
日本社会の現状に、「遅れてる! 海外ではありえない!」なんて目くじらを立てている人もいますが……。いえいえ、他の国の皆さんも有名人や王室のゴシップや下ネタは大好きで、若者はおバカなことをしでかすし、高齢者は変なこだわりで周囲を振り回すし、しょーもない男女のケンカも日常茶飯事なんですってば! そんな世界の下世話なニュースを、Xで圧倒的な人気を誇る「May_Roma」(めいろま)こと谷本真由美さんに紹介していただきます。欧米でお笑いの質が変わりつつある理由とは……。
「知的なお笑い」の衰退
「イギリスのコメディー番組を挙げてください」と聞かれたとき、多くの日本人が『Mr.ビーン』と答えるのではないでしょうか?
同番組は、そのバカバカしさとシンプルな面白さから世界的なヒットにつながったわけですが、本国イギリスでは、主演のローワン・アトキンソンがオックスフォード大学卒の超エリートでありながらバカげた演技をする─、「エリートなのによくやるわ!ww」というギャップがあったことも人気の大きな要因でした。
伝説的コメディーグループ「モンティ・パイソン」も、ケンブリッジ大学やオックスフォード大学出身者がいるほど高学歴です。おバカなことをしていても知性や教養がある、あるいはそうしたバックグラウンド込みで大衆が面白がる文化があるからこそ、イギリス独自の笑いがあったともいえます。
ところが、2000年以降はこうした伝統が希薄化していきます。高学歴の人や育ちのいい振る舞いをする人がお笑いをするケースは減り、大衆からも支持されなくなっていく。その理由は、いわゆるブルーカラーの働き手が人手不足に陥り、賃金が上がったことで「お金を持つほうが偉い」という価値観が主流になってしまったからだといわれています。貨幣経済の発展に伴い、資金力で武士以上の存在感を手にした江戸時代の商人よろしく、お金が階級や伝統以上にモノをいう価値観に変わってしまったのです。
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その結果、家柄がよかろうが高学歴であろうが「どうせお金を持ってないくせに」とバカにしたり、学者に対して敬意を払う人も減ることに。こうした価値観の変化に連動するように、イギリスではコメディーの質も変化し、歴史的な知識や言葉遊びを使った知的なお笑いは少なくなっていきます。
「モンティ・パイソン」のような笑いは若い世代から敬遠され、代わりに身体を張ったり、他人をイジったりするわかりやすく下品な笑い、いわゆる迷惑系YouTubeのような企画が人気を集めるように変わっていきます。今はどの国でも反知性主義的な笑いが支持を得たりもしています。
結局、お金こそすべてという資本主義的な価値観を鵜呑みにした反動であって、私たち自身の責任なのかもしれないけれど……。今後はどうなることやら。
構成/我妻弘崇
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