
突然霊が見えるようになった女子高生が、ひたすら霊を無視してやり過ごそうとする姿を描く、泉朝樹の青春ホラーコメディー漫画を実写映画化した『見える子ちゃん』が、6月6日から全国公開される。本作で主人公の四谷みこを演じた原菜乃華に話を聞いた。
−最初に脚本を読んだ時の印象は?
原作の魅力は、独特のテンポや緩急が入り混じっている空気感だと思っていました。それが脚本になった時に、多少の設定の違いはありますが、そのまま再現されていたので、原作のファンの方にも楽しんでいただけるような作品になると思いました。
−実際に演じてみてどう思いましたか。
みこは、表情や感情が表に出るようなタイプではないので、演じていてそこが難しいと思うポイントではありましたが、何より人のためにというのが原動力の子なので、かっこいいな、尊敬できるなと思いながら演じていました。私はいくら親友のためとはいえ、こんな危険な行動はできませんが、みこのスタンスは大切な人のために動くというものなので、周りの人への愛情が深い子だと思いました。みこのようなヒーローっぽい子ではないどこにでもいるような子が、大切な人を助けるために自分にできそうなことから頑張るところが、共感できると思いました。
−演じる上で気を付けたことは?
恐怖のお芝居と、それを人に見せないようにする、隠すこと。でも伝えなければならないというあんばいです。それについては、クランクインからアップまで、(中村義洋)監督にいろいろと教えていただきました。
−心掛けたことは何かありましたか。
主演だからといって特に心掛けたことはありませんでした。同年代の方が多かったので、和やかな雰囲気や和気あいあいとした感じがそのまま画面に映ればいいなと思いながらコミュニケーションを取っていった感じです。最近どんなアプリがはやっているのかとか、美容のことなど、たわいもない会話が多かったです。女子高生っぽい会話をしているなって思いながら過ごしていました。
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−霊が見えているのに見えていないふりをする芝居は難しかったですか。
それが一番難しかったです。ホラー作品といえば、恐怖の表情のお芝居や感情を前面に出すという固定観念があったせいか、現場で監督から「もっと抑えて」と言われることが多かったので、みこが持っている怖いという気持ちが、見ている方にちゃんと伝わるのか不安でした。でも監督から「みこに見えている景色はお客さんにも同じように見えているので、安心して演じてもらって大丈夫」と言っていただいてからは、結構安心して、あんばいを調節できるようになりました。あとは、すごくアップのカットが多かったんですけど、監督から「目線や瞳のちょっとした揺れとか、まばたきを1回多くするとか、口元をきゅっとするしぐさだけでも十分伝わるから」と言っていただいたので、モニターを確認しながら監督とお話をして調整していきました。
−コメディーとホラーとの演じ分けについてはどう思いましたか。
みこが真面目に頑張っている姿が、はたから見ている人からすれば面白いという構図なので、みことして一生懸命に動いていれば、多分それが見ている人からすればコメディータッチになるというのは分かっていたので、あまり意識せずに演じていました。
−撮影現場の雰囲気はいかがでしたか。
ずっと和やかでした。監督が、カットがかかるたびにパーっと走って近くまで来てくださって、目線を合わせて、「さっきのはすごく良かった」と。毎回同じ目線に立って演出をつけてくださるんです。「僕はホラーをたくさん撮っているけど、実は怖くて苦手なんだ」みたいなことを話してくださったりして、常に現場の雰囲気を明るく和やかにしてくださるので、ホラー映画を撮っているような物々しさが全くない現場で楽しかったです。
−みこに共感するところはありましたか。
お母さんと口をきかないみたいなシーンは、家族だからこそ、お互いのすれ違いみたいなことは分かるし、言いたいことがうまく伝えられないもどかしさみたいなことも共感できるところだなと思いました。あとは、友達との会話がすごくリアルでした。せりふという感じがしなくて、普段の会話だなと。学生時代の楽しかったことをいろいろと思い出しました。
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−ホラー映画についてはどう思いますか。
ホラー映画を最後までちゃんと見れたことがなくて、今回チャレンジしましたがやっぱり駄目でした。それぐらい駄目な私でもこの映画は見られるのでお薦めです。ホラーが苦手でも、現場ではこうやって作っているんだというのが分かって、楽しく撮影ができました。ホラー映画って「いつ来るんだろう、今かな」みたいな不安な空気がずっと漂っていて、不安な気持ちや怖さを持ち続けながら見るじゃないですか。でもこの映画は、もちろん怖いんですけど、怖さの種類がまた違うというか、怖さの中に面白さがある。常に恐怖と一緒に笑いもついてくるので、そこが新感覚で好きです。
−新感覚というと?
霊が見えているのに無視をするという視点がすごく新しいですし、あとはコメディーであり、青春ドラマであり、ヒューマンドラマでもあり、家族愛が入っているホラーでもあるという、本当にジェットコースターに乗っている時みたいに目まぐるしく気持ちが変わります。驚いたと思ったら次の瞬間には笑っていて、そうかと思えば感動してちょっとぐっときてしまうシーンもあって…。ここまで感情が目まぐるしく変わるような作品はなかなかないと思うので、この新感覚をぜひ味わっていただきたいですし、ホラーは苦手だという方にも見ていただけたらいいなと思います。ちょっとお化け屋敷に遊びに行くみたいな感覚で見ていただけるような作品だと思います。
−この映画にキャッチコピーを付けるとしたら?
キャッチコピーは「劇場型お化け屋敷」でお願いします。新感覚のコメディホラーだと思いますし、怖いのが苦手な女の子でもライトに楽しめると思うので、デートにもぴったりだと思います。コメディー、青春、ヒューマンドラマ、家族愛が全部詰まってるので、ホラーだけではないというのは分かっていただきたいと思います。
−最後に、観客や読者に向けて一言お願いします。
私が原作で好きなところがコメディーとホラーとの独特なバランスで、すごく癖になります。それが存分に映像になっているので注目していただきたいと思いますし、もともと原作を読んでいた方も、この映画で初めて見るという方も、独特な雰囲気を楽しんでいただけると思います。また、本当に新感覚の映画だと思います。泣いて、笑って、怖がってというのが一度に来る作品はなかなかないと思うので、ザ・エンターテインメントだと思いますし、私が初めて原作を読んだ時に感じた「何だこれは」という衝撃と面白さ、新しさみたいなのを、ぜひたくさんの方に味わっていただきたいです。お化け屋敷に来るような感覚で楽しんでもらえたらいいなと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)
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