
今回のお悩み「NISAの成長投資枠をもっと活用するには?」
NISAのつみたて投資枠で積立をしています。もう少し投資について学んでみたく、成長投資枠にも興味が出てきました! でも、成長投資枠って買うタイミングや銘柄選びが難しそう……。“オルカン”や“S&P 500”が手堅いのでしょうか?(30代前半/飲食)
NISAのつみたて投資枠を利用しての積み立ては既にスタートされて、成長投資枠にも興味を持たれているとのこと、着実に資産運用について学んで、実践することはすばらしいですね。まずは簡単に、NISA(新NISA)についておさらいをしていきましょう。
■NISAとはどんな制度?
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2024年から始まった新NISA(以下NISA)は、成長投資枠とつみたて投資枠の2つがあり、成長投資枠は240万円、つみたて投資枠は120万円の合計360万円の年間投資枠があります。非課税保有限度額(総枠)は1800万円(取得価額)で、売却したら翌年に元本部分が復活する仕組みです。
NISAの最大の特徴は、投資をして得た利益に対して税金がかからないことです。投資では基本的に利益に対して約20%(20.315%)の税金がかかりますが、NISA口座で得た利益なら非課税になります。日本国内に住む18歳以上の人ならだれでも口座を開設することができますが、一人1口座までという決まりがあります。
■つみたて投資枠と成長投資枠の違いとは
つみたて投資枠では、「長期・積立・分散」投資に適した投資信託(およびETF)を積み立てながら資産形成をしていきます。一方、成長投資枠は、国内・海外の株式、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)など幅広い商品が対象になり、自由度が高く、積極的に運用することもできます。
■成長投資枠の活用方法
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成長投資枠で購入できる商品はつみたて投資枠よりも増えますが、年間投資枠が限られているため、短期間で頻繁に売買するよりも、比較的じっくりと保有する中長期の運用に適しているといえるでしょう。
例えば中長期で成長が見込まれる企業の株や、これから成長が期待できる国や産業などに投資をしたり、配当利回りが高い株式に投資をする方法もあるでしょう。配当金は通常の証券口座であれば、約20%の税金が引かれますが、NISA口座なら配当金も非課税で受け取ることができます。その場合、配当金の受け取り方法を「株式数比例配分方式」に設定する必要がある点だけ注意しましょう。
他にも、長期間株式を保有することで、株主優待の内容が良くなる企業もあるため、株主優待狙いでの使い方もできそうです。
■成長投資枠を利用する際の注意点
成長投資枠を利用する際は、いくつかの注意点があります。
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◇成長投資枠だけで運用すると総枠が1200万円になる
年間の投資上限額は240万円、非課税保有限度額(総枠)の上限は1200万円です。成長投資枠のみで運用する場合は、1800万円の総枠を全て使い切ることができず、少なくとも600万円はつみたて投資枠で積立投資を行う必要があります。ただし、つみたて投資枠のみで、1800万円の総枠を使うことは可能です。
◇超過分は課税口座での取引になる
年間の上限額や総枠を越えて運用をした場合、超過分が課税口座(特定口座や一般口座)での取引となり、超過分の運用で得た利益に対しては税金がかかることになるので注意が必要です。
◇つみたて投資枠の商品を購入すると手数料が高くなることも
つみたて投資枠で購入できる商品を成長投資枠で購入することもできますが、つみたて投資枠で購入できる商品は、原則として購入時手数料(販売手数料)が無料のノーロード商品です。
一方、成長投資枠では、投資信託の種類によっては購入手数料がかかる場合があるため、同じ商品でも成長投資枠で購入すると手数料が高くなることもあります。
◇口座を開設する金融機関によって取扱商品が異なる
NISA口座は、証券会社、銀行、信用金庫、信用組合などで開設することができますが、開設する金融機関によって取り扱いが可能な商品が異なります。
例えば、証券会社以外の金融機関では、投資信託は購入できますが、株式やETF、REITを購入することができません。株式などで積極的に運用をしたいなら、証券会社で口座開設をしましょう。開設後でもNISA口座の金融機関を変更することは可能です。
◇元本が減るリスクが高くなる可能性がある
成長投資枠で購入できる商品は、国内外の株式や、ETF、REITなど比較的値動きのある商品です。売買のタイミングによっては、元本が大きく減るリスクも含んでいますので、どれだけご自身がリスクを取れのるか、リスク許容度をあらかじめ考えておく必要があるでしょう。リスク許容度に応じてどの商品を購入するのかを検討するとよいでしょう。
■オール・カントリー(オルカン)とS&P 500はなぜ人気なのか?
ここまで成長投資枠を利用する際の注意点についてお話ししてきましたが、では実際に成長投資枠を使ってみようとしたときに一番気になるのは「どの銘柄を買えばいいのか?」というところかと思います。
NISA口座の投資先人気ランキングで常にトップ争いをしている、オルカンとS&P500は、どちらもつみたて投資枠で積立投資、成長投資枠で積立投資やスポット購入ができる投資信託です。しかし中身は異なる商品ですので、簡単にその中身とその人気の理由を解説します。
オルカンとは、All Country World Index Fundの略で、全世界株式インデックスファンドとも言います。日本を含む全世界の株式に分散投資しているインデックスファンドで、1つのファンドで世界中の株式に分散投資ができるため、リスクを軽減することができまた、運用コストも低いため、初心者さんでも手軽に“長期・積立・分散投資”ができることで人気があります。
S&P500とは、米国企業を幅広く代表する約500の企業が採用されている株価指数で、米国株式市場における時価総額の約80%を占めるため、米国株式市場動向をつかむ指標となる株価指数のひとつです。アメリカの経済状況が良くなれば、この指数も上がり利益が見込めるという仕組みです。
S&P500の指数に連動した投資信託が人気の理由は、諸外国に比べてアメリカの情報が入りやすいことと、投資に必要なコストが低く、長期的にみると上昇トレンドにあることで、長期的な資産形成に適した投資先も言われており人気があります。
どちらも国もしくは企業に分散しているとはいえ100%株式で運用しているため、変動が激しくリスクが高い商品とも言えます。そのため、売買のタイミングによっては元本がマイナスになることもある点に注意が必要です。また、オルカンの投資先の半分以上は米国株ですので、オルカンとS&P500だけでNISAの運用はOKとも言い切れない点にも留意する必要があるでしょう。
投資はご自身がどれだけリスクを取れるのか、またどのようにポートフォリオを組むのかを考えながら自分なりの投資スタイルを作り上げていくと、投資のスキルアップにもつながりますよ。
令和のマネーハック123
NISAの成長投資枠は中長期の運用におすすめ。上限額や手数料などに気を付けながらぜひ活用してみよう!
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(文:丸山晴美、イラスト:itabamoe)
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