日曜のメインレースではアラム・コデア(Blau Motorsport/ミツビシ・エクリプスクロス)が自身約5年ぶりの復活勝利を飾った 新しいSUV時代のSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”第2戦が、5月23〜25日にパラナ州西部カスカバルに位置するアウトドローモ・インテルナシオナル・ジルマー・ヴューで開催され、開幕インテルラゴスに続き『ミツビシ・エクリプスクロス』が席巻。2025年シーズン初の土曜スプリントをジャンルカ・ペテコフ(カーレーシングKTF/ミツビシ・エクリプスクロス)が制し、シリーズに復帰した“スリーダイヤモンド”の記念すべき通算50戦目を祝うと、日曜メインレースではアラム・コデア(ブラウ・モータースポーツ/ミツビシ・エクリプスクロス)が自身約5年ぶりの復活勝利を飾っている。
万全の開発&製作期間を経て、新型SUVストックカーの『シボレー・トラッカー』に『トヨタ・カローラクロス』、そして『ミツビシ・エクリプスクロス』の3車種が登場する2025年SCBは、車両重量1100kgの新開発鋼管パイプフレーム“アウダースSNG01”シャシーに、500PS/580Nmを発生する直列4気筒2.1リッター直噴ターボを組み合わせることで、シリーズ45年の歴史を担って来たセダン型ストックカーを優に越えるスピードを披露。カーボンファイバー可動式ウイングのDRSなど、競技に新たなダイナミクスをもたらすと期待される要素を使わなくとも、先のインテルラゴスではすでに前年度から約2秒のタイムアップを記録していた。
そんななか迎えたカスカバルの週末は、木曜に車両開発初期段階の習熟を狙った2回の追加セッションが用意されたが、各ドライバーは新世代SUVで可能な限りの走行距離を稼ぐという目標に加え、本格的な降雨によるウエット路面という新たな課題にも直面した。
「ここでは25年ぶりのドライブだ。ストックカーで走るのも初めて、新しいコース設定で、レインタイヤを履いて走るのも初めて。正直言って、コースのことはほとんど覚えていないし、マシンにかなりの自信がないと走れないレイアウトだ」と語ったのは、今季よりトヨタ・ガズー・レーシング・ブラジル陣営のトップチームに加入した、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(フル・タイム・ガズー・レーシング・チーム/トヨタ・カローラクロス)。
シーズンを通してもっとも平均速度が高く、下り坂から上り坂へと続く長い半径を持つ高速セクション、クルヴァ・ド・ヴァシオはその独特の特徴から「スパ・フランコルシャンにある世界的に有名なオー・ルージュに匹敵する」との評価も得る。
このウエット条件でも無類の強さを披露したミツビシ陣営に対し、対抗すべく気を吐いたのがシリーズ3冠を誇る現役王者のガブリエル・カサグランデ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・トラッカー)で、明けた金曜のフリープラクティスでは最速タイムを刻んでみせた。
「とても良い1日だった。(開幕の)インテルラゴスではかなり苦労したが、昨日は雨の中でもマシンの挙動が良好で、今日のドライ路面ではさらに良くなった」とカサグランデ。
「チームの進化と、以前のモデルとはまったく異なる自分のドライビングスタイルの適応など、ベストタイムを含め非常に満足している」
しかし、明けた土曜の予選は路面へのラバーインが進むと同時に予想外に気温が低下する難しい条件となるなか、当のカサグランデがQ2でコースアウト。この事故により赤旗の起因となってしまう。
続くQ3でもセザール・ラモス(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラクロス)とガエターノ・ディ・マウロ(ユーロファーマRC/ミツビシ・エクリプスクロス)のマシンがコース上でストップし、セッションは赤旗中断を経るなか、シリーズ最年少チャンピオン獲得記録を保持するフェリペ・フラーガ(ユーロファーマRC/ミツビシ・エクリプスクロス)が2戦連続、キャリア通算15回目のポールポジションを射止めた。
「今季2度目のポールポジション獲得、いつもながら最高だ! マシンはQ1以降、今回も完璧で素晴らしい状態で、フリープラクティスでもトラブルなく距離を稼ぎ、マシンについて学ぶことができた。ここは非常に難しいサーキットだし、最速の栄冠を勝ち獲れてこの瞬間を楽しめたことは本当にうれしいよ。たとえ数時間でもお祝いし、レースでは多くのポイントを獲得できるよう頑張りたいね」
そのまま土曜午後に実施されたスプリントは、予選トップ12のリバースグリッドが採用され、ラファエル鈴木(TMGレーシング/シボレー・トラッカー)が最前列からスタートを切る。しかしここで主役に躍り出たのが4番手発進だったペテコフで、フェリペ・マッサ(TMGレーシング/シボレー・トラッカー)や、ターボトラブルで後退したリカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ/ミツビシ・エクリプスクロス)、そしてラファエル鈴木らも次々とオーバーテイクし首位を奪取していく。
義務ピットでは、今季より名門ユーロファーマRCを離れたシリーズ3連覇男のダニエル・セラ(ブラウ・モータースポーツ/ミツビシ・エクリプスクロス)や、ルーベンス・バリチェロ(フル・タイム・カバレイロ/トヨタ・カローラクロス)、そしてカサグランデの3台がピットでの“ファストレーン3ワイド”を演じるひと幕もありつつ、このピットシークエンスでさらに優位を固めたペテコフが、2位ディ・マウロ、3位ギリェルメ・サラス(カバレイロ・バルダ/シボレー・トラッカー)を従え、ミツビシのワン・ツー・フィニッシュを牽引した。
「とてもうれしいね。インテルラゴスの難しい開幕戦の後だったし、特別な味わいのある勝利だ」と喜びを語ったペテコフ。
「ここに来て問題を解決し、今日のレースは完璧だった。ガエターノ(・ディ・マウロ)が後ろにいるのを見て全力を尽くしたし、レースで勝てる位置に立てるのはそうそうあることではないからね」
そして暑い午後となった日曜のメインレースは、予選順位どおりフラーガとセラのチャンピオン・コンビの並ぶフロントロウから幕を開けると、ここでも2列目4番手発進だったコデアがピット戦略で上位勢を一網打尽にし首位に浮上。そのまま2位フラーガを0.405秒差で抑え切り、自身約5年ぶりの表彰台頂点に返り咲くキャリア通算11勝目を手にした。
「言葉では言い表せないよ! 肉体的な安堵感というより、精神的、精神的、そして精神的な安堵感だ」と、フラーガとセラのビッグネームを従えてミツビシのポディウム独占を完成させたコデア。
「トップに立ったとき、頭の中で映像が流れた……これまで戦い、苦労してきたことすべてが頭をよぎったんだ。そして、ついにその日が来た! チャンピオンシップは長い道のりだけど、3度のチャンピオンであるセラやフラーガらを相手に、ふたたび勝利を収められたことは本当に満足感がある。そして、もっと勝ちたいね!」
そんなSUV時代の新たな勝者に対し、開幕戦ウイナーとしてスタンディング首位を堅持したフラーガも最大級の賛辞を贈った。
「とても良いレースで、僕が終始最速だったが、最速が必ずしも勝つとは限らない。僕らは外側のタイヤ2本を交換したが、ブラウのドライバーたちは内側のタイヤを交換した。彼らはリスクの高い戦略を採り、最終的にはそれが功を奏したんだ」
「アラム、おめでとう。そしてダニエルと競えるのはいつも素晴らしい。これからはチャンピオンシップを築き上げていく時間だね」
続くSCBの第3戦は、リオグランデ・ド・スル州のベロパーク・アウトドローモで6月6〜8日に開催される。
[オートスポーツweb 2025年05月29日]