インド洋南部・フランス領ケルゲレン諸島の繁殖地で撮影したキングペンギン(東京大・大気海洋研究所の上坂怜生特任研究員提供) インド洋南部、フランス領ケルゲレン諸島付近に生息するキング(オウサマ)ペンギンは、海に深く潜った後、上昇中に餌のハダカイワシを9割近い成功率で捕らえ、食べていることが分かった。水深100〜150メートルの暗い所だが、明るい海面を背景にすれば魚の影を見分けやすいほか、暗い所から接近すると魚に気付かれにくいと考えられるという。
東京大・大気海洋研究所と仏シゼ生物学研究センターの研究チームが昨年、キングペンギンに照明付きの小型ビデオカメラを装着し、魚を捕る様子を撮影した成果として、29日までに米生態学誌エコロジーに発表した。
同研究所の上坂怜生特任研究員によると、太陽光が届かない水深100メートル以上まで日常的に潜るペンギンは、大型のコウテイペンギンとキングペンギンだけ。発光ダイオード(LED)による赤色照明はペンギンや魚には見えず、捕食行動に影響を与えることなく可視光のビデオカメラで撮影することに世界で初めて成功した。
背中にカメラを装着したペンギンは、5分程度潜水してから海面に浮上して呼吸し、休むことを繰り返した。潜水時は水深100〜150メートルまで一気に下降してから、深い所で上昇と下降を小刻みに行っており、魚の捕食行動は8割が上昇中。約1時間半の撮影時間中に136回捕食を試みて118回成功し、成功率は87%だった。
ペンギンは魚に1〜3メートルまで近づいて狙いを定め、0.5〜1.5秒後に首を伸ばすようにして捕食した。魚は気付かないか、逃げようとしても遅いことが多かった。ケルゲレン諸島は南極大陸に近く、餌の魚を巡ってはミナミゾウアザラシやナンキョクオットセイがライバルとなるため、独自の捕食方法を編み出した可能性があるという。