参院予算委員会前、石破茂首相(左下)と話す小泉進次郎農林水産相(右)=2日午前、国会内 夏の参院選を控え、石破茂首相が農政改革を進める方針を打ち出した。米価高騰に国民から悲鳴が上がる中、コメ政策の抜本的見直しに踏み込む姿勢を示し、消費税減税を掲げる野党に対抗する狙いがある。ただ、コメ政策は自民党内で「聖域」とされてきた歴史があり、抵抗も予想される。
「十数年前に農林水産相を務めた時、生産調整を見直すべきでは、と提起した。その思いは今も変わらない」。首相は2日の参院予算委員会で、生産調整の見直しに意欲を表明。その上で自身が議長を務める「コメの安定供給に関する閣僚会議」を週内にも発足させる方針を明らかにした。
減反政策は2018年に廃止された。しかし、飼料米への転作に補助金を出すなど、事実上の減反に当たる生産調整は続いている。小泉進次郎農水相の就任後、石破政権は5キロ2000円程度を目標に随意契約での備蓄米放出を打ち出し、消費者重視の姿勢にシフト。さらに「水田政策を2027年度以降に向け大きく転換する」(小泉氏)としてコメ増産に踏み込む構えを見せている。
野党各党が消費税減税で足並みをそろえる中、石破政権は消費税が社会保障の財源になっていることを重視し「どんなことがあっても消費税を下げる公約はできない」(森山裕幹事長)との立場を崩していない。政権の「低空飛行」が続く中、小泉氏の発信は「小泉劇場」と注目を集め、内閣支持率は反転の兆しを見せつつある。
自民内からは「風向きが変わるかもしれない。減税にも年金にもコメで対抗できる」(幹部)との声が漏れる。首相としては、小泉氏との「二人三脚」で改革姿勢をアピールし、長年の持論であるコメ政策の見直しにつなげたい考えだ。
首相は2日の参院予算委で「コストダウンしなければ輸出はできない」と述べ、農家の大規模化を検討する考えも示唆。農家に補助金を支給する「直接支払制度」については「全て補償すると消費者が安心できる価格を実現できない」として一定の線引きを検討すべきだとの認識を示した。
もっとも、農政改革には自民内からの反発が必至だ。野村哲郎元農水相は5月31日の会合で、備蓄米放出を推し進める小泉氏を「(党に)相談することなく、自分で判断したものをどんどん発表している」と批判。農林族重鎮の森山氏は2日の講演で、農政改革について「少し時間をかけていくことが大事だ」とクギを刺した。
「まずは従来の政策の検証から始めることになる。いきなり大きくは動かない」。政権幹部は新設される閣僚会議についてこう話した。消費者の不満に加え、生産者の不安に応えられるかどうかが改革のポイントとなりそうだ。

参院予算委員会で挙手する小泉進次郎農林水産相=2日午前、国会内

参院予算委員会で質問を聞く石破茂首相=2日午前、国会内