アキュラに勝利をもたらした残り数分の逆転劇。バン・デル・ザンデがバトルを振り返る/IMSAデトロイト

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2025年06月03日 12:20  AUTOSPORT web

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レース終盤に7号車ポルシェ963と10号車キャデラックVシリーズ.Rをオーバーテイクし見事、今季初優勝を飾った93号車アキュラARX-06 2025年IMSA第5戦デトロイト
 レンガー・バン・デル・ザンデは、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第5戦『シボレー・デトロイト・スポーツカー・クラシック』のレース終盤に「全力で攻める」という決断が、自信とホンダ・レーシング・コーポレーションUSA(HRC-US)のエンジニアたちの共通の判断だったと語った。

 93号車アキュラARX-06をドライブしていた彼は、決勝レースが残り4分となった時点のターン1で、当時リードしていたリッキー・テイラーが駆る10号車キャデラックVシリーズ.R(ウェイン・テイラー・レーシング)に勝負を仕掛けた。このバトルの後、アキュラ・メイヤー・シャンク・レーシングはシリーズ復帰後初の勝利を手にしている。

 それはテイラーが10分前にフェリペ・ナッセ駆る7号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)を抜き去り、リードを奪った直後のことだった。

「正直に言って、僕たちは最速のクルマではなかったと思う」とバン・デル・ザンデは述べた。

「とくにポルシェがピットで僕たちを抜き去り、キャデラックにもオーバーカットで前に出られたとき、彼らに置き去りにされたような感じがした」

「その時点で、優勝を争うには別の何かが必要だったんだ。ある時点で、『もしかしたら彼らは互いにやり合ってくれるかもしれない』と考えた。すると、それが実際に起こった」

「リッキー(・テイラー)ほどクルマの外で親切な人もいないけれど、彼はコクピットに乗り込めばもっともタフなドライバーのひとりだ。彼がポルシェを抜き去ったとき、まさにそのことがわかった」

「僕はただ、彼にぴったりついて行くつもりだったんだ。再スタート後、みんなのタイヤはイエローフラッグ前のグリップレベルを維持することが難しくなっていたからね。実際、タイヤが滑っていたが、前に近づくために全力でプッシュしていた」

「それが功を奏したと言えるだろう。彼らは互いに競り合い、その隙に僕は7号車ポルシェをパスすることができたんだ」

「最後の勝負を仕掛けるためには、リッキーに近づている必要があった。ターン1では自分たちクルマが少し強いことはわかっていた」

「キャデラックのストレートスピードは圧倒的だったから、ターン3は選択肢ではなかった。だから『チャンスがあればターン1で攻めるしかない。狭いコーナーでリスクはあるけど』と覚悟を決めたんだ」

「無線でチームに『チャンスがあればトライしてもいいか』と尋ねたよ。最終的にリスクを取るかどうかは彼らの判断だが、彼らは『トライしてみろ』と言った。その時、僕らは互いに挑戦することにしたんだ」


■敵ながらあっぱれ! 「彼は本当に素晴らしいパスを決めた」

 チームメイトのフィリペ・アルバカーキが8番手からスタートし、スティントを長く走ったため、テイラーはピットストップ・シーケンスから2番手で抜け出し、優勝のチャンスがあることを悟った。

「ナッセ(7号車ポルシェ)にアタックするための準備を整えていた」とテイラーは語る。

「彼はターン1で小さなミスをした。チャンスはそう多くない。だからそこで行ったんだ。彼はかなりディフェンスしてきてターン3のエイペックスでは少し接触した」

「ターン4で彼がブロックした時に本当に近くまで接近することができた。彼がドアを開けた瞬間、僕は行動に移すつもりだった」

「マシンは持ちこたえた。もし、ナッセをレンガー(・バン・デル・ザンデ)との間に置くことができれば、優勝できる自信があった。再スタート後、ナッセと僕は当時3番手のレンガーに対して少しギャップを築いていたからね」

「その後レンガーが追いついてくるのを見て、彼が勝ちそうなのが分かった。レンガーは彼らしく仕事を成し遂げ、僕のことを抜き去った。彼が見えた瞬間、『ああ、これは頑張らなきゃ』と思ったよ」

「ナッセにアタックしていた時、ピックアップによってタイヤを少しロックアップさせてしまうなど、いくつかミスをした。けれど、その後はグリップが回復してふたたび自信を取り戻していた」

「最後のセクターで小さなミスを犯してGTカーと接触しそうになったが、後ろのレンガーとは充分に余裕があると思っていた。だから正直、あの動きは予想していなかった。彼はターン1で本当に素晴らしいパスを決めた」

「彼にはそのダイブを決めるだけの自信が必要だったし、僕はそれを予想していなかった。彼は本当に良い動きをしたと思う」

「僕からするともう一度追い抜くチャンスはなかった。結局のところ、もっとも良いクルマが勝ったと思うよ」

 しかし、フィニッシュまで残り3分となった時点で優勝を決めるオーバーテイクを成功させたにもかかわらず、バン・デル・ザンデはチェッカーフラッグが振られるまで自身が勝ったことを知らなかったという。

「勝利の決定打となったパスをした時、興奮のあまり、まるで小さな子どものように我を忘れてしまった」と振り返ったバン・デル・ザンデ。

「これはIMSAだ。IMSAのレースは最後までなにが起こるかわからない。トラフィックがあり、混沌があり、イエローフラッグがあり、最終盤の残り数周でまだ激しいバトルが起こる可能性がある。それがまさに今日起きたことだ」

「純粋なスピードでは、勝つチャンスはなかった。しかし、IMSAの混沌とした状況では、トラフィックの中で運が必要になり、最後には大胆な動きを仕掛ける必要がある。今日は全力を出し切ることができた。それは素晴らしいことであり、本当にクールなことだ」

[オートスポーツweb 2025年06月03日]

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