2025年FIA F2第6戦バルセロナ 宮田莉朋(ARTグランプリ/TGR-DC) 5月30日に行われた2025年FIA F2第6戦バルセロナのフリー走行(FP)にて、宮田莉朋(ARTグランプリ/TGR-DC)は6番手タイムをマークした。今回の舞台は、昨年好走をみせ、開幕前の合同テストでも好タイムを刻んだバルセロナということもあり、この週末はシーズンの中でも宮田にとって大きなチャンスとなる大会だった。
「FPではタイヤのピークグリップが1周しか保たなかったので、その1周をまとめたドライバーが上位に名を連ねたのではないかと思います。バルセロナは開幕前に3日間テストがあり、ある程度クルマやドライビングについてもイメージしていた部分があったので、ひとまず6番手というポジションに入ることができた、という印象です」と、宮田はレースウイーク後の取材で振り返った。
「とはいえ、特にいい手応えがあったわけでもなく、満足できるパフォーマンスではありませんでした。ひとまず、その時点でのパフォーマンスでシングルに入れることを確認したという感じでした」
事実、FP最速のアービッド・リンドブラッド(カンポス・レーシング/レッドブル育成)と6番手宮田のタイム差は0.964秒にも及んでおり、予選、レースに向けて楽観視できる状況ではなかった。
そうして迎えた30分間の予選。FIA F2では2セットのオプションタイヤ(柔らかめ/コンパウンドは大会ごとに異なるが、今回はソフト)が供給されることから、セッション前半に1セット目、セッション後半に2セット目ののオプションタイヤでアタックを行う。宮田は各車が1セット目のアタックを終えた時点で、リンドブラッドから0.324秒差の3番手につけていた。
セッション後半、宮田は2セット目のアタックに入るとセクター1で全体ベストを更新。しかし、セクター2、セクター3でタイムが伸びず、トップから0.636秒遅れの14番手に沈む結果となった。
「1セット目で3番手に入れましたが、FPと同様にトップとのタイム差があり、改善しなければいけない点はいくつかありました。そこで、チームの指示に従った上で、2セット目のアタックに臨みましたが、そのアタックがまったく良くありませんでした。悔しいというよりも、残念でした」と、宮田。
完璧ではないとはいえ、マシンのパフォーマンスがある程度レベルに達していたことは間違い無い。戦略ミスによる予選14番手という結果に残念な思いを抱いた宮田だったが「レースだけでも自分の力を証明したい」と、気持ちを切り替えて挑んだ翌31日のスプリントレースで好レースを展開する。
他車のグリッド降格に伴い、13番手からスプリントレースのスタートを迎えた宮田は動き出しもよく、ターン1までに至るストレートでアウト側にポジションを取った。ターン1でイン側についた車両が前を塞がれるなか、宮田はターン2立ち上がりの時点で8番手に浮上。さらにターン7でリンドブラッドをかわすと、7番手でオープニングラップを終えた。さらに、続く2周目のターン1では、ロマン・スタネ(インビクタ・レーシング)に対しアグレッシブなオーバーテイクを見せた。
「スプリントレースはスタートの蹴り出しもポジション取りも良く、自分のドライバーキャリアのなかでもかなり良いオープニングラップの戦いだったと感じます。望んでいたスタート位置からだったら、もっと前で走れた。という思いはありますが、やれることをやり尽くしました」と、宮田。
これで6番手に浮上した宮田は、タイヤ交換義務のないスプリントレースでタイヤを痛めないよう、レースペースをコントロールしつつ周回。13周目に先行していたジョシュア・デュルクセン(AIXレーシング)が戦線を離れたことで宮田は8ポジションアップの5番手となる。ライバル勢ともペースに差はなく、このまま5位でチェッカーかと思われたが、後半に戦局は大きく変化する。
18周目、ターン1でセバスチャン・モントーヤ(プレマ・レーシング)とガブリエレ・ミニ(プレマ・レーシング/アルピーヌ育成)が接触。プレマの同志打ちとなるなか、ミニがエンジンを止めてしまい、セーフティカー(SC)導入となった。このSC中に、8番手につけていたリチャード・フェルシュフォー(MPモータースポーツ)を筆頭に、中団勢9台が続々とピットインし、オプションタイヤに履き替えた。
宮田を含む上位勢はコース上にステイしたが、この判断は結果的に大きな間違いだった。比較的フレッシュなオプションタイヤを履く交換組は、次々と、そして易々とタイヤが限界に近いステイ組をオーバーテイクする。宮田も次々と交換組にかわされ、13位でチェッカーを迎えることになった。
「1周3秒近くラップタイムに差があるので、フレッシュタイヤを履いたクルマを抑えることは難しかったです。作戦ミスでポジションを失うかたちとなり、本当に残念でした」と、宮田は言葉を選びながら答えた。
「当然、予選ポジションも大切ですが、これまでのレースにおいて、スタートしてからポジションを上げるパフォーマンスがなかったので、まずはレースでのパフォーマンスを上げることが週末の課題でした。なので、今回のスプリントレースで、ずっといいペースで走れたことはポジティブです。ようやく、ベースとなるパフォーマンスまでいけたかなと思いますし、そこはチームに感謝しています。とはいえ、まだまだ完璧ではありませんが……」
翌6月1日に行われたタイヤ交換義務を有するフィーチャーレース。14番グリッドスタートの宮田はオプションタイヤスタートを選択した。
「フィーチャーレースではもともとプライムからオプションのストラテジーを前提で考えていました。ただ、ライバル勢にプライムスタートが多く、もしまた序盤にSCが入った場合、オプションスタート勢が有利な状況になります。スプリントレース同様に良いスタートを決め、できるだけオプションタイヤで引っ張り、フレッシュなプライムタイヤでプッシュするという作戦に切り替えました」
自身の見立てのとおり、フィーチャーレースでも好スタートを決めた宮田はオープニグラップを終えた時点で11番手に浮上。2周目にフォルナローリをかわして10番手、さらに3周目にアレクサンダー・ダン(ロダン・モータースポーツ/マクラーレン育成)、5周目にジャック・クロフォード(ダムス・ルーカスオイル/アストンマーティン育成)をかわすと、宮田は8番手までポジションアップに成功した。
そして、宮田は同じオプションタイヤスタートのライバル勢が6周目から続々とタイヤを交換するなか、オプションタイヤを引っ張る作戦に。オプションスタート勢では最後となる17周目にピットに入り、プライムタイヤ(硬め/ハードコンパウンド)に履き替えた。
「SC導入を望んでいた状況でもありましたが、クルマのパフォーマンスが上がった分、タイヤを保たせることもできていました」と、宮田は振り返る。
ピットアウト後もタイヤ交換組8番手をキープしていた宮田。しかし、22周目のルーク・ブラウニング(ハイテックTGR/ウイリアムズ育成)とのターン4でのサイド・バイ・サイドの最中、ブラウニングがブレーキングを遅らせ、宮田をコース外のグラベルに押し出した。幸い大きなダメージこそなかったが、宮田はこれで大きくタイムを失うことになった(ブラウニングに対し10秒のタイムペナルティの裁定が下った)。
ただ、それでもプライムタイヤに履き替えた宮田のペースは良く、32周目に10番手/入賞圏内に復帰。35周目に9番手に浮上し、続けてビクトール・マルタンス(ARTグランプリ/ウイリアムズ育成)のテール・トゥ・ノーズまで入るなか、フォルナローリがマシンを止めたことでSC導入となり、そのまま37周目のチェッカーとなった。
「オプション→プライム勢のなかでも、オプションタイヤでかなり引っ張ったので、プライムタイヤの状態もパフォーマンスもいい状況でした。あそこからさらにポジションを上げることはできたと思いますが、コース外に押し出された一瞬で大きくタイムロスし、プライムスタートからオプションに履き替えたドライバーを抑えなければいけない状況になったので、残念でした。あれがなければもう少し上の順位で、より多くのポイントを持ち帰ることができたと思います」と、宮田は振り返った。
フィーチャーレースを9位で終えた宮田。バルセロナでの週末は理想からは程遠い結果となったものの、これで今季2度目の入賞を手にした。
「僕としては力を出し尽くしたレースウイークでしたが、不運が多く結果に繋がらない週末でした。スプリントでの作戦ミスも含め、やるせない思いもありましたが、クルマ自体のパフォーマンスを上げることができたことは自信に繋がると思います。レースをする上でクルマを良くしていかなければ勝てないことは理解しています。そこはチームのためにも一生懸命フィードバックして、チームを引っ張っていけるようにしたいと思っています」
「運がなかったこと、そして作戦ミスで取りこぼしたバルセロナでしたが、気持ちを切り替えてシュピールベルク(オーストリアのレッドブルリンク)の戦いに臨みます。クルマのパフォーマンスが良くなっていることは間違いないので、次こそは結果もついてくるように頑張っていきます」
次戦となる第7戦シュピールベルクは6月27〜29日に、オーストリアのレッドブルリンクで開催される。全14戦が開催される今季FIA F2の前半戦最後のラウンドとなるシュピールベルクでは、どのような戦いが繰り広げられるだろうか。
[オートスポーツweb 2025年06月03日]