チェ・スヨン & コンミョン=『禁酒をお願い』 (C) STUDIO DRAGON CORPORATION 韓国の俳優チェ・スヨンとコンミョン主演を務めるドラマ『禁酒をお願い』(日本ではU-NEXTオリジナルとして独占見放題配信中)。同作は自分のことを常識的な愛酒家だと思っていた女性が、酒を憎んでいる初恋の人と再会し禁酒に挑戦する、“しらふ死守ロマンス”ストーリー。チェ・スヨンは、10年目のベテラン自動車整備士ハン・クムジュにふんし、愛酒家だった女性が禁酒に挑戦する様子を、コミカルかつリアルに表現する。クムジュの初恋の人である保健支所長ソ・ウィジュンを、コンミョンが務めている。
【写真】『禁酒をお願い』チェ・スヨン & コンミョンの制服ショット このたび、チャン・ユジョン監督、キャストのチェ・スヨン、コンミョン、キム・ソンリョン、キム・サンホ、チョ・ユンヒのインタビューが到着した。前編となるこの記事では、制作のきっかけや各キャラクターの紹介をお届けする。
――チャン・ユジョン監督に質問です。これまで“お酒を飲みたくなる”作品はたくさんありましたが、“もうお酒はやめるべきでは?”と禁酒を勧め、正面から問いかける作品は『禁酒をお願い』が初めてではないでしょうか?
【チャン・ユジョン監督】おっしゃる通りだと思います。実はドラマの序盤では、お酒が大好きな家族の姿を描いているので、かえって飲みたくなるシーンも少しあるんです。私自身、お酒が絶対に悪いものだとは思っていません。でも、お酒って飲めば飲むほどコントロールが難しくなって、過度に依存するようになりがちですよね。そしてその依存は、結局自分自身を傷つけることにもなり得ます。本作は、そうした“危うさ”を、時にはユーモラスに、時には真摯に描き出す、ある種のアドバイスのような作品だと思っています。
お酒の話であると同時に、“依存”というテーマについても深く掘り下げているんです。癒やしを求めてお酒に手を伸ばすように、人は何かに過剰に執着したり、心の傷に囚われたりすることがあります。そんな時、家族や恋人と共にどう乗り越え、回復していくのか、その過程も描いています。
――お酒のないドラマは珍しい一方で、お酒と一緒に楽しめるコンテンツは世の中にあふれています。禁酒をテーマに物語を描こうと思ったきっかけや、その必要性を感じた理由はありますか?
【チャン・ユジョン監督】先ほども申し上げた通り、お酒が絶対的に悪いとは思いませんが、危険な要素があることは確かです。人は慰めが欲しいときや虚しさを感じるとき、何かに依存しがちですよね。読書をする人もいれば、運動をしたり、映像を観たりする人もいるでしょう。でも、お酒に執着したときのリスクは相当なものです。そういった部分に光を当てる必要があると考えました。「これくらいなら大丈夫」と思っていても、気づけばその一線を越えてコントロールできなくなる。そういった点が危険なのですが…。この話をしている私自身、少し気恥ずしく、まずは自分からしっかりしなければという思いです。
――「ハン・グムジュ」というキャラクターはどのような人物なのか、紹介をお願いします。
【チェ・スヨン】ハン・グムジュは、男性ばかりの自動車整備業界で10年間生き抜いてきた整備士です。生き残るために残業もいとわず、がむしゃらに働いてきました。その結果、お酒の量が増え、アルコール依存症に至りました。お酒がないと眠れず、お酒を楽しむ一方でそれに依存もしているキャラクターです。そんなグムジュがポチョンという町へ行き、お酒を極度に嫌う初恋の人と再会し、家族のサポートのもとで禁酒に挑戦する、その成長が描かれます。
当初は、アルコール依存症の度合いをどう表現し設定するか、監督とたくさん話し合いました。私たちの周りにも、一見そうとは見えないけれど実はアルコール依存症という方が結構いらっしゃるんです。そういった方々の姿を観察したり思い出したりしながら、本当に身近にいそうなアルコール依存症の姿をリアルに描こうと努めました。多くの方が、最初は依存症であることを否定するそうですね。「まさか自分が」「私は違う」と。なので、グムジュが自身もそうかもしれないと受け入れるまでの過程を丁寧に描くことが重要だと感じましたし、実際に脚本にも非常に細かく描写されています。グムジュのそうした成長過程や、家族の愛を感じながらポチョンで癒やされ、変化していく姿に注目していただけるとうれしいです。
――皆さんに伺います。それぞれが演じられた人物についてご紹介ください。
【コンミョン】ソ・ウィジュンは、空席だったポチョン村の保健支所に医師として赴任し、村の高齢者たちにとって希望のような存在となる人物です。落ち着いていて信頼感のある姿から、「ソヌニム(ソ+神様の意を持つ愛称)」と呼ばれています。グムジュとの感情のやり取りにおいて、ウィジュンは心の内を簡単に明かしたり、ストレートに気持ちを伝えるタイプではありません。そして「初恋」という言葉が持つ重みもあるため、視聴者の皆さんにウィジュンのグムジュへの想いや感情の流れがどのようにすればより伝わるか、たくさん悩みました。
【キム・ソンリョン】私が演じるキム・グァンオクは、最初から禁酒令を出していたわけではありません。もともとはとても幸せな家庭の妻で、愛妻家の夫と愛らしい2人の娘と仲むつまじく暮らしていましたが、グムジュが酒のせいで婚約破棄されたことから物語が始まります。酒豪ぞろいの家族の中で唯一お酒を遠ざけている人物ですが、孤独を感じるというより、今回は2人の娘の母親役を演じることができて、とても幸せでした。私自身、実際に息子を育てていますので、今回の撮影は本当に楽しかったです。とにかく、グァンオクはポチョン村と家族を牛耳るような、長姉のような人物です。彼女の禁酒令も、家族全員の健康と幸せを願ってのことなのです。
【キム・サンホ】ハン・ジョンスは、妻と暮らすことも、2人の娘がいることも、家族と過ごす時間にお酒があることも、すべてが幸せでした。しかし、妻の禁酒令によって、その幸せな状況が一変してしまいます。スチールカットにも写っているカラオケのシーンですが、非常に狭い空間で、俳優たちが同じ歌を何度も、しかも実際にお酒なしで演じるのが大変だった記憶があります。
【チョ・ユニ】育児をしている方なら共感していただけると思いますが、慌ただしい一日が終わって育児から解放された後に飲むお酒は、まさに休息そのものです。お酒というより、 生命水のような存在です。離婚後、双子を1人で育てる中で、つらかったり悲しかったりすることもあると思いますが、「ハン・ヒョンジュ」は明るくかわいらしい家族に囲まれているため、常に暗くて悲しいだけではなく、愛らしいキャラクターとして描かれています。家族の存在によって、心の傷を癒やされる人物です。
スヨンさんと姉妹としてキャスティングが決まった途端、周りの人たちから「本当に姉妹みたいだね」と言われました。スヨンさんと私の2人とも、実際には姉がいるのですが、それぞれの実際の姉妹よりも、スヨンさんと私の方が似ている点が多いと感じています。
【チャン・ユジョン監督】現場でスヨンさんとユンヒさんが一緒に演技すると、特にディレクションを出す必要がないほどでした。お互いにマッコリを巡って小競り合いするシーンがあるのですが、本当に現実の姉妹を見ているようでしたね。ですから、お二方と撮影する際は、「今日はもうレディ、アクションだけで大丈夫だな」と思うほどでした。
――出演者の皆さんにお伺いします。この『禁酒をお願い』を、周りの方で特におすすめしたい人はいますか?
【チェ・スヨン】ドラマの撮影をしながら、自分は何に中毒になっているのだろうかと考えるようになりました。アルコールに限らず、自分でも気づいていない“内なる依存”があるのではないかと。この作品を通して、自分自身と向き合えず、傷にばんそうこうを貼るように何かにすがってしまう…そんなことを考えさせられました。私の場合、仕事を過剰にしていたり、休むと不安になったりするところが、自分なりの“中毒”なのかもしれません。だからこそ、多くの方々、そして芸能界の仲間たちにも『禁酒をお願い』を観て、癒やされてほしいです。
【コンミョン】僕自身、ウィジュンのようにお酒があまり好きではないので、周りにもお酒を飲む人はあまりいません。『エクストリーム・ジョブ』の先輩方もお酒を飲まれませんが、それでも『禁酒をお願い』はぜひ観ていただきたいです。
【キム・ソンリョン】監督がおっしゃったように、依存してしまうのが問題であって、適度に楽しむのはいいことだと思います。でも、なぜかその“中間”がないんですよね。私の友人である俳優のパン・ウニは、普段からお酒を適度に楽しむ人です。最近は新たにマラソンを始めたので、記録のためというより無事に目標を達成するために、ちょっとだけ禁酒をおすすめしたいですね。
【キム・サンホ】僕の周りの人たちには、この作品は見てほしくないですね。これを見て「もう一緒にお酒飲むのやめよう」とか言われたら面倒くさいですから。僕たちはずっと一緒にお酒を飲みながら、支え合って生きていきましょう。
【チョ・ユニ】私もお酒はあまり飲まない方なので、周りの人たちもみんなお酒を飲まないですね。でも正直に言うと、身近な人の中で一番お酒を飲むのはキム・サンホ先輩です。撮影のたびに近況を伺うと、毎回お酒の話が出てきます。なので先輩にはぜひこの作品を観ていただきたいです。
――チェ・スヨンさん、前作『ラブ・パッセンジャー 〜私たちの恋愛事情〜』ではユニークな母娘ケミストリーを見せてくれましたが、『禁酒をお願い』での母娘ケミストリーもかなりおもしろいと予想されます。キム・ソンリョンさんとの母娘のケミストリーは実際どうでしたか?
【チェ・スヨン】前作では、私が母親に呆れる娘の役だったので、内心ずっとモヤモヤしていました。でも今回は立場が逆になって、とても楽しかったです。私は好きなようにふざけることができて、イライラするのは母親のほうなので。先輩(キム・ソンリョン)は毎回私に怒らなければならなかったので、大変だったと思います。私を叱りつけるのに体力も使われたはずです。でも、母娘の小競り合いや、まるでトムとジェリーのような掛け合いを作っていくシーンが多くて、リハーサルの段階からとても楽しく撮影できました。
――コンミョンさん、ご自身が出演されたドラマを1人で観ながら涙を流したこともあるとお聞きしました。『禁酒をお願い』をモニタリングしていて、胸が熱くなった瞬間はありましたか?
【コンミョン】ドラマの後半に進むにつれて、ウィジュンというキャラクターの内面にある痛みが少しずつ明かされていくのですが、そのエピソードが本当に切ないんです。自分のシーンだけでなく、その状況の中にいるほかの登場人物のシーンをモニタリングしている時にも、胸にジーンとくることがありました。そんな物語の展開も、ぜひ楽しみにしていただけたらと思います。
――キム・ソンリョンさん、今回演じられた“キム・グァンオク”というキャラクターは、私たちがよく思い浮かべる温かくて優しい母親像とは少し違う印象です。ご自身が考えるキム・グァンオクならではの個性とは何でしょうか?
【キム・ソンリョン】物語の後半で、グァンオクがなぜそうするしかなかったのかが少し明かされます。子どもの痛みをより深く知ることで、母親として崩れ落ちる場面があるのですが、その姿こそがグァンオクの本心だったのではないかと思います。これまで夫を小言で責めたり、娘たちを叱ったりしてきましたが、その根底にはやはり子どもの幸せを願う母親の気持ちがあったんだと感じました。
――キム・サンホさん、演じられた「ハン・ジョンス」という人物は、頼りないところもあるが、家族への愛情が格別な父親ですが、演じていて、ハン・ジョンスに最も強く感じた感情は何ですか?
【キム・サンホ】信頼です。この家族が良いアンサンブルに見えるのは、お互いに計り知れないほどの信頼があるからです。「信じているよ」とセリフで表現されるような作品ではなく、ご覧になると、家族がセリフを交わす場面で、温かい眼差しや痛ましい眼差しで見つめ合う沈黙があることに気づくでしょう。そうした沈黙が巧みに構成されているからこそ、見る人は「この家は幸せなんだな」と感じられるのです。脚本を読んだ時、私はセリフがない場面での「間(ま)」や呼吸の重要性を感じました。
――チョ・ユンヒさん、ポチョン一の美人と呼ばれた“ハン・ヒョンジュ”が、今では双子を1人で育てる母 になりました。このキャラクターは女優ご自身の現実とも重なる部分が多いように感じられますが、そうした点が役作りに役立ちましたか?そして、ヒョンジュにとって育児が終わった後の一杯はまさに生命水のような存在ですが、実際のチョ・ユニさんにとっての “生命水” は何ですか?
【チョ・ユンヒ】特に何かを設定したというより、そのまま“私”でした。俳優は新しいキャラクターを演じるとき、その人が生きてきた人生を実際に体験することはできないので、間接的に何かを見たりして役に入ることが多いのですが、今回は驚くほど自分と似ている部分が多くて、本当に共感できるキャラクターだったので、演じるのがとても楽しかったです。私はお酒を飲まないので、育児の一段落後に毎日するのはスマホを見ることですね。バラエティ番組やYouTubeを観る時間がとても楽しくて、私にとってはそれが“生命水”のような存在です。