メインのお店が」というところで、最近もうひとつ気づいたのですが、イタリアンやフレンチのコースって、だいたい最後にお肉が出てくるじゃないですか。それを「ハンバーグにしてみました」というお店にたまに出会うんですけど、めちゃめちゃうまいんですよね。
市川:なるほど。あえてハンバーグにするぐらいだから、こだわりがありそう。
石田:僕は、コース料理だと前菜がいちばんおいしいんじゃないか、と思っちゃう派なんですよ。だから、メインにお肉ではなくてハンバーグがくると「おぉ!?」って、その工夫や情熱にグッときてしまいますね。
イタリア料理・サルシッチャから生まれたハンバーグ
今回のオンエアにあたり、J-WAVEの“肉王”ともいわれるDJ TAROに、吉澤畜産を紹介してもらったと語る市川。さらにDJ TAROは、「絶品粗挽きハンバーグ」のおすすめ店として、宝町にあるイタリアンレストラン・Nodo Rossoを挙げた。そこで、同店のオーナー・藤岡広幸さんに「粗挽きハンバーグの魅力とこだわり」を訊いた。藤岡:柔らかくて挽き目が細かくてジューシーなハンバーグももちろんおいしいと思いますが、やっぱり肉本来を味わっていただきたいので、つなぎを極力控えたゴロゴロとしたお肉の粗挽きハンバーグを作っています。うちはイタリア料理店なので、粗挽きのお肉に香草などを混ぜて腸詰めしてサルシッチャという肉料理を作って出していました。しかし、お客様に「サルシッチャって何ですか?」と質問されて、「イタリアのソーセージです」というと、日本のソーセージのイメージが強くて食べてもらうことができませんでした。
藤岡さんは、どうしたら多くの人にサルシッチャをおいしく食べてもらえるか考え、工夫したそうだ。
藤岡:イタリアで食べたり見たりしてきたサルシッチャはすごくおいしくて肉々しいものだったので、「それをどうにかできないか」と思って材料を包丁でゴロゴロに切って、つなぐために挽き肉を使って混ぜたものを網脂で包んで焼き上げたのが、粗挽きハンバーグの最初です。それを「ゴロゴロお肉のNodo Rossoハンバーグ」というオリジナルの名前でディナーメニューとして出したらお客様に好評で、それからうちのハンバーグに関してはすべて粗挽き、ゴロゴロしたお肉を使うというかたちで進めています。スーパーで売られている挽肉は5ミリや8ミリという挽きが一般的ですが、うちは1.8センチのほとんど親指大くらいのゴロっとしたお肉が入ります。ただ、それだけだとちょっとまとまりませんし、噛み応えというか、いわゆる「ハンバーグっぽさ」を出さないといけないので、8ミリ挽きと1.8センチの2種類のお肉を合わせています。
市川:すごいこだわり!
石田:8ミリと1.8センチって、だいぶ違いそうですよね。
市川:部位にもこだわりがあるみたいで、豚と牛の腕とモモ。肉々しさを増すために、牛で使うのは内モモだけだそうです。サルシッチャが由来というのは、面白いですね。食べてみたい。
石田:サルシッチャは最初に「ソーセージだ」と言われて、(日本の)ソーセージだと思って頼んだら違うという驚きがありました。前菜だと思ったら、ガッツリくるみたいな部分もありますよね。
市川:ちなみに吉澤さんによると、おうちでこだわりハンバーグを作るときには、挽き肉に細切れのお肉や塊肉を粗く切って混ぜるのがおすすめだそうです。私、いろいろ試したくてやったことあります。あと「ちょっとレアなハンバーグをおうちで食べたい」となったときには、挽き肉で買うとちょっと時間が経ってしまっているので生でいけるかわからないけど、「鮮度が高いステーキ肉ですよ」というのをミンチにしてやってみたことがあります。ただ、家でやるには限界があるから、今回いろいろ聞いてみてちょっと広がりそうな気がしました。
石田:挽き肉だけで作ると思っている人が多いですが、「もっと肉感を出したいときは自分でミンチしてもいいんだなとか」「この部位を使ってもおいしそうだな」と、挽き材だけでもすごくインスピレーションが湧きますね。
石田は次週の同番組でも、市川とハンバーグについて語り合った。ポッドキャストで配信中だ。
ニッチな世界から覗き見
市川紗椰がお届けする『THE NICHE WORKBOOK』では、業界用語を入り口に、世のなかのいろいろをニッチな視点から覗き見し、知識欲の渦に巻き込まれていく、未知を愛でる30分。放送は毎週金曜25時30分から。ハンバーグを扱った回のほか、「相撲」を取り上げた回も配信中。今後もあらゆる分野を掘り下げていく。以下、Spotifyの埋め込みプレイヤーの「…」を押すと、番組をフォローできる。
番組情報
THE NICHE WORKBOOK
毎週金曜
25:30-26:00
市川紗椰
オフィシャルサイト