どういう仕組みがあるとボランティアがしやすくなりますか――。
5月18、19日に石川県を訪ねた天皇、皇后両陛下の長女愛子さま(23)は、能登半島地震の被災者を支援するボランティアの大学生にこう尋ねられた。
初めての被災地訪問で交流した人々との会話からは、勤務先の日本赤十字社での経験がいたるところに感じられた。
学生と会話弾み
愛子さまは2024年3月に学習院大を卒業し、成年皇族としての公的活動を本格化させた。また、4月に日赤に入社し、青少年・ボランティア課で赤十字奉仕団など赤十字ボランティアの情報誌の編集、研修会やイベントの運営などを担当しているという。
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愛子さまは石川県訪問初日、七尾市で「金沢大学ボランティアさぽーとステーション」の学生3人と懇談した。このサークルでは地震で倒壊した建物の片付けや、被災者の声に耳を傾ける取り組み、泥水につかった写真の洗浄など幅広い活動を続けている。
そうした説明を聞いた愛子さまは大学生に「私はボランティア(の仕事)に携わっていますが」と切り出し、若者がボランティア活動に参加しやすくするための方法などを熱心に質問した。
大学生が交流サイト(SNS)を活用していると説明すると、「若い人に届きますよね」と納得した様子だったという。
年齢の近い大学生との会話は弾み、被災地で求められる支援とボランティアが提供できる活動内容とのバランスを取ることの難しさも話題に上った。愛子さまは「よく職場でも言われていることです」と興味深そうに聞いていた。サークル代表の喜多見浩介さんは取材に「ボランティアの実務的な質問が多く、熱意を感じた」と喜んだ。
日赤との仕事とも絡め
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2日目に訪れた志賀町ではボランティアの受付会場を見学し、ボランティアや町社会福祉協議会の支援員と交流した。
昨年、町赤十字奉仕団と町役場、町社会福祉協議会が協力し、仮設住宅に暑さ対策としてゴーヤーを使った「グリーンカーテン」を設置したことを聞いた愛子さまは「(日赤として)初めての試みで社内で話題になりました」と応じた。
愛子さまはこの場でも、多くの人にボランティアへの参加を呼びかける方法を質問していた。案内した稲岡健太郎町長は記者団に「被災者に寄り添った活動やボランティア活動への関心がおありなのだと感じた」と述べていた。
側近は今回の訪問で愛子さまが「ご自身が関係されているボランティア活動についても、多くのことを学ばれる機会があり、経験を今後のお仕事に生かしていくことができればとのお気持ちだ」と説明する。
多くの被災者と交流
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2日間で多くの被災者とも言葉を交わした。七尾市の仮設住宅の集会所では、高齢者の健康維持や避難者同士のつながりを深める目的で始まった「健康体操」の様子を見学した。
愛子さまは椅子に座り音楽に合わせて体操をした高齢者の前にひざをつき「どのような曲がお好きですか」などと尋ねていた。
また、志賀町の道の駅に設置された仮設商店を訪ねた際は、スーパーやたこ焼き店を見て回り、店の再建に向けた状況を聞いて励ましていた。
予定にはなかったが、仮設住宅や道の駅の敷地内に集まった人々にも「生活はいかがですか」「これからもお体を大切に」などと声をかけて回った。
愛子さまの単独での地方公務は、昨年10月の国民スポーツ大会に合わせた佐賀県、今年5月の大阪・関西万博に伴う大阪府に続いて3回目となった。
愛子さまは今回の訪問を終え「被災地の人々が懸命に進もうとしている姿を目にし、力と勇気をいただいた」と話しているという。
【高島博之】
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