わずかな物音で集中力が…発達障がい×働き方 働きやすい職場には何が必要? 完全在宅・“納期なし” 「自分のペースで働く」を実現【work23】【news23】

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2025年05月24日 14:50  TBS NEWS DIG

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“働き方のイマ”に注目するシリーズ「work23」。第7弾は「発達障がいと働き方」について。発達障がいはコミュニケーションなど苦手な分野がある一方で、優れた能力が発揮される場合もあり、そのアンバランスさが理解されにくい障がいです。全国に87万人いると推計されていて、「働きたい」と思う発達障がいのある人が活躍できる、安定した職場作りが急務となっています。

【写真で見る】働きやすい職場には、何が必要?

わずかな物音で集中力が…発達障がいと働き方

31歳で、ある企業の新入社員になった山内さん。取材したこの日、山内さんは1か月間の研修を終え、初めて仕事を任されました。

リモート会議の上司
「簡単ではない案件なんですけど、山内さんの能力とパッションなら乗り越えてもらえると」

山内さん(31)
「ちょっとどきどきしています。評価が気になる…すごく難しそうだなと思って」

山内さんは、17歳の時に「広汎性発達障害」と診断されました。わずかな物音や視界のちらつきで、集中力が大きく奪われてしまうという特性があります。

山内さん
「隣の席の人が大きな貧乏揺すりをしているとか、そういうので集中力を持って行かれたり…」

大学2年生の頃に、重度のうつ病を患い、大学を中退。単発バイトで働くも、悩みは深くなるばかりでした。

山内さん
「人生これでいいんだろうかと…。単にうつ病に押し潰されている状態から、『これから自分どうしよう、レールから外れちゃったし』と思って、単発バイトの後にすごく悩む時期に入る」

浮き沈みを繰り返し、のべ7年間ひきこもっていましたが、支援者から紹介されたアルバイトを続けるうちに自信を取り戻していきました。

山内さん
「大学も中退で終わっちゃったし、やっぱり何か…『なし得たい』ではないですけど、そういう気持ちがあって勉強し始めて。未経験で始められるエンジニアやプログラマーみたいなところを探していたんですけど、受からなくて…」

「(面接で)『お客さんと接する機会があるけど、ちゃんとコミュニケーションを取れるか?』とか。自分の病気のこととかに関して、あまり深く聞かれると答えられなかった」

「発達障がいをもっと知ってほしい」全国で推計87万人

2022年12月時点で発達障がいと診断された人の数は、全国で推計87万人。

人手不足が深刻化するなか、就労意欲のある発達障がいを持つ人たちが、どのようにしたら働けるのかは、社会全体の課題です。

都内のバーで、行われていたのは、発達障がいがある男性が1日店長を務めるイベント。バーを訪れた客も、発達障がいがあります。

ここで聞こえてきたのは、仕事に関する悩みばかり…

女性会社員(27)
「どの優先順位で仕事をやればいいのかわからなくて、間違った優先順位で仕事をやってしまって、困らせてしまう」

男性アルバイト(24)
「発言するときに、言い方を間違えたりとか、言い方がきつかったりしてしまう」

1日店長を務めた学生(22)
「空間の把握が苦手で、物事をてきぱきこなすのが、手先がものすごく不器用なので」

目に見えづらい発達障がい。働きやすい職場には、何が必要なのでしょうか。

女性会社員(35)
「フレックスタイム制がもっと世の中にたくさんあるといいのになと思う。私のケースだと、体調が非常に安定しないので、できる日もあればできない日もある。この波を縮めることができないので。この時にやる、下がっているときはやらないみたいなコントロールがシステム的にできたら」

求職中の男性(24)
「発達障がいのことをもっと知ってほしいというのはありますね。まだまだ知らない人が多い。“発達障がい=できないやつ”と思っている人が一定数いるので、その人たちにどう伝えるのかが今の問題なのかなと」

“在宅・納期なし”自分のペースで「諦めないで生きる」

物音や、視界の動きに敏感な特性がある山内さん。この春から、AIエンジニアとして再スタートを切りました。

山内さん
「障がい者を前提としているだけあって、安心して働ける。フルリモートなので、音が気になるとかそういうのもない。好印象でいいなと」

再出発に選んだ会社の特徴は”自分のペースで働ける”ということ。

仕事は、チームではなく個人単位に割り振られ、週20〜40時間の範囲であれば、働く場所や時間は、自由に決めることができます。

また、会社は、原則納期がない仕事のみを請け負い、社員に、プレッシャーがのしかからないようにしています。

山内さんが働く会社は、AIを使った業務の自動化やアプリ開発などを請け負うIT企業「日揮パラレルテクノロジーズ」。

社長の阿渡さん自身も障がい者雇用で働いていて、障がいの有無に関わらず「一番能力を発揮できる環境で働いてほしい」という思いから、この会社を立ち上げました。

日揮パラレルテクノロジーズ・阿渡健太社長
「障がいを持っている人はそれぞれ特徴があって、例えば通勤が苦手とか、人混みが苦手とか。それが原因で体調が崩れて、安定しなくて辞めてしまうということが多い。じゃあそれ取っ払えば良いじゃんと」
「そういうふうにやれば、(能力を)活かせる人たちはいっぱいいるんじゃないかなと思います」

現在、社員46人中43人が障がい者で、このうち8割は精神・発達障がいがある人たちです。社員は、1人で悩みを抱え込まないよう、雑談ができるチャットアプリを活用したり、手軽に個人面談を受けたりすることができます。

こうした制度によって、2021年の設立以降、自己都合退職者は0人だといいます。

山内さんは、発達障がいがある人たちに「絶望しても、もう一度だけチャレンジしてみてほしい」と話します。

山内さん
「努力が報われると言うと世の中違う部分もあるが、一生懸命やったことで、何か自分の中で気付きとか踏ん切りみたいなものもあったりするので。同じような苦しい局面とかにある人も、頑張ればどうにかなった事例が一個ありますよということで、諦めないで生きるというのが大事なのかなと」

このニュースに関するつぶやき

  • まあ様々な障害を持っていても、日本ではそんな人たちも食わせるのが大前提だからね。何かしらで役に立ってくれればいいと思うよ
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