
『ものまね王座決定戦』や『ものまねグランプリ』をはじめ、老若男女が楽しめる定番コンテンツの“ものまね”。ものまね番組の中には、視聴者投票を取り入れたり、プロが審査するものなど、番組のコンセプトやトレンドも多岐にわたる。
かたや、ライブや営業先などで、往年の鉄板ネタを生で見るのもまた醍醐味だ。2025年7月30日には、札幌文化芸術劇場で、原口あきまさ・ホリ・ミラクルひかる・JPが豪華共演する『スゴイ!ものまねコンサートin札幌』が開催される。上演に先立ち、原口あきまさ・ホリ・ミラクルひかるの3人にインタビューを敢行した。
営業先でバッティングした意外な芸人
ーー『スゴイ!ものまねコンサートin札幌』の見どころを教えてください。
原口あきまさ(以下、原口):キャパが2300人と聞いているので、そんな大きな箱でやることはなかったなと。
ホリ:しかもこの4人でやるのは意外と初めてですね。結構、原口さんとミラクルとは、同じ現場でバッティングすることはあるんですけどね。テレビではあまりやらないネタも披露する予定です!
|
|
原口:あと対面でファンと会うと「原口さんテレビで見るより大きいですね」って言われるのもライブならではですね。「ミラクルさんかわいいいですね」とか、「ホリさんは別に変わんないですね」とか(笑)。
ミラクルひかる(以下、ミラクル):あとは皆さん結構真剣なんですよ。もちろんスベりたくないし、ネタも被らないようにしないといけないし、後輩のJPには負けられないし(笑)。そうした裏側の事情も込みで楽しんでもらえたらと思いますね。
ーーお三方は営業先で一緒になる機会も多いのですか?
ミラクル:営業先の写真を見返すと、結構3人で写っているの多いですよね。
原口:それに営業とか企業パーティー行く時って、結構メンツが被ることも多くて。仲良くなった営業先の人から、ホリとかミラクルの写真が送られてきたり。あと現場でテツandトモとよくバッティングするよな。
|
|
ホリ:あとは小石田純一とか、ダブルネームとかね。あと最近だとTKOの木本さんが客席にいたこともあって(笑)。
原口:この間、3人が一緒になった時は、まずホリが出たら会場の空気が重くて、その次にミラクルが出たら盛り上がって、プレッシャーに感じながら僕が登壇したらホリと同じような空気になって(苦笑)。内心やべえと思いながら、最後ミラクル呼んで3人で盛り上げてみたいな。
ホリ:現場によって、会場の空気が全然違いますよね。 「あれ今日盛り上がるのに時間かかるな」とか。その辺りは生って感じがします。
ミラクル:世の定めかもしれないけど、ベテランほどアウェーの現場が多いですよね(苦笑)。
原口:ショーやっている目の前で、お客さん同士が名刺交換してるとかね。
|
|
ミラクル:営業先の主催者も、お客さんの反応があまり良くないのを察知しているから、やけに弁当が豪華な時あるんですよ(笑)。こっちからしたら逆にやばいみたいな(笑)。
ホリ:二段弁当のやつね。弁当の豪華さで勘弁してくださいって言われてる感じで(笑)。
原口:少なくとも死ぬほど恥はかいてます(笑)。逆にそこから逃げたらダメというか。上手く伝わらないかと思いますが、スベる快感もあるんですよね。
ホリ:自分の出順の前がそんなにウケてないと出るの怖いけど、なんとか空気変えたいみたいな。あとは本番中スベっているのを、そこからどうフリにして、オチに持っていくか考えている時はゾクゾクしますよね(笑)。
原口あきまさがものまね賞レースをやんわり避けている理由
ーーその一方で、テレビでは様々なコンセプトのものまね番組が増えています。皆さんから見て、時代の変化を感じることはありますか。
ホリ:最近は、ものまね番組の系統が変わったよね。
原口:僕は、対戦形式のものまね番組が増えた6〜7年前ぐらいから、あまりテレビ出なくなりましたね。ものまねって歌やしゃべりと色々とカテゴリーがあるので明確な審査基準もなければ、好き嫌いが分かれることも多い。だから審査員も点数をつけづらいだろうし、演者も自由に楽しめないというのがあって窮屈だなと。
フジ(テレビ)の『ものまね王座決定戦』みたいに、歌ネタのジャンル限定であれば比べやすいし、お祭り感もあって盛り上がるんですけどね。あとは審査員がプロの方々で、正当に評価してもらえてれば納得できるんですけど……。
ホリ:このまえ某番組にコロッケさんが出てた時、審査員が若いモデルの子で、絶対ものまねに疎い雰囲気なのね。それで高得点つけて「よく分かんないけど面白かったです」ってコメントしててさ、もうカオスだよね(笑)。そういう意味では点数はつけない方がいいと思いますよ。
ミラクル:私は勝ち負けあるとつい見ちゃうタイプですけど、演者はしんどいですよね。
ホリ:対戦形式にして、フックをつけたがる制作側の事情も分かるけどね。生放送なら現場の温度感も伝わると思うけど、後から編集されるうえプロデューサーの方々に指示出されちゃうと、やりたいようにできないジレンマを抱える芸人は多いのかなと。
原口:たしかにものまね芸人って立ち位置が特殊ではあるよね。みんな芸歴もあってクオリティ半端ないプロも多いけど、一方で素人が優遇されている風潮もあるし。なかなか難しいところではあるよね。
ーー強いて言えば、最近で面白いと感じるものまね番組はありますか?
原口:TBSの『俺にアイツを歌わせたら右に出るものはいない』は歌ネタ限定だし、審査員がアーティストだから新しいよね。あとはテレ東の『ものまねランキング』も、まずMCがものまね好きな出川さんだから現場がホーム。そういう意味ではコンセプトが新しい番組もある。
ミラクル:『水曜日のダウンタウン』の「先生のものまね、プロがやったら死ぬほど子供にウケる説」も面白かった!ものまね芸人はステージに立ってネタを披露する以外は、芸能人にものまねを教えることくらいしか需要がないのかなと思ってましたけど、まだまだ良い企画を考えてくれてる方がいると思うと燃えますね。
原口:面白い企画だとこちらも気合入って、いまだにムキになることもありますよ(笑)。制作側が上手にものまね芸人の特徴を生かしてくれているなと感じる瞬間もありますね。
コロナ禍で変化したものまね業界
ーーものまね業界全体の潮流やトレンドも変化を感じますか?
原口:ここ最近で言うと、“ものまねアーティスト”というジャンルができましたよね。いわゆる歌を精密にカバーするような人たちが増えました。
ホリ:コロナで配信ブームになって、そこで跳ねた人たちが歌モノの番組に出る流れはありますよね。自分たちの時代は素人ものまね番組が結構あって、関根さんとか松村さんとかがそこからデビューする流れが目立ってました。番組に出ると、ものまね系のプロダクションの人が観劇してて、そこでスカウトされることもあって。だから時代背景とか環境も違うと感じますね。
原口:今のものまね界は、大きく2つにカテゴライズされがちなのかなと。1つは精密にアーティストの歌を真似る人、もう1つは茶化しながらも喋りや所作を真似て笑いをとる芸風の人。前者は「リアルを追求する」スタイルで、後者は「笑いを取りに行くか」の違いですね。
とはいえ、皆さんどっちも求めているのが正直なところなので、一概には言えないんですけど。ただ、最近出てきた素人さんや若手は、歌をいかに上手くコピーするかに長けている方が多いですね。
ーーどちらかと言うと、皆さんは笑いを取りに行くスタイルな印象を受けます、
ミラクル:ものまねって演技力が大事だと思うんです。私なんか新田恵利さんのものまねしてますけど、別に歌を完璧に再現しているわけではない。どちらかというと新田さんの癖とか佇まいとか、特徴的なポイントを取り上げて笑いにしている感覚です。
ホリ:だから我々のやり方は、コピーっていうより、風刺に近い感覚なんだよね。
ミラクル:そうですね!いわゆる「そっくりさん」ではないんですよね。
ホリ:俺なんか木村拓哉に似ているわけないのに、木村拓哉ですって言ってるからね(笑)。原口さんがさんまさんなわけないのに、なぜか着け歯したらさんまさんに見えるみたいな。顔が似てないところを、寄せて笑わせる感覚だよね。
原口:逆に、真似する技術は高いんだけど、ネタが面白いかと言われると別だよね。配信では再生回っているけど、逆に対面でのライブが苦手だったり、喋ってみると空気感がなかったりする人はいるかな。僕は逆で、ライブでの客の絡みは得意なのに、YouTubeが全然回らない(笑)。
ホリ:だから技術が高い人は、コアなファンがついてる人が多いかもね。
原口:我々はお笑いの畑で広く立ち回る感じかな。ネタもやれば、場も回すし、監督的な立場にも回るし。
ミラクル:そう考えれば、営業先ふくめ、結構な場数を踏んできましたね。
ホリ:ライブでのお客さんとの絡みはこっちのもんですね(笑)
原口:そうした意味でも、ぜひライブで距離感の近さを味わっていただければ嬉しいです!