2025年F1第9戦スペインGP マックス・フェルスタッペン&角田裕毅(レッドブル) 片山右京が1997年に打ち立てた日本人最多レース出走記録の『95』を更新して、今年のF1第9戦スペインGPで96回目のF1のレースをスタートした角田裕毅(レッドブル)。しかし、そのレースは角田にとって、長く厳しい65周となった。
その最大の理由は、前日の予選で最下位の20番手となったことだ。角田がF1の予選で最下位となるのは、Q1でクラッシュした今年の第7戦エミリア・ロマーニャGP以来のことだった。
角田が予選で最下位となったのは、これまで7度ある。今年の2回以外の5回を遡っていくと、2023年のラスベガスGPは車重検査に引っかかり、さらにインラップで渋滞に巻き込まれて、アタックができないまま終わったためだった。
2022年カナダGPの20番手は、パワーユニット交換によって最後尾スタートが決まっていることと、予選がウエットコンディションだったため、クラッシュするリスクを考えて、意図的に最小限の走行にとどめたことが理由だ。2022年のサウジアラビアGPは、マシントラブルによって、1度もアタックできず。ルーキーイヤーの2021年にも2度予選で20番手となったことがあるが、それらはいずれもQ1でクラッシュしたことが原因だった。
つまり、きちんとアタックして最下位に終わったのは、角田のF1人生で初めてのことだった。しかも、角田がマシンに違和感を覚えたのは予選だけでなく、金曜日の走り始めから訴えていた。このような場合、セットアップを見直してピットレーンからスタートするという選択肢をとるケースが多い。
日曜日の午前11時40分、国際自動車連盟(FIA)は「レッドブルが予選と異なるスペックのパーツとセットアップを変更したため、ピットレーンからのスタートを命ずる」と発表した。
土曜日の予選後、角田はこう語っていた。
「もし、セットアップに問題があったり、クルマのどこかが壊れているのなら、そこを直せば問題は解決しますが、データを見る限り、問題はそこではないようなので、セットアップを変更してもゲームチェンジにはならないと思います。ただただ、クルマがコースのあちこちで滑りまくっているという状況なんです」
それでは、なぜ角田はセットアップを変更したのか。角田はこう説明する。
「僕からセットアップを変更してほしいとお願いしたのではなく、チームがファクトリーのあるイギリスのミルトン・キーンズのスタッフたちとデータを共有して、クルマを学ぶために変更したと聞いています」
テクニカルディレクターのピエール・ワシェはこう語った。
「問題を見つけたというわけではない。ただ、すべてのセットアップを変えた。それから土曜日に重めのリヤウイングだったのをマックスと同じ仕様に交換した」
このことから考えられるのは、チームはセットアップとパーツをできる限りチームメイトのマックス・フェルスタッペンと同じにして、走行データから角田とフェルスタッペンのマシンの違いを徹底検証したかったのではないかと考えられる。
ミディアムタイヤでピットレーンからスタートしたにも関わらず、8周目にピットインしたのも、渋滞の中で走ることを極力避け、角田のマシンの真のレースペースを評価したかったからだと考えられる。
「2ストップも3ストップも(レースタイムは)そこまで大きく変わらないので、とにかくフリーエアでペースを活かして走ることを目的にして3ストップにしました」
しかし、セットアップを変えても、日曜日の角田のマシンに改善は見られなかった。
「残念ながら、思っていたような改善は見られなかったです。それはラップ・トゥ・グリッド(レコノサンスラップ)のときに、すでにわかっていました」
それでも、早めのピットストップを活かして、レース終盤にポイント圏内に近づいていったが、アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)のコースオフによって、入賞の望みは消えた。
「最後にセーフティカーが入ってしまったのが不運でした。それがなければ、ポイントを狙えたかもしれないだけに残念です」
日本人最多出走記録を更新する記念すべきレースでいい走りを披露できなかったものの、この3連戦でスペインGPを除けば、フリー走行で時にはフェルスタッペンに肉薄するタイムを刻むなど、角田は確実に前進していることを披露していた。
レッドブルは次戦カナダGPに向けて、さまざまなトライを行う予定だという。それがうまく行くことを願っている。
[オートスポーツweb 2025年06月02日]