
現在放送中のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』は、後姿だが女性の裸のシーンや花魁の濡れ場、オープニングで《番組の一部に性の表現があります》というテロップが流れるなど、これまでの作品とは一線を画した異色の内容になっている。
『江戸時代の出版王・蔦屋重三郎』の生涯がテーマということで、合戦シーンや大事件が描かれることはなく、オールド大河ファンにとっては物足りない作品になるのではないかと懸念されたが、蓋を開けてみたら、そんな考えは杞憂だった。
“参考書”番組も放送
《痛快時代劇だ。毎回わくわくする》《これぞ大人が視て楽しめるドラマだ》と、評判はすこぶるいい。そして、視聴者からはこんな声が上がっている。
《毎回、勉強になる。というか、“これは何だろう”とすぐにわからないことが多くて、自分で調べなきゃならない》
『べらぼう』では『吉原細見』を始め、『赤本』、『青本』など江戸時代に出版されていた書物が頻繁に出てくる。ドラマを視ているとこれがどんな書物なのか、なんとなく想像できるが、詳細は分からない。中には、想像すらできないものもある。視聴者に、より『べらぼう』を理解してもらいたいと思ったのか、NHKでは『浮世絵EDO-LIFE』という、同ドラマとリンクした“参考書”のような親切な番組も放送されているほどだ。
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内容が分かりにくいとなれば視聴者は離れていくものなのだが、『べらぼう』は違うようだ。テレビ誌ライターによれば、
「わからない言葉が多いとしても、主人公が毎回、小気味よく問題を解決していくストーリーが痛快で、満足感の方が大きいんです」
「クレームなし」の理由
また、視聴者が離れていかないことにはこんな理由も。
「これまでの大河で主人公になった源義経や徳川家康、渋沢栄一などは教科書にも出てきた有名な人物ですが、今作の主人公・蔦屋重三郎のことを詳しく知っていた人はほとんどいないでしょう。昔だったら人物事典を見るか、わからない言葉を聞いたら辞書で調べるしか手段がなかったのですが、今はインターネットという便利なツールがありますから、簡単に検索できます。慣れた人なら、ドラマを見ながらでも検索できますし、それほど苦痛ではありません」(同・テレビ誌ライター)
NHKの関係者は、こう語る。
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「大河だけではなく、ほかの民放の時代劇でも、話し言葉はその時代の言葉のままだとわかりにくいので、できるだけ現代の言葉に変えています。『鎌倉殿の13人』や『光る君へ』などでも現代風にアレンジしていて、確かに違和感があると思いますが、クレームを言ってくる視聴者はいませんでした。『べらぼう』でも話し言葉は江戸弁で若干、現代風にしていますが、当時の専門用語は変えることはできないので、そのままにしています。最近のテレビは字幕を出すこともできるので、音だけでなく文字も確認でき、調べやすいと思います。今のところ、“わかりにくい”といったクレームは来ていませんね」
そして、どうやら視聴者は“検索”そのものを楽しんでいるようなのだ。大河ファンからは、こんな声も聞かれる。
《新しい知識を得ることで、うんちくが増え話題が増えるのはいいことですし、ボケ防止にもなりますから。Eテレで放送してもいいくらいです》
面白いだけでなく、勉強にもなる『べらぼう』は“学習型ドラマ”という新しいジャンルを築くのではないだろうか――。
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