松下由樹 長年の活躍を支えてきた信条は「自分だけでなく、共演者や周りの皆さんにとってもいい結果が得られるように」「ディアマイベイビー〜私があなたを支配するまで〜」【インタビュー】

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2025年06月06日 12:10  エンタメOVO

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松下由樹(ヘアメイク:山田かつら)(C)エンタメOVO

 毎週金曜深夜24時12分からテレ東系で放送中の「ディアマイベイビー〜私があなたを支配するまで〜」は、芸能界を舞台に、自らが発掘した新人俳優・森山拓人(野村康太)にのめり込んでいくベテランマネジャー、吉川恵子(松下由樹)の狂気的な愛を描いた“狂愛サスペンス”だ。毎回、放送されるたびに予測不能で過激なストーリーがSNSでも話題となっている。クライマックスが近づく中、主人公・吉川恵子を演じる松下由樹が、長年のキャリアを振り返りつつ、「怪演」と評判の恵子役や作品への思いを語ってくれた。




−過激なストーリーが話題ですが、最初にオファーを受けた時のお気持ちはいかがでしたか。

 芸能界が舞台とはいえ、かなり過激な内容だったので、主演の喜びよりも衝撃の方が大きく、「どうしたら、これをドラマとして面白くできるだろう?」と思ったのが、率直な感想でした。

−現実の芸能界とはだいぶかけ離れているということでしょうか。

 そうですね。だから、自分の周囲のリアルと比較したり、「こんなマネジャーさん、いるのかな?」と追求したりすることは一切やめ、ひたすら「このドラマを面白くするにはどうしたらいいだろう?」と、プロデューサーや監督と話し合いながら役を作っていきました。その方が、共感は一切得られないけど、思わず見入ってしまい、最後まで皆さんを引き付けるキャラクターになると思って。

−松下さんのお芝居も「怪演」と評判ですが、主演俳優としてどのようなことを心掛けましたか。

 とにかく、自分がぶれないように、ということを一番に意識しました。「座長だから」と先頭に立ってみんなを引っ張っていくよりも、お芝居の加減が難しい中で恵子としてきちんと存在する方が、作品にとって重要だと思ったので。その結果、いただいた「怪演」という評価については正直、自分の中でまだ消化しきれていませんが、皆さんにご覧いただけている証だと思い、褒め言葉と受け止めています(笑)。

−長年、芸能界の第一線でご活躍されてきましたが、今回の主演も素晴らしいご活躍ぶりです。長年のご活躍の理由を、ご自身ではどのようにお考えでしょうか。

 改めて考えたことはありませんが、振り返ってみると、いろんな役柄をやらせていただいて、一つ一つの作品との出合いが大事だったなと思います。難しさを感じながらも、偏ることなく、さまざまな役をやらせていただいた積み重ねの結果として、今があるので。若い頃は、私が出ると「怖いキャラ」といった感じで、イメージが固定していた時期もありました。でも、たまたまコメディーに出演させていただいたことをきっかけに、イメージが変わっていって。そういうきっかけになる作品に、自分は恵まれていたと思います。

−とはいえ、俳優の方は役を選ぶことができませんよね。そういう多彩な役をつかむために、どんなことを心がけてきましたか。

 一つ一つの作品に、きちんと向き合うこと。それと、自分だけでなく、共演者や周りの皆さんにとってもいい結果が得られるように、ということは昔から心がけてきました。

−詳しく教えてください。

 お芝居は、相手との関係性で成立するので、私のリアクション一つで相手のキャラクターが決まってしまうことが少なくありません。だから、自分がやりたいようにお芝居するのではなく、相手のキャラクターを引き立てるには、自分がどんなお芝居をすべきなのか。そこは常に意識していることです。







−そのきっかけになった出来事はあったのでしょうか。

 大きなきっかけになったのは、「ナースのお仕事」(1996〜2014年にかけてシリーズ化)です。あの作品では、主人公の新米ナース、朝倉いずみ(観月ありさ)と私が演じた先輩・尾崎翔子の関係を、皆さんに好評を持って受け止めていただくことができました。それは、2人の関係を作っていく上で、お互いに相手の良さを引き出す形を模索していった結果だと思っています。

−どういうことでしょうか。

 たとえば、私が怒ったとき、相手が「怖い!」という顔をすればただ怖いだけで終わってしまいます。でも、甘えた表情を見せれば、怖いけど頼られている先輩になるわけです。といっても、こちらが相手のリアクションを指示することはできません。だから、できるだけ相手がリアクションをとりやすいように、自分のお芝居を工夫する。逆の立場になったら、相手にとってベストなリアクションをするように自分も心掛ける。そういうことを考えながらお芝居したことは、その後の自分にとって大きな糧になりましたし、この作品にも生きています。

−そんな松下さんの俳優としての原点が、デビュー作となる青春映画『アイコ十六歳』(83/主演は富田靖子で、松下はその親友役)です。キャリアを重ねた今、当時を振り返ってどんな思いがありますか。

 当時のことは、「用意、スタート!」から「カット!」まで、今も鮮明に覚えています。それまで私は、テレビドラマを見て「この中に入ってみたい!」と憧れていた名古屋のごく普通の中学3年生でした。そんな女の子が、運よくオーディションに合格し、急にお芝居することになったわけです。でも、お芝居なんてやったことないし、現場を見たのも初めて。だから、できない悔しさも味わいましたが、それ以上に心地よかったんです。その時に感じたお芝居の面白さが忘れられず、時には大変な思いをしながらも、ここまで続けてきたんだと思います。

−キャリアを積んだ今、当時の自分に声をかけるとしたら、どんな言葉をかけますか。

 これまで自分を褒めたことはありませんが、「いろいろ思うことはあるだろうけど、今やっているそのお芝居でいいんだよ」と褒めてあげたいです。若い頃は常に「もっとできるかも」と思いがちで、実際、過去の作品を見返すと反省点もたくさんあります。でも、今なら当時の自分に「あれがその時のベスト。精いっぱいやったね」と言ってあげられそうな気がします。

−ご活躍の支えとなった座右の銘などはありますか。

 特に意識したことはありませんが、あえて挙げるとすれば、「初心忘るべからず」でしょうか。結局、うまくいかないときなど、ことあるごとに初心に戻ってくるんですよね。自分が若い頃、ダンスを習っていたからかもしれませんが、基礎はやっぱり大事だと思います。「型破り」も、基礎がなければできませんし、私自身、原作やモデルになる職業がある役は、その基礎をきちんと体に入れてから、作品に合わせて崩す、という捉え方が好きなんです。

−そうやってキャリアを積んでたどり着いた吉川恵子という役に対する思いを、改めてお聞かせください。

 実は今回、初めて自分の中のちゅうちょする気持ちを、事前にすべて取り除いて臨むようにしたんです。最初は、強烈すぎるキャラクターに戸惑う気持ちもありました。でも同時に、それを面白がるだけでなく、しっかりとした方向性を持って作れたら、いい作品になるのでは、とも思ったんです。監督やプロデューサーとお話をしてみたら、その点で通じあう部分もありました。ただそれには、自分がちゅうちょしてはダメだと。演じることに関して、今までも迷うたびに話し合って乗り越えてきましたが、この作品に関しては、そういう迷いを1ミリも残したくないと思って。そんな経験は初めてでした。

−それには現場の協力も大きかったのでしょうか。

 雰囲気もとても明るく、役柄や作品についてしっかり話し合える現場で、すごくありがたかったです。作品のムードを考えると、最初は「緊張感のある現場なのかな?」とやや警戒していたんです。でも、実際は真逆で驚きました。私が今まで経験してきた中でも指折りの雰囲気のいい現場でした。

−それでは最後に、クライマックスが近づく今後のドラマの見どころを教えてください。

 第9話で、これまで築き上げてきた恵子と拓人の関係が一度、壊れるところまで行きつきました。これから2人の関係がどう展開していくのか、今は皆さん、予測がつかない状況だと思います。「私があなたを支配するまで」という副題の本当の意味が明らかになるものもこれからなので、ぜひ“第二章”となる今後の展開にご期待ください。

(取材・文・写真/井上健一)

 「ディアマイベイビー〜私があなたを支配するまで〜」は毎週金曜 深夜24時12分からテレ東系で放送中。動画配信サービスLemino、U-NEXTにて第1話から最新話まで独占見放題配信。ネットもテレ東、TVerにて第1話から第3話、最新話を無料配信。


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