007号車アストンマーティン・ヴァルキリー(アストンマーティンTHORチーム) 6月6日(金)、フランス西部のサルト県ル・マン市内でWEC世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間レースの公開車検1日目が始まった。初日は39台の参戦車両とドライバーが、詰めかけた多くのファンの前に姿を現した。
■「圧倒的に進化している」とマクラーレンの佐藤万璃音
レースが開催されるサルト・サーキット(ル・マン24時間サーキット)から北に数km。ル・マンの公開車検は市内の中心部にあるリパブリック広場で開催される。車両各部のチェックのほか、ドライバーらは参加受付や写真撮影、メディアへの取材対応、ステージ上でのトークショーなどを行ったのち、マシンやチームクルーとともに恒例の集合写真に収まる。合間ではドライバーたちによるファン対応があるうえ、車両を間近で見られるとあり、毎年多くの観客が集まる、レース前恒例の大人気イベントだ。
ル・マンの主催者であるACOフランス西部自動車クラブによりあらかじめスケジュールが決められ、各車両/ドライバーは、指定された時間に広場へと姿を見せる。今年はハイパーカークラスにポルシェ963を、そしてLMGT3クラスに2台のフォード・マスタングGT3を送り込む、プロトン・コンペティションがトップバッターを務め、2日間の公開車検が始まった。
朝の気温は13度程度と肌寒いコンディションとなったル・マン。前日から朝までは雨が残っていたが、天候は徐々に回復、気温も上昇傾向となる1日となった。
午前中は、5台のLMP2車両を含め、WECに通年参戦していない車両が目立つラインアップとなった。女性ドライバー、リル・ワドゥを擁してELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズに参戦しているリシャール・ミルAFコルセは、トリコロールカラーで登場。ワドゥの地元戦を祝う形となった。
ハイパーカークラスからはBMW Mハイブリッド V8の2台も姿を見せるなか、午前中の最後を飾ったのは3台のシボレー・コルベットZ06 GT3.R。とりわけ、IMSAのGTDクラスでブロンズドライバー最高位を獲得したことで出場枠を得たAWAの13号車は、チームの国籍であるカナダ国旗を模した鮮やかなレッドカラーで観衆を魅了した。
午後の幕開けは、マンタイがオペレートする3台のポルシェ911 GT3 Rから。映画『F1/エフワン』の劇中に登場する『チップ・ハート・レーシング』のカラーリングを模した90号車では、ドライバーたちも架空のチームのロゴ入りのレーシングスーツで登場。ひときわ注目を集めていた。
アイアン・デイムスの85号車の特別リバリーにもファンからは大きな注目が集まるなか、ル・マン“復帰”となるメルセデスにも熱い視線が注がれた。メルセデスAMG GT3 EVOの3台はザウバー・メルセデスC9のオマージュカラーとなっている。
キャデラック・ハーツ・チーム・JOTAの2台に加えて、キャデラック・ウェイン・テイラー・レーシング、キャデラック・ウェーレンという2台がIMSAから参戦してくるキャデラックVシリーズ.R勢も、WTRの101号車のブルーの特別リバリーと相まって、目立つ存在となった。
そして、今季からWECに参戦を開始したアストンマーティン・ヴァルキリー2台の登場が、車検初日の一番のハイライトとなった。2台のマシンが車検場脇に下ろされると、この日一番の熱気が周囲に漂った。
終了間際には、LMGT3とLMP2に参戦するユナイテッド・オートスポーツ勢が登場。95号車マクラーレン720S GT3 Evoを駆る佐藤万璃音も、参加受付を終えるとメディアミックスゾーンに姿を現した。
マクラーレンでのフル参戦2年目を迎えている佐藤は、「去年は、チームもこのクルマを走らせるのが1年目で、シーズンの中盤くらいまでパフォーマンスの面に集中するということが難しかったのですが、今年はカレンダーがまったく同じということもあり、圧倒的に自分たちが進化していることを分かりやすく感じています」と、昨年と比べた現状を語った。
自身2度目の大一番に向けても、「昨年はフリー走行、予選と苦戦してましたが、レースではクルマをかなりいい状態に持っていけたので、今年はそこからスタートできれば、さらにレベルアップできると思います」と前向きだ。
車検1日目は、地元フランスのアルピーヌ・エンデュランス・チームの2台のA424が大トリを務める形となり、ステージ上でのトークショーでは、昨年終盤戦に現役を退きスポーティング・ディレクターに就任したニコラ・ラピエールが引退を労われる場面も見られた。
2日目となる7日土曜は、フェラーリ499Pの3台を皮切りに、ポルシェ963、トヨタGR010ハイブリッドを含む23台が登場。午後からは、市内の公道を使ったパレードも行われる予定で、土曜日ということもあって初日以上の人出が見込まれる。ル・マン市内は、徐々に熱気が高まってきているところだ。
以下、車検1日目の様子を写真でお伝えする。
[オートスポーツweb 2025年06月07日]