
テレビ、YouTube、CM業界などの放送作家として、数々のコンテンツを作り出してきた澤井直人(35)。今、ほかの誰よりも「人間」に興味がある平成生まれの彼が、「話を聞きたい!」と思う有名人と対談する、好奇心と勢いだらけのインタビュー企画『令和にんげん対談』!
第16回は、ものまね界のベテラン、原口あきまさ・ホリ・ミラクルひかるが登場! 昨今のものまね業界に思う本音から営業の裏話まで、お三方のぶっちゃけ話で盛り上がった一部始終をお届けします。
原口あきまさがものまね賞レースをやんわり避けている理由
澤井直人(以下、澤井):本日はありがとうございます!私は普段ものまね番組の作家をしている事もあり、今日はぜひお三方に色々お話を伺いたいなと。
ホリ:最近感じるのは、ものまね番組の系統が変わったよね。
原口あきまさ(以下、原口):僕もここ6〜7年は、あまりものまね番組出なくなったなあ。
澤井:え、それはなぜですか?
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原口:対戦形式の番組が増えたのが、なんとなく迷走しているなと思って。ものまねって歌やしゃべりと色々カテゴリーがあるから、絶対に好き嫌いが分かれるんですよ。だから対戦形式にすると、審査員も点数つけづらいだろうし、演者も自由に楽しめないというのがあって。
フジ(テレビ)の『ものまね王座決定戦』みたいに、歌ネタのジャンル限定であれば比べやすいし、お祭り感もあって盛り上がるんだけどね。あとは審査員がプロの方々で、正当に評価してもらえてれば納得できるんですけど……。
ホリ:このまえ某番組にコロッケさんが出てた時、審査員が若いモデルの子で、絶対ものまねに疎い雰囲気なのね。それで高得点つけて「よく分かんないけど面白かったです」ってコメントしててさ、もうカオスだよね(笑)。そういう意味では点数つけない方がいいと思いますよ。
ミラクルひかる(以下、ミラクル):私は勝ち負けあるとつい見ちゃうタイプだけど、ものまねって比較するの難しいし、演者はしんどいですよね。
ホリ:対戦形式にして、フックをつけたがる制作側の事情も分かるけどね。生放送なら現場の温度感も伝わると思うけど、後から編集されるうえプロデューサーの方々に指示出されちゃうと、やりたいようにできないジレンマを抱える芸人は多いよね。
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原口:たしかに、ものまね芸人って立ち位置が特殊ではあるよね。みんな芸歴もあってクオリティ半端ないプロも多いけど、一方で素人が優遇されている風潮もあるし、なかなか難しいところではあるよね。
ミラクル:だからプロデューサーさんとか作家さんの手腕が問われますよね(笑)
澤井:作家の自分からすると刺さるお言葉ですね!
原口:最近だと、TBSの『俺にアイツを歌わせたら右に出るものはいない』は歌ネタ限定だし、審査員がアーティストだから新しいよね。あとはテレ東の『ものまねランキング』も、まずMCがものまね好きな出川さんだから現場がホーム。そういう意味ではコンセプトが新しい番組もある。
ミラクル:『水曜日のダウンタウン』の「先生のものまね、プロがやったら死ぬほど子どもにウケる説」も面白かった! ものまね芸人はステージに立ってネタを披露する以外は、芸能人にものまねを教えることくらいしか需要がないのかなと思ってましたけど、まだまだ良い企画を考えてくれてる方がいると思うと燃えますよね(笑)
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原口:面白い企画だとこちらも気合入って、いまだにムキになることもありますよ(笑)。制作側が上手にものまね芸人の特徴を生かしてくれているなと感じる瞬間もありますね。
新旧ものまね芸人の違いとは?
澤井:それこそ最近は、素人に近い方がテレビでものまねをする機会も増えました。ものまね界全体の潮流はどう感じていますか。
原口:それで言うと、ものまねアーティストというジャンルが新しくできましたよね。いわゆる歌を精密にカバーするような人たち。
ホリ:コロナぐらいからSNSや配信ブームになって、そこで跳ねた人たちが歌モノ系の番組に出る流れはありますよね。
自分たちの時代は素人ものまね番組が結構あって、関根さんとか松村さんとかがそこからデビューする流れが目立ってました。番組に出ると、ものまね系のプロダクションの人が観劇してて、そこでスカウトされることもあって。だから時代背景とか環境も違うんだろうなと。
原口:いまのものまね界は、大きく2つにカテゴライズされがちなのかなと。1つは精密にアーティストの歌を真似る人、もう1つは茶化しながらも喋りや所作を真似て笑いをとる芸風の人。特に若手は前者ですよね。
澤井:逆に、お三方は後者ですよね。歌を上手く真似るんじゃなくて、あくまでもものまねで笑いを取りに行くスタイルで。
原口:そうですね。「リアルを追求する」か「笑いを取りに行くか」の違いで、結局はどっちが自分が気持ちいいかなんですよね。とはいえ、どっちも求めているのが正直なところなので、一概には言えないんですけど。
ミラクル:ものまねって演技力が大事だと思うんですよね。私なんか新田恵利さんのものまねしてますけど、別に歌を完璧に再現しているわけではない。どちらかというと新田さんの癖とか佇まいとか、特徴的なポイントを取り上げて笑いにしている感覚です。
ホリ:だから我々のやり方は、コピーっていうより、風刺に近い感覚なんだよね。
ミラクル:そうそう。そっくりさんではないんですよね。
ホリ:俺なんか木村拓哉に似ているわけないのに、木村拓哉ですって言ってるからね(笑)。原口さんがさんまさんなわけないのに、なぜか「つけ歯したらさんまさんに見える」みたいな。顔似てないところを、そこに寄せて笑わせる感覚だよね。
我々はお笑いの畑で……
澤井:逆に、今のアーティストを忠実に再現するものまねをされる方は、それが笑いにつながるかと言われるとまた違いますよね。
原口:めちゃくちゃ真似する技術は高いんだけど、ネタが面白いかと言われると別だよね。配信では再生回っているけど、逆に対面でのライブが苦手だったり、喋ってみると空気感がなかったりする人はいるかな。僕は逆で、ライブでの客の絡みは得意なのに、YouTubeが全然回らない(笑)。
ホリ:だから技術が高い人は、コアなファンがついてる人が多いかもね。
原口:我々はお笑いの畑で広く立ち回る感じかな。ネタもやれば、場も回すし、監督的な立場にも回るし。
澤井:本当に皆さんが盛り上げてくれるおかげで、今日の対談がライブみたいで楽しいです(笑)。みなさんの喋りや場を回すスキルは、やはり営業で培われきたものなのでしょうか?
原口:一概には言えないけど、少なくとも死ぬほど恥はかいてるよね(笑)。逆にそこから逃げたらダメというか。上手く伝わらないかと思いますが、スベる快感もあるんですよね。
ホリ:自分の出順の前がそんなにウケてないと出るの怖いけど、なんとか空気変えたいみたいな。あとは本番中スベっているのを、そこからどうフリにして、オチに持っていくかを考えている時はゾクゾクしますよね(笑)。
原口:この3人で営業一緒になることも多いんですよ。この間は、まずホリが出たら会場の空気が重くて、その次にミラクルが出たら盛り上がって、プレッシャーに感じながら僕が登壇したらホリと同じような空気になって(苦笑)。内心やべえどうしようと思いながら、最後ミラクル呼んで3人で盛り上げてみたいな(苦笑)。
ホリ:現場によって、会場の空気が全然違いますよね。 「あれ、今日盛り上がるのに時間かかるな」とか、その辺りは生って感じがします。
「ベテランこそアウェーの現場が多いですよね」
澤井:結構、現場によっても全然雰囲気が変わるんですね。
ミラクル:結構、ベテランこそアウェーの現場が多いですよね。
原口:ショーやっている目の前で、お客さん同士が名刺交換してるとかね。
ミラクル:営業先の主催者も、お客さんの反応があまり良くないのを察知しているから、やけに弁当が豪華な時あるんですよ。こっちからしたら逆にやばいみたいな(笑)。
ホリ:二段弁当のやつね。弁当の豪華さで勘弁してくださいって言われてる感じで(笑)
原口:でも逆境の方が燃えますよね、 本当におじさんのファンが多い時もあるし。それに営業とか企業パーティー行く時って、結構メンツが被ることも多くて、そこはアットホームな感じですね。仲良くなった営業先の人から、ホリとかミラクルの写真が送られてきたり。あとはテツandトモとか。
ホリ:あとは小石田純一とか、ダブルネームもよくバッティングするよね。最近だとTKOの木本さんが客席にいたこともあって(笑)。
澤井:ちなみに今年の夏も、お三方とJPさんの4人で、ライブを敢行されると聞きました!
ホリ:そうなんです。7月30日に、札幌文化芸術劇場で。この4人でやるのは初めてじゃない?
原口:そうですよね。しかもキャパ2300人ぐらいって聞いて、そんな大きい箱でやることもないよね。
ホリ:だから見やすいように、なるべく分かりやすくやろうと。テレビではあまりやらないネタも披露する予定です。
原口:やっぱり生のライブの良さを見せたいよね。対面でファンと会うと「原口さんテレビで見るより大きいですね」って言われたりも、ライブならではですね。「ミラクルさんかわいいいですね」とか、「ホリさんは別に変わんないですね」とか(笑)。
ミラクル:テレビで観るのと対面の印象って結構変わりますよね。そうした距離感の近さを味わっていただければ。
あと皆さん結構真剣なんですよ。もちろんスベりたくないし、ネタも被らないようにしないといけないし、後輩のJPには負けられないし(笑)。そうした空気感も見てもらえたらと思いますね。
澤井:そうした現場の駆け引きも醍醐味ですね。ライブ楽しみにしております!