仲代達矢が第2の故郷・能登に再び「とても幸せなこと」7カ月延期した無名塾の舞台30日初日

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2025年05月31日 04:00  日刊スポーツ

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舞台「肝っ玉おっ母と子供たち」で主人公アンナを演じる仲代達矢(撮影・小林千穂)

仲代達矢(92)が第2の故郷である能登に再び帰って来た。30日、主宰する無名塾の舞台「肝っ玉おっ母と子供たち」が石川県七尾市・能登演劇堂で幕を開けた。24年元日に起きた能登半島地震で劇場も大きな被害を受けたため、約7カ月延期し、復興公演として上演に至った。6月22日まで20公演。


  ◇  ◇  ◇


出ずっぱりの2時間半超。仲代は、上演が終わると深々と一礼した。拍手と手拍子、スタンディングオベーションでカーテンコールが何度も繰り返された。笑みとともに「ありがとうございました」とつぶやき、観客にも拍手をしてみせた。仲代が能登演劇堂の舞台に立つのは、22年9〜10月の「いのちぼうにふろう物語」以来、約2年7カ月ぶり。95年の開場以来、毎年のように公演を行ってきただけに待望だった。


公演前に取材に応じた仲代は「久しぶりに能登、第2の故郷の能登に帰って来て、皆さんに見ていただくということはとても幸せなことです」と語った。


当初「肝っ玉おっ母と子供たち」は24年10〜11月に公演予定だったが、同年元日に起きた地震で、劇場の特徴でもあるステージ後方の自然の風景を取り入れる大扉、客席の天井、照明などが大きな被害を受けた。40年以上前の家族旅行が縁で無名塾の合宿を行うようになり、能登演劇堂を立ち上げた仲代にとっても大きな衝撃だった。


発災後すぐに劇場にファクスでメッセージを寄せ、その後も毎日のように電話で状況を聞いた。劇場が使用できるようになったのは今年2月22日。3日後に、仲代が今回の公演に向けての会見を行った。能登を思う気持ちの現れだった。


待つ時間は長かったが、仲代は「予定は延びてしまいましたが、その分、稽古はたっぷりできました」と前向きにとらえ「今、新しい作品をやっている感覚です。今日の初日を迎えて感慨深いものがあります」と話した。


同作は劇作家で妻の故宮崎恭子さん(ペンネーム隆巴=りゅう・ともえ)さんの演出で88年に初演、17年に再演された。軍隊に付き従い商売するアンナの、たくましくもかなしい姿、登場人物それぞれの平和への願いを描いた反戦劇。冒頭、地震で被害を受けた大扉が使用される場面がある。アンナ一家の幌車が森の中から現れ舞台に入ってくる。仲代も「芝居小屋の中に入っていく不思議な感じがします」と言い、見る者も一気に引き込まれる。


能登演劇堂は30周年、無名塾は50周年を迎えた。仲代は「能登演劇堂は無名塾のポイントの1つなので、一生懸命頑張りたい」と力強く語った。【小林千穂】


仲代達矢と能登、主な能登演劇堂公演


▼83年 家族旅行で中島町(現在の七尾市)訪問


▼85年 中島町で無名塾の合宿を行う


▼92年 合宿の稽古で「ハロルドとモード」公開


▼95年 「ソルネス」で能登演劇堂こけら落とし


▼97年 「いのうちぼうにふろう物語」ロングラン


▼01年 「ウィンザーの陽気な女房たち」ロングラン


▼04年 七尾市名誉市民


▼09年 能登限定公演「マクベス」ロングランで3万3000人動員


▼13年 「ロミオとジュリエット」ロングラン


▼15年 「おれたちは天使じゃない」


▼17年 「肝っ玉おっ母と子供たち」ロングラン


▼21年 役者70周年記念公演「左の腕」


▼22年 いしかわ百万石文化祭の一環で「いのうちぼうに−」


▼23年 「等伯−反骨の画聖」を演出


▼24年 能登半島地震で公演延期


▼25年 「肝っ玉おっ母と子供たち」

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