LDH JAPANと幻冬舎がタッグを組み、毎月書籍を発売するプロジェクト「GL-16〜THE RAMPAGE BOOKS〜」。その第10弾として、ボーカル川村壱馬の2ndフォトエッセイ『PROMISE』(幻冬舎刊)が4月4日に刊行された。
本作は、川村がかねてより憧れていたイギリスを舞台に撮影。エッセイパートは自ら400字詰め原稿用紙に想いを綴り、その総数は57枚にもなったという。「誤解されやすい性格だから、取りこぼしなく伝えたい」と語る彼に、印象的な撮影エピソードや、原稿を執筆する際のこだわりなど、本作で気になったポイントについて徹底的に答えてもらった。(斉藤碧)
参考:【撮り下ろし写真】THE RAMPAGE・川村壱馬 アンティーク調の雰囲気がよく似合う
◼︎『Fate』の聖地・グラストンベリーでの撮影を振り返って
――2ndフォトエッセイ『PROMISE』はイギリスで撮影されたそうですが、1st写真集 『Etoile』(2024年4月発売)のインタビュー時にも「もともと、イギリスとフランスを移動しながら撮影するのがいいんじゃないかっていう案もありまして」とおっしゃっていて。その時は結局フランスのみでロケを行っていたので、満を持して、という感じでしょうか。
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川村壱馬(以下、川村):そうですね。やっと行けました、憧れの聖地・グラストンベリー(修道院)に!
――壱馬さんがお好きだという、アニメ『Fate』の聖地ですね。
川村:はい。『Etoile』の時はイギリスまで足を伸ばせなくて残念な気持ちもあったんですが、今回イギリス1本でしっかり撮影できたことを思うと、逆にこのタイミングで実現できて良かったですね。グラストンベリーだけでなく、ロンドンにも行かせてもらえて。あの時断念したことも、ここに繋がる運命だったんだなと感じています。
――カメラマンの大野隼男さんは、どういう経緯でオファーすることになったんですか?
川村:撮影のロケーションを決めている時に、その雰囲気に似合う写真を撮っているカメラマンさんを3〜4人挙げていただいたんです。その中で、オシャレに撮ってらっしゃって、なおかつ自分のカラーも引き出していただけそうな方だなという理由で、大野さんにお願いしました。大野さんってものすごく多忙な方で、スケジュールがなかなか押さえられないそうで。そんなすごい方にお願いできたこともありがたかったですし、人柄もめっちゃ良い方で、楽しく撮影させていただきました。
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――『Etoile』の撮影時も実際のお城を借りて撮影されていましたが、今回も「我が城!」みたいなカットが多いですね。
川村:あはははは。「我が城!」みたいな顔をしてますよね。腕にカラスを乗せて。4泊6日で撮影したんですが、1日目からグラストンベリーに行ったので、実は初っ端がこのカットなんですよ。カラスのチャーリーに迎えてもらって(笑)。
――チャーリーって名前もついてるんですね。カラスを腕に乗せようと発案したのは、どなた?
川村:僕の提案です。カラスが好きなので、最初に「カラスと撮りたいです」って伝えてあったんです。そしたら、スタッフさん達が探してくださって、イギリスでいろんな鳥を管理している方がチャーリーを連れてきてくれました。グラストンベリーでの撮影に関しては、自分の中で「絶対こういう雰囲気で撮りたい」っていうイメージが出来上がっていたので、衣装のマントも現地の貸し衣装屋さんでお借りしました。マントを翻しながらグランベリーを歩いている時は、本当に王になった気分でした。
――そんな王者の風格に“THE RAMPAGEのボーカル・川村壱馬”を感じる一方で、個人的には、王子様の散歩を連想させるようなカットや表紙で、青い衣装を着ているところに興味を惹かれました。THE RAMPAGEといえば赤のイメージが強いですが、メンバー各々の個性にフィーチャーしているからこそのチョイスかなと。
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川村:僕自身はライブで青を身に着けることも多いんですけど、グループ像とは違う系統の色やスタイリングなので、少し新鮮に映るかもしれません。クラシカルな衣装とかはスタイリストの吉田ケイスケさんが用意してくださったんですが、僕の好みを踏まえて用意してくださったものです。逆に、ロンドンの路上で撮影したカットのように、黒のコートに赤のスカートを合わせた面白いスタイリングを提案してくださることもあって。「こういう合わせ方もあるんだ!」っていう発見がたくさんありました。
――スカートに合わせているシャツのタータンチェックはロンドンを象徴する柄でもあり、少しパンキッシュな印象がありますね。反骨精神溢れる壱馬さんが、ロンドンで着ることに意味を感じるなと。
川村:そうなんですよ。恐らくそういった背景も考えながら組んでくださっていて、どれも神スタイリングでした。公園で撮影したカットはベージュの柔らかい印象のスタイリングだったりもするし、いろんな僕を楽しんでもらえたら嬉しいです。
――公園で登場した白鳥も、どこかに依頼して来てもらったんですか?
川村:白鳥は、公園に行ったらいました(笑)。『Etoile』の撮影時はサプライズでネボ(犬)が登場したんですけど、白鳥はサプライズじゃなく、普通にそのへんにいて。しかも、あっちから近寄ってきたから、「これ、撮れるんじゃないですか!?」って、その場のノリで撮影したんです。足にタグがついてたので、公園で管理されてる子だと思うんですけど、白鳥ってこんなに人懐っこいんだ?って驚きましたね。それにつられて、自然と笑顔が出ちゃいました。
――後半には引き締まった肉体を披露しているカットもありますが、身体作りは事前にされたんですか?
川村:この撮影のためにっていう身体作りはしなかったです。というのも、昨年9月にTHE RAMPAGEのドーム公演(『THE RAMPAGE LIMITED LIVE 2024 *p(R)ojectR® at TOKYO DOME』)が終わった後、少し空けて10月末にイギリスに渡ったんですよ。ちょうどハロウィンの時期に。だから、一旦ドームに向けてバキバキに鍛えたことで、身体がかなり仕上がっていて。良いタイミングで、良いコンディションで撮影に臨めました。
◼︎自らの手で原稿用紙に想いを綴ったエッセイパート
――また、エッセイパートを壱馬さん自ら執筆されたというのも、今作の大きなポイントです。これは壱馬さんからのリクエストでしょうか。
川村:そうですね。「GL-16〜THE RAMPAGE BOOKS〜」というメンバー各々にフィーチャーした企画をやるにあたって、僕は2020年に幻冬舎さんとフォトエッセイ『SINCERE』を制作した経験もあったので、自然と「じゃあ、2ndフォトエッセイですかね」っていう話になったんです。だったら、自分でエッセイを書きたいなと思って、原稿用紙とマイ万年筆を用意して執筆に取り掛かりました。エッセイパートは、写真撮影よりも前に書き始めてました。
――それにしても原稿用紙57枚って、ものすごいボリューム!
川村:卒論みたいなボリュームですよね(笑)。
――「はじめに」から始まり、各テーマに沿った心境が綴られていますが、どのあたりから書き始めたんですか?
川村:確か、「おわりに」を最初に書き始めたんだよなぁ……。なんでだろう?
――論文も結論を先に書いて、その理由を書いていきますからね。
川村:ホンマや!(笑)なんでその順番で書き始めたのかわからないんですけど、結論から書きました。あとは普段から自分が思っていることをガッツリ惜しみなく書ければいいや!と思っていたので、その都度思いついた順に書いていって。最終的に「各テーマの順番、どうしましょうか?」って相談して、今の形に落ち着きました。
――てっきり、先に各テーマのタイトルを決めて、それに対して内容を書いていったのかと思っていましたが、違ったんですね?
川村:最初に全部決めたわけじゃなかったので、それこそ最後までタイトル未定のものもありました。完全に自分の中で決めてたのは、「約束と裏切り」「偏見」「十六人」「プロ意識」「零」「愛の行く末」ですね。「リアル」「コンプレックス」「歪み」は、この話題をどういうタイトルで括るのが一番いいのか、自分では決めかねていて。掲載する順番も含めて、編集さんと相談しながら決めました。
――明確なテーマを決めずに書き始めると、似たような内容を書いちゃったりしませんか?
川村:そうなんですよ。書いてる途中で、「これ、違う章でも似たようなこと書いちゃってるな」って気づく瞬間が何度もあって。
◼︎本文とあとがき、あえて使い分けた「僕」と「俺」
――ある意味、“ブレない男・川村壱馬”らしいエピソードではありますが……(笑)。
川村:自分でもそれは実感しました(笑)。言いたいことが一貫してブレないなって。でも、せっかく書籍にするからには、似たり寄ったりの話ばかりにならないように、少しずつエピソードや方向性を変えながら書き上げましたね。
――そして、ブレない壱馬さんだからこそ、あとがきの一人称が「僕」なのに、本文の一人称が「俺」なのがすごく気になりました。
川村:そこは意識的に変えました。本文も読者に問いかけている部分もありますが、どちらかというと自分に言い聞かせている言葉なので、より口語に近い表現にしたんです。読者へ伝えることをあまり意識せずに、自問自答しながら自分の考えをまとめていったんです。
でも「はじめに」と「おわりに」では、あくまでも“この本を読んでくれているあなたにお話しています”という丁寧な姿勢を見せたくて。あえて一人称を「僕」にしたり、読者の方に語り掛けるような表現で書きました。漫画でも小説でも、そういう構成ってよくあるじゃないですか? ストーリーは全然別物だけど、「はじめに」と「おわりに」は作者さんから丁寧に話しかけてもらってる感覚になりますよね。自分自身もいち読者としてその感覚を知っているので、それと同じ構成にしてみました。
――全て書き上げた後、少し時間を空けて読み返してみて、「やっぱり、この言い方はニュアンスを変えよう」とか「このエピソードは書かないほうがいいかも」と思うことはありましたか?
川村:一度書き上げてからはなかったですね。ただ、原稿用紙に手書きしてるから、誤字が結構あって(笑)。後半のほうまで書いてたのに、「うわっ、誤字っちゃった!」って、新しい紙に一から書き直すことが何度かありました。で、失敗した紙はクシャクシャに丸めて捨てるっていう。
――文豪みたい。
川村:あはははは。自分的には、訂正が一切ない完璧な状態で提出したかったので、最初はそういうふうにしてました。でも、あまりにも間違えるから「これ、斜線で訂正するとかでもいいんですか?」って編集さんに聞いたんですよ。そしたら「全然いいですよー!」って言われて、「いいんかい!」って(笑)。そこからはシャッシャッて斜線を入れて、横に正しい字を書き添えるっていう書き方に変えましたね。
◼︎一言一句、伝え漏らすことのないように
――例えば、「希う(こいねがう)」や「流言蜚語(りゅうげんひご)」などは日常生活であまり使わない言葉だと思うのですが、そういった表現はどこから?
川村:普段からラップのリリックを書いてるのが、影響したんじゃないですかね?ラップのリリックを書いてると、「こういうことを伝えたいけど、この言い回しなんやったっけ?」って思うことがあって、その表現を調べているうちに「こういう表現あるんや!」って知ったりするので。あとは、好きなアニメとかゲームからのインスピレーションもあります。文章を読むこともすごく好きで、日頃から言葉に対してアンテナを張っているので、そういったところから吸収した表現が出たんだと思います。
――文体は強気に言い切っている反面、括弧書きで余すところなく補足するところも、このエッセイの特徴ですね。
川村:僕、昔から誤解されやすい性格なんですよ。それこそ中学生の頃とか高校入りたての頃は、周りもヤンチャな人が多かったから、ちょっとした誤解で大事になったり、人と衝突することが多かったんです。大人になってからも、自分は何事も白黒つけたいタイプで、ハッキリ意見を言うから、誤解されることが多いですしね。だから、できるだけ誤解されないように、何か取りこぼしがないように……って、その都度言葉を尽くしてきて。それを続けてきた結果、括弧書きが増えました。
――細やかで丁寧な補足の奥に、「揚げ足をとらせないぞ!」という強い意志も感じたのは、私だけでしょうか……?
川村:おっしゃる通り! 揚げ足をとられてから、「いや、こういう意味だから」って訂正する労力がもったいないなって思うんですよね。だったら、最初から事細かに言っておくほうが自分に負担がないので、「ここまで言わないと、君にはわからないよな。ごめんな?最初から言っとくわ」って思いながら書いた部分もあります(笑)。
――本文にはTHE RAMPAGEのメンバーとのエピソードも出てきますが、メンバーの名前を明言していないのは、何か理由がありますか?
川村:書いている時は意識していなかったんですが、今振り返ると、自分の発言に注目してもらうためだったのかなって思います。誰々の話題が出てる!って盛り上がってもらうのも悪くはないんですけど、ここまでの書き物の中で、そのエッセンスがどこまで必要か?を考えた時に、名指しで細かく書く必要はないなって思ったんですよね。例えば「あ、このラジオのエピソードは海青と陣さんのことやな」とか、ファンの人がニヤリとするポイントが少し作れればいいのかなって。そうすれば、THE RAMPAGEのことをあまり知らない人が読んでくださった時でも、「メンバーの人がそう言ってくれたのね」ってふんわり理解できるだろうし。THE RAMPAGEの全員のメンバー名を把握していない人にとって、知らない名前が一切出てこないほうが親切かなって思いました。
◼︎アーティスト・川村壱馬とRAVERSの厚い信頼関係
――RAVERS(THE RAMPAGEのファン)以外の方のことも、かなり意識して制作されたんですね。
川村:ビッグマウスに聞こえるかもしれませんけど、僕、この本ってかなり可能性を秘めた本だと思うんですよ。自己啓発本のような存在として、ファン以外の方にもたくさん読んでいただいて、この価値観・考え方・生き方を世間に広めたいんです。僕が綴った考えが誰かの救いになるんじゃないかって、勝手ながらも思っていて。だからこそ、本当に伝えたいことに焦点を絞って、メンバーとのエピソードは最小限に抑えて書いていきました。
――……と言いつつも、序盤からクスッと笑える“虫嫌いエピソード”が盛り込まれていて(笑)。ここは読みやすさを意識して、あえてユーモアを入れたのかな?と。
川村:そうですね。小説を読んでると、「この比喩上手いなぁ……」って思うことがあるので、それを自分もちょっとやってみたくて。ジョークが苦手な自分なりにひねり出した喩えが、“虫”でした(笑)。……でも、上手く喩えられたんじゃないかな? どうでしょう?
――あまり壱馬さんを知らない方こそ、「こんな一面もあるんだ!可愛い!」ってなるでしょうし、もっと内面を知りたいと思うのではないでしょうか。
ありがとうございます。そう思って、最後まで読み進めてもらえたら嬉しいですね。
――でも読み進めていくと、「愛の行く末」に「俺はそう遠くない未来に結婚する。」という一文が待ち受けていて。ファンの方にとっては、読む覚悟のいる1冊でもありますね。よくお話されていたことではありますが、改めて結婚観を綴った理由はなんでしょうか。
川村:何度も言うように、僕は自分の生き方が他人の役に立てばいいなと、常々思っていて。自分が経験してきたことも、誰かの役に立つのであれば、堂々と発信していきたいんです。他の同業者が発信できないようなことも臆せず言えるのが、自分の強みだと思うし、自分が発信したことが誰かの勇気になると信じている――。僕のアーティストとしての活動理念がそこなので、僕に傾倒するあまり“ファンの方の人生が疎かになるような、破滅に行きかねないファンとアーティストの関係性”は、自分には不健全に見えるんですよね。
――『Etoile』のインタビューでも「芸能界で自分らしく生きることの難しさは、常に感じています」と話されていましたが、ご自分が発信することで既存の芸能界の価値観を変えていけたら、という想いもありますか?
川村:この章に限らず、他の話題にも言えることなんですが、同業の人に向けて発信してる部分も多いですね。例えばアイドルの方とかで、事務所が明確なルールとして「恋愛禁止」を掲げているなら、その方針を守るべきだと思うんですよ。ルールを守らない人がいるから、ファンは傷つくわけで。でもTHE RAMPAGEのように「恋愛禁止」のルールがないグループに関しては、アーティストとファンという一定の距離を保った、対等な関係を築いていけると思うんです。とはいえ、恋愛禁止じゃないからと言って不誠実な振る舞いをするのは、ファンの人に対しても関わった方にも失礼ですから。そういう不誠実な人達に対して「そんなんじゃ生き残っていけないぞ。本物になれないぞ」っていう警告を込めつつ、自分自身にも言い聞かせるつもりで書きました。
――本物=誠実な生き様とエンターテイナーとしてのスキルで勝負する人、というイメージでしょうか。
川村:そうですね。みなさんもご存知のように、今の芸能界にはさまざまな問題があると思うんです。でも、良くない慣習に流されないように麻痺しないように……。そのアーティストやアイドル、俳優を応援している人が苦しむことのない、そんな業界になればいいなと願っています。
――では最後に、本書に『PROMISE』と名付けた理由を教えてください。
川村:この本には、自分やファンのみなさんに対しての約束事と言いますか、自分が今まで意識してきたことや、これからも大事にしていきたいことを綴ったので、『PROMISE』と名付けました。ですから、読者の方に強制することではなくて。「自分はこうやって生きていきます」という決意表明として受け取ってもらえたらと思います。そして、僕のことをよく知らない人にも、たまたま『PROMISE』を手に取る機会があって読んでいけたら嬉しいですし、この作品が、いろんな方の人生を後押しするキッカケになればいいなと思っています。
――ちなみに、川村壱馬先生の57枚に渡る生原稿はいつか見られるのでしょうか?
川村:6月14日から始まる『GL-16 THE RAMPAGE museum』で、万年筆と共に原稿を展示します。生原稿を見られるのはちょっと恥ずかしいんですけど、「ここ、間違ってるやん」とか思いながら楽しんでください(笑)。
スタイリング/吉田ケイスケ ヘアメイク/oya
(文・取材=斉藤碧 写真=篠田理恵)
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