2025年F1第9戦スペインGP FIA会見 左からクリスチャン・ホーナー代表(レッドブル)、フラビオ・ブリアトーレ(アルピーヌ エグゼクティブアドバイザー)、マリオ・イゾラ(ピレリ レーシングマネージャー) 昨年のスペインGP初日にアルピーヌは、かつてベネトンやルノーF1を率いたフラビオ・ブリアトーレをエグゼクティブ・アドバイザーとして迎え入れることを発表した。
あれから約1年後の今年の第9戦スペインGPの国際自動車連盟(FIA)の公式記者会見に、ブリアトーレがアルピーヌの代表として登場した。
ブリアトーレは2008年のシンガポールGPで、当時チームに所属していたフェルナンド・アロンソを勝たせるために、そのチームメートだったネルソン・ピケに故意にクラッシュさせるという『クラッシュゲート事件』を企てた罪に問われ、チームから解任されただけでなく、F1から永久追放処分も受けていた。その後、処分は取り下げられ、ブリアトーレは再びF1のパドックに復帰していたが、FIAの公式な会見に登場するのは解任された2009年9月以降、初めてのこととなった。
そのため、今年のスペインGPの会見ではブリアトーレへ質問が集中。この会見にはレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表も出席していた。通常なら、多くの質問を受けるホーナーだが、この日ばかりはブリアトーレの名脇役に徹していた。
ブリアトーレ節は冒頭から炸裂した。司会者が「アルピーヌの執行顧問に就任してから12カ月が経ちました。この1年間、チームをどのように見てましたか?」と尋ねると、ブリアトーレは「12カ月未満だよ。だって給与明細は10カ月分しかないからね」といきなりカウンターパンチを浴びせた。
また記者から「2025年または2026年に、ミック・シューマッハーがアルピーヌからF1に復帰する姿を見ることができますか?」と質問されると、ブリアトーレはその質問を次のように言って切り捨てた。
「なぜいま、シューマッハーの話をしているのか。今はまだ2025年だ。何が知りたいのか、理解できない」
そこで隣に座っていたホーナー代表が「ミック・シューマッハーと契約するつもりなのかと聞いているんだよ」と突っ込むと、「もちろん。誰もがそう言っているからね。でも、それはいまここで答えるべきではないと思う。次の質問に行こう」と、煙に巻いた。
現在のドライバーについての質問でも、ブリアトーレ節は全開だった。ブリアトーレが会見の冒頭でアルピーヌをチャンピオンにすると語ったため、記者から「ピエール・ガスリーが将来の世界チャンピオンになると思いますか?」と質問された。ブリアトーレはこう回答した。
「それはニワトリと卵の関係と同じだ。競争力のあるマシンがなければ、ドライバーの真の能力を判断するのは非常に困難だし、競争力のあるマシンを実力のあるドライバーは必要としている。だから、我々はまず競争力のあるマシンを用意しなければならない。ガスリーがどのレベルにあるかを判断するのはそれからだ。ただ、ガスリーについてはクリスチャンの方がよく知っていると思うがね」
ホーナーはこう返した。
「なんのことかよくわからないが、そんなことより、フラビオが戻ってきてうれしいよ。会見がとても楽しいからね。あなたがいない間の記者会見はとてもつまらなかったよ」
ブリアトーレも負けない。
「いいや、この20年間、何も変わっていないよ。あっ、ちょっと変わったな。白髪の人たちが増えたね」
すかさずホーナーが突っ込む。
「髪がない人たちも増えたね」
最後にブリアトーレがこう締めた。
「俺も髪が薄くなったしな。でも、(隣にいるピレリのマリオ・)イゾラは違う。イゾラはまだイケメンだ」
このやりとりに、会見場は大爆笑。ブレアトーレ節は、ライバルチームの代表にすら立ち入ることを許さないほど強力だった。
[オートスポーツweb 2025年06月07日]