パワー・マックスド・レーシングの将来有望株マイキー・ドーブル(ヴォクスホール・アストラBTCC)が悲願のシリーズ初優勝を手にしている この5月開幕から早くも3戦目を迎えた2025年のBTCCイギリス・ツーリングカー選手権は、5月24日〜25日にスネッタートンで3ヒートが争われ、フォード艦隊アライアンス・レーシングのダン・カミッシュ(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)が、開幕ドニントンに続くポールポジションから決勝レース1で“ライト・トゥ・フラッグ”を達成。続くレース2では、僚友ダニエル・ロウボトム(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)も今季初勝利を飾ることに。
一方の最終レース3では、インディペンデント登録チームの雄、パワー・マックスド・レーシングの将来有望株マイキー・ドーブル(ヴォクスホール・アストラBTCC)が悲願のシリーズ初優勝を手にしている。
ウエット路面で始まった週末の走り出しこそ、新王者ジェイク・ヒル(レーザー・ツール・レーシング・ウィズ・MBモータースポーツ/BMW 330i Mスポーツ)が最速となり、前戦で3戦全勝をさらったFR駆動NGTC規定モデルの持続的復調を印象づけたが、その後のFP2ではトム・イングラム(チーム・ヴェルツ/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)がトップタイムを叩き出すなど、一転してスネッタートンではFF勢が優位の状況に。
そのまま予選でもラップレコードを更新したフォードのカミッシュが、前回のレースで点火装置のトラブルで表彰台を逃した悔しさを晴らすかのようなアタックを見せ名誉回復。チャンピオンシップ争いに弾みをつける今季2度目のポール獲得となった。
「これは僕にとってかけがえのないもので、素晴らしい結果だ」と喜びを語ったカミッシュ。「前戦の敗戦を乗り越えるのに、これ以上の方法はないね。素晴らしいマシン、素晴らしいチーム、そして周囲のメンバーに恵まれている。敗北を乗り越え、今日こそ力強く走り切ることができ誇りに思うよ」
しかし対照的に、予選Q1を順調に突破していた僚友アシュリー・サットン(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)は、Q2の途中でトラブルに見舞われヘアピン出口で一時停止。その場は再始動できたものの、残念ながらQ3でふたたびマシンが停止し、後に「原因はオルタネーターのトラブルだった」ことを明かした。
「Q2でマシンが停止した際、何とか部品をリサイクルしてマシンをふたたび走らせることができた。お陰で何とか“Quick Six”には進出することができた」と続けたサットン。
「最終セッション前の短い休憩で問題を発見できたけど、マシンを守りきる必要があったから、ウォームアップラップはほとんどできず。ようやく自分のラップに入り全力を尽くしたが、残念ながらピットに戻るにはパワーが足りずにストップしてしまったんだ」
「ダン(・カミッシュ)やトム(・イングラム)とポールポジション争いに加わるだけの速さはあったはずなので、とても悔しい。それでも6番手という結果は決して悪くないし、明日に向け良いスタートを切れると思っている」
その言葉どおり、前人未到のシリーズ“5冠”に挑むサットンはレース1で素晴らしいスタートを切り、わずか数コーナーで6番手から3番手へとジャンプアップ。すぐさま2番手イングラムに猛烈なプレッシャーを掛けていく。
最前列から出たポールシッターのカミッシュも、蹴り出しこそわずかに鈍ったものの、ヒョンデを前方に出すことなくホールショットを決め、背後ではディフェンディングチャンピオンのヒルや、ゴードン・シェドン(TOYOTA GAZOO Racing UK/トヨタ・カローラGRスポーツ)らが接触、クラッシュのアクシデントに巻き込まれるなか、カミッシュが今季初優勝。2位イングラム、3位サットンの表彰台となった。
続くレース2は上位グリッドでタイヤコンパウンドの戦略が分かれ、ここが勝負と見込んだ4番手発進のロウボトムがソフトタイヤを選択。いずれもハードタイヤで並んだ前方のレース1ポディウム獲得メンバーを一気に追い落とすと、最後まで粘ったイングラムはターン1への進入時に姿勢を乱しバリアに激突。ピットレーンまでスロー走行で戻ってきたが、そのままリタイアとなってしまった。
これで首位を奪ったロウボトムは、同じ戦略を採るアダム・モーガンやトム・チルトン(チーム・ヴェルツ/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)、ダン・ロイドにクリス・スマイリー(リスタート・レーシング/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)らのヒョンデ陣営を退け、こちらも今季初のトップチェッカーをくぐった。
「大変な作業だった。ダン(・ロイド)は本当にタフな戦いを見せてくれたし、最終ラップではアダム(・モーガン)が力強く追い上げて来た。マシンは週末を通して素晴らしい状態だったし、僕らはレースに勝ちたいと思っている。最終的にはチャンピオンシップに挑戦することが目標だ」とロウボトム。
このヒートでジョシュ・クック(ワン・モータースポーツ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)と熾烈な6位争いを繰り広げ、見事に競り勝ったドーブルが最終ヒートのリバースポールを獲得すると、これが重要な運命の分かれ目に。
完璧なホイールコントロールで首位発進を決めたドーブルに対し、オープニングラップで猛烈な走りを見せ、10番手から4番手まで順位を上げたサットンが勢いそのままにクックとロイドを抜き去り、わずか数周でアストラのテールに迫る。
ヴォクスホールへのプレッシャーを強めるサットンは、コンマ数秒差まで迫ったものの、ヘアピンでの小さなミスが決定打となり、インディペンデント・チームにとってシリーズ1001日ぶりの勝利と、土曜予選で4番手ながら、レース1をハードタイヤで耐え忍んだ戦略も駆使したドーブルに、待望のBTCC初勝利をもたらした。
「本当に言葉が出ないよ」と、所属するPMRには2019年のジェイソン・プラト以来となる勝利を贈ったドーブル。「僕はあまり感情を表に出すタイプではないが、この道程をともに歩んできたすべての人が、この勝利がどれほど大きな意味を持つかを証明してくれたと思う。今、BTCCのレースウイナーと呼ばれるなんて、本当に信じられないことさ」
「予選4番手で、前にいる3台の中でトップを走るにはペースが足りないだろうと、なんとなく分かっていた。だから少し戦略を変えて、レース1ではハードタイヤで走ろうと思った。すべてはロングゲームを狙うためにね」
「そのレース1で9位を維持できたのは素晴らしい結果で、続くレース2ではソフトを履いて6位まで順位を上げたことで、レース3に向けて完璧な準備ができた。とくにポールポジションを獲得でき、本当に助かったよ」
「ハード勢がソフト勢を抑えてくれ、ギャップを築くのに集中した。最後の数周は少し緊張したが、間違いなくこの世代で最高のドライバーに追い掛けられているから、当然のこと。ありがたいことに、目の前の仕事に集中し、目標を達成し、無事にゴールすることができた」
「実感が湧くまでにはもう少し時間が掛かるだろうが、彼らPMRの皆と、この道のりを支え続けてくれた家族、友人、そしてパートナー各位に感謝したい。彼らは本当にこの勝利に値するよ」
これでスタンディング上では首位サットンがさらにリードを広げる結果となった2025年のBTCCシーズン。続く第4戦は明けた6月7日〜8日にスラクストンで争われる。
[オートスポーツweb 2025年05月28日]