『木の上の軍隊』完成披露試写会に登壇した(左から)平一紘監督、堤真一、山田裕貴(C)ORICON NewS inc. 終戦から80年を迎える2025年、沖縄戦を題材にした映画『木の上の軍隊』が、5月23日に那覇市・シネマQで世界初上映された。舞台あいさつには監督・脚本の平一紘、主演の堤真一と山田裕貴が登壇し、作品に込めた思いや撮影の裏側を語った。上映後、観客に感想を聞くと、それぞれが本作と向き合った思いを丁寧に言葉にしてくれた。
【動画】『木の上の軍隊』完成披露試写会の模様 本作は、沖縄・伊江島を舞台に、終戦を知らず2年間にわたり木の上で潜伏生活を続けた2人の日本兵の実話に着想を得た、井上ひさし氏原案の舞台作品を映画化したもの。撮影は全編沖縄ロケで、伊江島のミースィ公園に複数のガジュマルの木を移植して根付かせた樹上にセットを組んで行われた。
平監督は、「企画が始まったのは約2年前。今日こうして、たくさんの方々に観ていただける日を迎えられたことが何よりうれしいです。本当に戦場だった場所(伊江島)で、本物のガジュマルの木の上で撮影しました。だからこの映画にはほとんど“嘘”がない。脚本では、2人が“どう生き延びるか”を軸にしました」と語った。
堤は、「この映画には、沖縄が持つ本来の力や前向きさを強く感じました。それは単なる“熱意”という言葉では語りきれないものです。そこに対しての自信は大きいです」とコメント。山田も、「実話の舞台となった伊江島で上映できることが何よりうれしいです。皆さんの感想が楽しみです」と話した。
堤が演じたのは、当時の帝国日本軍の価値観を象徴する上官・山下一雄。山田はその対極にある、戦争を知らない沖縄出身の新兵・安慶名セイジュンを演じた。「現代にも通じる“普通の青年が戦争に巻き込まれたらどうなるか”を意識して演じました」と山田。役づくりでは干し芋・納豆・豆腐のみの生活で体重管理を行い、「食べることのありがたさを改めて感じました」と振り返った。
平監督は「この映画が“沖縄から発信される”ということに大きな意味があります。ここに集まってくださった皆さんは、世界で最初の観客です。観終わった後の感想を、どんな形でもいいので、ぜひ周囲に伝えてもらえたらうれしいです」と観客に呼びかけた。
山田も、「観終わったあとに浮かぶ“誰か”や“言葉”があると思います。その感情を大切にしながら、この映画を受け取ってもらえたら」と話し、感想への期待を寄せた。
最後に堤は、「この映画は戦争を描いていますが、単に過去を描いたものではありません。沖縄では、6月になると人々が自然と戦争のことを思い出し、語り継いでいる。今も基地の問題を抱えている沖縄では、そうした意識が深く根付いています。だからこそ、この映画を“戦争を遠くに感じる人たち”にも届けたい。まずは沖縄でしっかり受け止めてもらい、そのエネルギーが全国へと広がってくれたらうれしいです」と舞台あいさつを締めくくった。
■観客の声――若い世代にも響いた“本当”の物語
★高校1年生の女性4人組:
「映画を観て、2人の兵士が苦しい状況に立ち向かいながら2年間も生き延びたことを知って、私も毎日を大切に生きたいと思いました」
「ひいおばあちゃんが沖縄戦を経験していて話を聞いたことがあります。戦争体験を直接聞ける世代は私たちで最後かもしれないから、受け継がなきゃいけないと感じました」
「山田裕貴さんが好きで観に来たのですが、戦争のリアルさや心情が丁寧に描かれていて、深く考えさせられる内容でした。今という時間をもっと大切に生きたいと思えました」
「沖縄で生まれ育って、戦争について考える機会は多いけれど、“木の上で2年間過ごした”という事実は知らなかった。改めて命の重さと、語り継ぐ大切さを実感しました」
★40代・サービス業の男性:
「亡くなった父が戦争体験者で、生前『どの方向に向かっても手を合わせていい。どこも戦場だったから』と言っていたのを思い出しました。俳優の方々のリアルな演技に引き込まれました」
★40代・主婦(7歳の子どもと鑑賞):
「不安定な時代だからこそ、沖縄戦を描いたこの映画には大きな意味があると思います。子どもは少し怖いと感じた場面もあったようですが、最後まで集中して観ていました」
★20代・会社員の女性:
「沖縄に住む者として、この映画は“観るべき作品”だと強く感じました。学びが多かったです」
★50代・主婦:
「戦争映画だと思って観たら、今ある平和の大切さを感じさせてくれる作品でした。実話だと知って感動しました」
★30代・カフェ経営者の男性:
「戦争映画は避けがちでしたが、観て本当に良かったです。過去を知ることの重要性を改めて感じました」
★20代・会社員の女性:
「堤さんと山田さんのやり取りが印象的で、撮影が本当に木の上だったと知って驚きました。木の上が徐々に“家”のようになっていく様子がとてもリアルでした」
★40代の母親と10代の息子:
母「沖縄戦を描いた映画が作られること自体、ありがたいです。平和学習は沖縄では当たり前だけど、他の地域ではまだまだ。だからこうして全国で観てもらえるのはうれしいです」
息子「2年間も木の上で生活するなんて、本当にすごい。自分には無理だと思いました」
★30代・事務職の女性:
「ただの戦争映画ではなく、観たあとに前向きな気持ちになれる映画でした」
映画『木の上の軍隊』は、6月13日より沖縄にて先行公開、7月25日より全国公開される。
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