警察庁=東京都千代田区 ストーカー規制法に基づく禁止命令の件数が過去最多を更新した。警察は重大事件への発展や被害再開を防ぐため、命令を受けた加害者に治療やカウンセリングを促すなど継続的な関与を強化している。ただ、受診率は5%にとどまっており、警察庁は加害者が受診や相談をしやすい仕組みづくりを検討している。
警察は2024年3月から、被害者が拒否した場合などを除き、禁止命令が出された加害者全員に定期的に電話したり自宅を訪問したりして、被害者への執着の度合いや生活状況などを確認。再発、報復の恐れが強いと判断されれば、被害者への注意喚起やパトロールの強化を実施している。
加害者に医療機関などを紹介する取り組みも。加害者は執着心や支配欲が強い傾向にあり、感情をコントロールするための精神医学的な治療やカウンセリングが有効とされる。24年からは、禁止命令を受けた人や警告を受け警察が必要と判断した人に受診を呼び掛けるなどしている。
こうした取り組みは、一部の警察で始まった16年と24年の比較で405件から3271件に増えた。しかし、実際に加害者が治療やカウンセリングを受けた件数は93件増の184件と伸び悩み、24年の受診率はわずか5.6%。強制力がない上、心理的抵抗や費用負担が壁になっているという。
警察庁幹部は「継続的な関与は有用だが、実効性を上げるには行政や医療機関側との連携が必要だ」と話している。