衆院農林水産委員会で答弁する小泉進次郎農林水産相=28日午前、国会内 コメ高騰対策を巡り、28日の衆院農林水産委員会は小泉進次郎農水相と立憲民主党の野田佳彦代表ら野党党首による異例の直接対決となった。参院選の足音が近づく中、小泉氏は物価高対策も意識し「危機対応」をアピール。各党首は価格引き下げによる生産者への影響などを追及した。コメ問題は引き続き、与野党の主要な争点になるのは必至だ。
「緊急事態に近い。昨年の2倍になった米価を引き下げなければならない」。就任後初となる本格的な国会論戦で小泉氏が訴えたのは、スピード感をもったコメ高騰対策の必要性だ。週明けに5キロ2000円の備蓄米が「店頭に並ぶ」と言明しただけではなく、「その後1800円の2021年米も出てくる」と踏み込み、事実上の価格統制を推進する考えを鮮明にした。
背景には、野党が消費税減税で足並みをそろえ、物価高対応で政権批判を強めることへの危機感もある。農水相就任前、小泉氏は政権幹部に「選挙を考えれば何もしないわけにはいかない」と力説。物価高の代名詞となったコメへの対策は「自民政権と自らの今後を懸けたテーマ」(自民関係者)というわけだ。
これに対し、立民、日本維新の会、国民民主3党はコメ対策が国民的な関心事となっていることから、党首自ら質問に立った。小泉氏はメディアを通じて価格抑制に向けた取り組みを精力的に発信しており、参院選や東京都議選をにらみ、与党側のアピールをけん制する狙いもあったとみられる。
3党首は消費者の視線を意識してか、「突破口を開く意味で理解できる」(野田氏)などと正面からの批判は抑えめだった。一方、小泉氏が主導する急ごしらえの対策の粗さは随所で目に付いた。野田氏は「バナナのたたき売りではない。生産者にとっての適正価格は何なのか」と指摘し、農業従事者の視点からくぎを刺した。小泉氏は「資材などの高騰を踏まえれば2000円が適正ではない。備蓄米を入れることで高過ぎるマーケットを下げていく」と説明した。
維新の前原誠司共同代表は、備蓄米販売について「転売されない担保はあるか」と質問。備蓄米が全国に行き渡るかとも尋ねたが、小泉氏は具体的な転売対策は言及せず、「北海道から沖縄まで行き渡るということはない」と地域差が生じることを認めた。
国民民主の玉木雄一郎代表は備蓄米の減少を問題視。「元の水準にいつ戻るのか」との問いに、小泉氏は「安定した備蓄米を構築するのは重要だ」と述べ、かみ合わなかった。増産に向け「所得補償を用意することが解決策になる」とする玉木氏の主張には、「全てをテーブルに載せなければいけない」と述べるにとどめた。
「コメ(価格)を下げる話ばっかりでは、農家を離れる率が高くなる。その危機感が足りないと思う」。質疑後、野田氏は記者団にこう指摘した。

衆院農林水産委員会で質問する国民民主党の玉木雄一郎代表=28日午前、国会内

衆院農林水産委員会で質問する日本維新の会の前原誠司共同代表=28日午前、国会内

衆院農林水産委員会で質問する立憲民主党の野田佳彦代表=28日午前、国会内