「僕たちのことだけ考えよう」順位ダウンを回避すべくピットインを懇願したルクレール【F1第7戦無線レビュー(2)】

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2025年05月23日 12:30  AUTOSPORT web

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2025年F1第7戦エミリア・ロマーニャGP シャルル・ルクレール(フェラーリ)
 2025年F1第7戦エミリア・ロマーニャGP。レース前半にはエステバン・オコンがストップしたことでバーチャルセーフティカーとなったが、後半に入ってアンドレア・キミ・アントネッリが止まると、セーフティカーが出動した。するとこのタイミングでのピットストップをめぐり、フェラーリでは激しいやり取りが繰り広げられた。エミリア・ロマーニャGP後半を無線とともに振り返る。

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 レース中盤の33周目、ルイス・ハミルトン(フェラーリ)は7番手まで順位を上げ、アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)を追う展開だった。

ハミルトン:ここでフィードバックもらえると嬉しいかな。リカルド・アダミ:コーナー進入を少し早めに。ペースはいいぞ。

 そして34周目にアントネッリを抜いて、6番手に上がった。

アダミ:P6だ。素晴らしい。コース上で一番速いドライバーだ。

 ハミルトンと初めて組んだ担当エンジニアのアダミ。最初は噛み合わないことも多かったが、少しずつコンビの体をなしてきた感じだ。

 ハミルトンはさらに、アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)を射程距離に捉えていた。

35周目ピエール・アムラン(→アジャ):オーバーテイクを仕掛けてくるぞ。モード8でバッテリーを使おう。

 しかしあっさりと抜かれていった。

アダミ:P5だ。最高だ。ハミルトン:この2台を抜くのに、だいぶタイヤ使ったけどね。

 この時点でアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は表彰台圏内の3番手を走行していた。しかし30周目にニュータイヤに履き替えたオスカー・ピアストリ(マクラーレン)が、1周1秒近く速いペースで猛追し、あっという間に1秒以内に迫ってきた。

39周目ジェームズ・アーウィン:ピアストリがDRSを使ってくるぞ。アルボン:わかっている。ブレーキングで刺されそうだ。

 アルボンはなすすべもなく抜かれ、4番手に後退した。

トム・スタラード(→ピアストリ):グッジョブ。P3だ。

 後方ではハードタイヤでステイアウトしたフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)がジリジリと順位を落とし、44周目には13番手まで下がっていた。

クリス・クローニン:チェッカーまで22周あるが、VSCが出たらミディアムに履き替える。アロンソ:これは拷問だよ。世界で最高に不運なドライバーだ……。作戦が全然うまく行ってない。セーフティカーが出ても、何も助けにはならないよ。クローニン:いろいろな可能性を考えている。まだ諦めないぞ。

 45周目、8番手を走っていたアントネッリがトラブルに見舞われた。

アントネッリ:問題が出た。ピーター・ボニントン:了解。スロットルコントロールを失ったようだ。

アロンソ:セーフティカーでも赤旗でも、何でもいい。早く出てくれ。

 レース前半でのエステバン・オコン(ハース)のリタイアの際にはバーチャルセーフティカー(VSC)だったが、今回はセーフティカー(SC)が導入された。

ジャンピエロ・ランビアーゼ:セーフティカーが出た。マックス・フェルスタッペン:なぜ今回はセーフティカーなんだ?ランビアーゼ:よくわからない。

 アロンソと担当エンジニアのクローニン、そしてシャルル・ルクレール(フェラーリ)とブライアン・ボッツィの間で、ピットインすべきか激しいやり取りが行われた。

クローニン:ステイアウトだ。アロンソ:いや、ボックスだろう。クローニン:今入ったら、渋滞にハマる。アロンソ:このままだと周回遅れだ。ボックスだろう。クローニン:いや、ステイアウトだ。

ルクレール:タイヤ交換した方がよくないか。ボッツィ:いや、ステイアウトだ。最後まで走り切れるタイヤがない。ルクレール:ソフトでいいだろう。ボッツィ:まだ17周あるんだぞ。17周だ。ルクレール:ミディアムで何周走った?ボッツィ:11周だ。

ルクレール:僕らにはソフトのニュータイヤがあるよね?ボッツィ:ハミルトンはまだピットインしない。ルクレール:そんなことはどうでもいい。僕たちのことだけ考えようよ。ボッツィ:確かにソフトの新品がある。それにしたいのか? 今すぐ答えてくれ。ルクレール:イエスだ。ボッツィ:よし、ボックスだ。いや、待つんだ!ルクレール:どうして?! ルイスはピットインしたよね? だったらその後ろで待って、ポジションを失いたくないんだけど。ボッツィ:わかった。ステイアウトだ。

 結局アロンソは主張を通して46周目にピットイン、ルクレールはステイアウトとなった。今回もそうだったが、ボッツィは自分で最適解を判断するより先に、まずルクレールの希望を聞く傾向がある。多くの場合、状況をより広くわかっているのは担当エンジニアのはずなのだが。

 54周目、ニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)を攻め続けた角田裕毅(レッドブル)が、ミスの誘発に成功し10番手に上がった。

リチャード・ウッド(→角田):いい感じだぞ。

 この時点でピアストリは2番手まで上がっていたが、46周目にタイヤ交換したランド・ノリス(マクラーレン)にみるみる差を詰められていた。

ノリス:チームメイトのタイヤ、ちょっと古いよね。スワップを要求してるわけじゃないけど。

 58周目、ノリスがピアストリを攻略し、2番手に上がった。

スタラード(→ピアストリ):あと5周。後ろにいるのはルクレールとアルボン。アルボンはニュータイヤだ。

 60周目、アルボンはルクレールに仕掛けるがグラベルに押し出され、ハミルトンにも抜かれていった。

アルボン:フェアじゃない!アーウィン:同感だ。タイヤは大丈夫だ。

 ハミルトンは次の周にはルクレールをかわし、4番手に上がった。

アダミ:表彰台のポテンシャルがあるぞ。ハミルトン:あと何周だ?アダミ:3周だ。

 確かにピアストリよりペースはよかったが、この時点で2秒以上離れていた。3位表彰台を口にしたのは、ハミルトンへの励ましと取るべきだろう。

 ここでルクレール陣営で、最後のドタバタが発生した。

62周目ボッツィ:アルボンに順位を譲るんだ。ペナルティを取られないように。ルクレール:これはジョークだよ。何か悪いことをしたのか?

 納得のいかないルクレールだったが、最終周に6番手に下がった。しかしスチュワードは、ルクレールとアルボンの攻防はお咎めなしの裁定を下した。

 そしてフェルスタッペンが第3戦日本GPに次ぐ今季2勝目を挙げた。

ランビアーゼ:ナイスジョブだ。クリスチアン・ホーナー代表:レッドブル400戦目を勝利で飾ってくれたね!フェルスタッペン:素晴らしい週末だったよ。

 12番グリッドから4位まで上がったハミルトンも、歓喜を隠しきれない。

ハミルトン:クルマも戦略も最高だった。(イタリア語で)みんな、ありがとう!!

 ルクレールも6位入賞を果たしたとはいえ、ハミルトンのように喜んでいないのは明らかだった。

[オートスポーツweb 2025年05月23日]

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