GRカート試乗会に参加した若手編集部員 5月30日、ENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE 第3戦『富士24時間レース』が富士スピードウェイで開催されるなか、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は入門レーシングカート『GRカート』の開発を発表し、国産カート事業への参入を開始した。同日、カートコースではメディア向け試乗会が実施され、autosport webの若手編集部員も参加。その模様をレポートする。
『GRカート』は、モータースポーツの裾野を広げることを目的にTGRが開発した入門用マシンであり、低価格に抑えた点はもちろん、燃料としてカーボンニュートラル燃料を採用し、サステナブルな要素も重視されている。
筆者自身はカート経験がほとんどなかったが、試乗会ではまずスローペースのゴーカートでコースに慣れ、その後でGRカートに移行した。実際に乗り込むと、カーボンフロアパネルと鮮やかな赤いフレームが目を引き、レーシングマシンとしての雰囲気が充分に感じられる。それでいて、周囲を囲む肉厚なカウルが安心感を与え、ステアリング上部のデジタルモニターや左右に配置されたサイドミラーなど、利便性にもこだわった新鮮な設計となっている。
まず、ドライビングポジションの調整として、アクセルとブレーキの両ペダルをスライドさせる仕組みが採用されている。子どもから大人まで幅広い層が快適に楽しめるよう工夫された仕様だ。また、エンジンはセルモーターによる始動が可能となっている。こうして各種準備を整えた上で、“ミニチュア版”富士スピードウェイを3周する試乗へ出た。
試乗車には215cc型GB221エンジンが搭載され、駆動方式はベルトドライブが採用されていた。そのため出発時は控えめな立ち上がりであったが、アクセル、ブレーキ、ステアリングの反応の速さは、ゴーカートとは一線を画すスポーツ性を感じさせ、筆者も恐る恐るペースを上げ始めた。基本的にはマイルドな乗り味であったが、次第にスピードを上げるとコーナーで鋭い切り返しが実感でき、初心者にも扱いやすい乗り味を実感。走行中、加減速やターンイン時の荷重移動がしっかりと伝わり、さらなるスピードへの挑戦心もくすぐられる。
試乗中は追い抜きが禁止されていたが、ストレート区間で前車との距離を調整しつつアクセル全開にすると、かなり力強く加速した。現状でも充分な性能を感じさせるとともに、さらに大きなコースで攻め切れる可能性を秘めていることが伺える。ブレーキを強く踏めば、しっかりとした制動力が得られ、ある程度攻めてコーナーに飛び込んでも、コースから飛び出てしまいそうになるような怖さはない。本気になれる楽しさととともに、終始感じられる安定感が印象的だった。
また、素人にもコーナリング時の微妙な挙動の変化が分かりやすく、入門用マシンとしてのバランスが取れている印象だ。ステアリングの重さも気になることはなく、サイドミラー越しに後続の様子を確認しながら、まるでレース中のバトルに参加しているかのような興奮を味わうことができた。シートの縁が広いため乗降もしやすく、親しみやすさを感じさせる設計となっている。冷たい風を感じながらの試乗であったが、走行後には身体が温まり、寒さを忘れるほどのドライブとなった。
試乗後、マシンを眺めると、GRカートは各部の機構がシンプルで整備や管理がしやすい印象を受ける。また、試乗会ではトヨタ・ノア/ヴォクシーの荷室に収める実演も行われ、普段使いのファミリーカーに、自ら整備したGRカートを積んで走りに出るシーンも自然と想像できる。近い将来、GRカートが多くの入門者に楽しさと夢を提供する瞬間が待たれる。
さらに、今回の試乗で感じたのは、GRカートは単なる初心者向けマシンに留まらず、後の成長過程においても充分にチャレンジできる可能性を持っている点だ。今後、モータースポーツの新たな魅力として、GRカートの登場がどのような影響をもたらすかに期待したい。
[オートスポーツweb 2025年06月04日]