写真アイドルグループ・日向坂46を卒業してから1年、俳優として活躍の幅を広げる齊藤京子。現在放送中のドラマイズム『あやしいパートナー』(MBS火曜24時59分/TBS火曜25時28分)では司法修習生の宮下さくらを演じる。本作は韓国ドラマのリメイクという初体験の現場で「原作があるので今までの作品とは違う演技の難しさがあった」と語る彼女。
日向坂46の頃から人一倍の負けん気で多くの壁を乗り越えてきた。現在地からすれば絵空事のような夢や目標でも文字に書き記す。その習慣はアイドルから俳優へ肩書きが変わった今も続けている。
今年5月には、初主演映画『恋愛裁判』(2025年冬公開予定)が第78回カンヌ国際映画祭に出品されるなど、俳優としての注目度も高まる齊藤京子の現在地に迫った。
◆日向坂46卒業から1年「卒業後の環境も楽しめてる」
――日向坂46を卒業されて1年が過ぎました。
齊藤京子(以下、齊藤):そうですね。あまり変わりはないんですけど(笑)
――そうはいっても環境の変化のなかで何か感じることはなかったですか。
齊藤:これまではメンバーも一緒に活動していたのに対して、いまはひとりになったので甘えられないというか、あらためて頑張らないとなっていう。責任感は強くなったと思います。
――今まで大人数の楽屋からひとりになったり。
齊藤:メンバーがいないと寂しいなっていうのはありますけど、マネージャーさんとかメイクさん、スタイリストさんもいますし、また違った楽しさがあるので。どっちが良い悪いという感じでもなくて、卒業後の環境も楽しめてるっていう感じですね。
――4月5日・6日に開催された日向坂46の「6回目のひな誕祭」で、キャプテン・佐々木久美さんが卒業されて、齊藤さんもVTRで出演されていましたね。ステージでは、日向坂46の前身グループ・けやき坂46の1期生のOGメンバーたちが集結したことも話題になりました。
齊藤:配信で見ました。私も1期生として参加したかったんですけど、どうしてもお仕事の都合でスケジュールを調整できなくて。残念な気持ちもあったんですけど、VTR出演させていただいたことで、卒業する久美とみーぱん(佐々木美玲さん)が喜んでくれたからよかったかなって思います。
――二児の母になった井口真緒さんも5年ぶりにステージに登場して会場が湧いていました。
齊藤:ファンの方もまさか井口が出てくるなんて想像つかなかったと思いますよ(笑)。セレモニーもすごく感動しましたし、みんなにも会いたかったな。後日、あらためて久美には「卒業おめでとう! 行けなくてごめんね」とメッセージを伝えました。
◆「私も天真爛漫な性格になりました(笑)」
――そして、現在出演中ドラマ「あやしいパートナー」は韓国ドラマのリメイクということで、お芝居をする際に大変さは感じるものですか?
齊藤:キャラクターやお芝居で迷ったときは必ずお手本となる原作があるので、そういう意味では、リメイクじゃない作品よりはやりやすかったと思います。ただ、オリジナルに負けないようにキャラクターの個性を出さないといけないので、そういった点は難しくて何度も原作を見てから撮影に挑みました。
――安川有果監督からは「ミュージカル風に」という演出もあったそうですが、それはどういう理由から?
齊藤:原作の主人公のボンヒは破天荒で明るい性格なんですが、私の地声が低いので役のテンションに追いつくのが大変でした。だったら、基本ベースをミュージカルくらい大げさにしないとボンヒまで届かないっていうことで、そういうご指導をいただきました。
――齊藤さんが主演を務めたドラマ「いきなり婚」「泥濘の食卓」に続いて、今作も彼氏に浮気をされたり、ダメな男に振り回されたりする場面があって。直近の作品だと不幸なオーラを纏った女性の役が多い気がするんですが。
齊藤:たしかに(笑)。それこそお芝居は普段の自分とは違うキャラクターになれることが楽しいから、仮に浮気される役だったり、暗い役だったりしても、そのキャラクターでお芝居することが楽しいです。今回演じた役は明るい性格だから、私自身にもそういう一面が足されたんじゃないかなって思います。
――それを実感するようなことがありました?
齊藤:室内での撮影中に衣装として履いていたスリッパがとても滑りやすいものだったので、スケートのように滑らせて移動してふざけるぐらい、私も天真爛漫な性格になっていて(笑)。それぐらい役に入り込んで、オフのときも影響を受けてました。
◆喋りかけられるとすごい喋っちゃうタイプ
――共演者の方との関係性について、現場に入ったときに意識することはあるんですか?
齊藤:とくに意識することはないですね。今作に関しては、ドラマのなかでは渡辺いっけいさんと私はバチバチに対立する関係性なんですが、現場ではすごく優しくしてくださっています。
――もともと自分から話し掛けるような性格でした?
齊藤:自分からはなかなかいけないんですけど、喋りかけられるとすごい喋っちゃうタイプです。八木さんは同じ歳で、好きなものが似ていたことがきっかけで話が盛り上がりました。
――ドラマのタイトル「あやしいパートナー」にかけて、齊藤さんが結婚相手に求める三大条件を教えてください。
齊藤:絶対に浮気をしない一途な人。これは第一条件で絶対に譲れませんし、これをクリアしないと付き合えない。あとはジェントルマンで誠実。最後は愛情深い人ですね。
――見た目は気にならないんですか。
齊藤:そうですね、好きになった人がタイプみたいな感じです。
――愛するよりも愛されたい?
齊藤:愛されたいし、追いかけられたいですね。なので、浮気したら一発アウトです!
――今回の役では、浮気した彼氏にたいして「(「メリーさんのひつじ」の替え歌で)お〜まえのことを〜、ころす〜、ころす〜」っていう恨み節をぼやくシーンも。
齊藤:浮気をされてもスカッとするというか、浮気されて惨めっていうよりは、そういう過激な鼻歌を口ずさむ女の子だと演じていた気持ちが楽ですね。
――実際に起きたらどうなっちゃいますかね。
齊藤:ん〜どうだろう。想像できないですね。
◆日向坂時代からの夢ノートは今も健在
――肩書きがアイドルから俳優に変わって、ドラマ出演が続いたり、初主演映画でカンヌに行くことが決まったり、そういうなかで俳優に対する向き合い方は変化しました?
齊藤:アイドルを卒業後にこれで頑張っていきたいと自分で決めたものなので、いろいろな作品で共演者の方から刺激を受けて吸収することも多いですし、日々お芝居の楽しさが増しています。俳優として磨きをかけて、もっと上を目指して頑張りたいっていう気持ちがより強くなりました。
――今回演じるさくらは、一日の終わりにその日の印象的なことを手帳に書き残すというルーティンがありましたけど、齊藤さんはそういうのあります?
齊藤:あります。昔は紙で夢ノートを書いてたんですけど、その紙を誰かに見られたくなくて、今は誰にも見られないように3重のロックをかけてスマホのメモ帳に並べています。まだ公言できるようなものはないし、胸を張って言えるような立場になったときに、こんなことを書きましたって言いたいです(笑)
――それは全部仕事のことですか。
齊藤:はい、プライベートなことは何も書いてないです。仕事で叶えたい夢が多くて、自分自身のキャリアというか、そういうことを書いています。
――何個ぐらいある?
齊藤:今は15個です。本当にびっくりするぐらい壮大な夢なんです。でも、グループの頃から夢ノートをつけていて、叶えられなかったことがないんです。だから過去を振り返ると、『こんなに夢を抱えてたけど全部叶えてきたじゃん、私ならできる』という人生の生きがいにもなっているので、日向坂46での成功体験はお守りですね。
◆「大人だね」と言ってもらえるようになりたい
――5月にはカンヌ国際映画祭ではレッドカーペットを歩くことになると思いますけど、俳優として世界を意識することも?
齊藤:日本で沢山の方々に私のお芝居を届けられるよう努力している最中ですが、いつかは海外の方にも届くように頑張りたいです。そのためには英語も勉強して、俳優としての強みを増やせたらいいなと思いますね。
――ひとつの軸を持つとしたらどんな俳優を目指していますか。
齊藤:長澤まさみさんのように、名前を聞いて知らない人がいないぐらいの存在になりたいです。
――現在27歳ですが、年齢は意識しますか。
齊藤:お芝居の世界では年齢はあまり関係なかったりするので。どの年齢でも味のある役があったりもしますし、そこはいい意味で気にしてないかもしれないです。
――ひとりの女性としてはどうでしょう。
齊藤:もっと物事や人間関係を俯瞰して見られるような大人になれたらいいなっていう思いはあります。
――アイドル時代からわりと俯瞰して見られていたような気も。
齊藤:もっと大人になりたいなっていうのは思うんですよ。精神年齢も上げて、接しているときに「大人だね」と言ってもらえるようになりたい。
――大人になりきれていないと感じる部分は?
齊藤:ゲームとかカラオケとか、楽しいと思ったらずっとやり続けちゃうとか。それが大人じゃないっていうわけじゃないんですけど、人間としての軸から大人になりたいっていうのは思っています。
◆体のメンテナンスが「癒やし」であり「ストレス発散」
――休日のストレス発散はどんなことをしてますか。
齊藤:今はおうちカラオケで、ひとりで歌って発散するぐらいですね。
――ほかのインタビューを読むと、最近は健康にも気を使い始めたそうで。齊藤さんが大好物に挙げていたラーメンもあまり行ってない?
齊藤:そうですね、頻度はだいぶ減りました。健康に良いとされるサプリメントを飲んだり、免疫力を高める習慣をつけたり。自分のために良いことをしてるという充実感もあるし、実際に風邪も引かなくなったんです! そういう意味では、体のメンテナンスは癒やしでもあり、ストレス発散かもしれないですね。
――今後挑戦してみたい役を教えてください。
齊藤:まだまだ経験を積んでいないからこそ、いろいろな役をやりたいっていう気持ちですね。強いていうなら、Netflixの『イカゲーム』のようなサバイバルデスゲーム作品のプレイヤー役をやってみたい。私がゲーム好きっていうのもあって、ああいう頭脳戦でずる賢く勝ち上がっていくようなストーリーは、演じながらも楽しめそうです。
【齊藤京子】
1997年、東京都生まれ。’16年にけやき坂46(現:日向坂46)の1期生としてデビュー。卒業後は、ドラマやバラエティーを中心に活躍している。初主演映画『恋愛裁判』が今冬公開予定。ドラマイズム『あやしいパートナー』(MBS火曜24時59分/TBS火曜25時28分〜)は、FANTASTICSの八木勇征 とのダブル主演。同作は、’17年に韓国で放送されたチ・チャンウク主演の『あやしいパートナー〜Destiny Lovers〜』の日本版リメイク
<撮影/コウ ユウシエン 取材・文/吉岡 俊>