ルーバー開口部は“エンジンにダメージを与えないギリギリ”まで調整。低速域と暑さが難敵のスペイン:ホンダ/HRC密着

0

2025年06月09日 18:00  AUTOSPORT web

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AUTOSPORT web

2025年F1第9戦スペインGP マックス・フェルスタッペン(レッドブルRB21)
 2025年F1第7戦エミリア・ロマーニャGPの予選で大クラッシュした角田裕毅(レッドブル)のパワーユニットはHRC Sakuraに空輸し、調査している最中だ。ホンダ・レーシング(HRC)の折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー)によれば、「使えそうな状況なので、現時点ではそれをどうやって修復するかを話し合っている」ということだ。

 一度グランプリで使用したパワーユニットは、国際自動車連盟(FIA)によって次のグランプリで使用するまで封印される。そのため、エンジン(ICE)を分解したり、火を入れることはできない。ただし、カーボンを貼るなどして、ダメージを受けた箇所を補強することはできる。実際に使用するかどうかは別にして、選択肢を増やすという意味で可能な限り補強して、プールに入れるものと考えられる。

 第8戦モナコGPではフェルスタッペンのターボとMGU-Hに「データ的にHRC Sakuraで確認したいことが出てきた」(折原)ため、3基目を投入した。8戦目にして3基目の投入というペースを考えると、シーズン後半にペナルティは不可避という印象を受けるが、ターボとMGU-Hに問題がないことが確認できれば、心配することはないだろう。フェルスタッペンにはもう1基、ユーズドのターボとMGU-Hがあった。それを使用せずに3基目を投入した理由は、ICEのローテーションが関係していると考えられる。

 フェルスタッペンのパワーユニットは開幕戦から第4戦バーレーンGPまでが1基目で、第5戦サウジアラビアGPに投入した2基目を第7戦エミリア・ロマーニャGPまでの3戦で使用したと思われる。今年のF1は全24戦を4基のパワーユニット(ICE、ターボ、MGU-H、MGU-K)で戦う。つまり、単純計算で1基あたり6戦使用することになる。

 HRCとしては最もパワー感度が低いモナコGPで3基目のターボとMGU-Hに合わせて、ICEも3基目を投入するより、最もマイレージがかさんでいる1基目を再使用したかったのだろう。

 第9戦スペインGPでフェルスタッペンは再び2基目を使用したと考えられる。そして、おさらく次戦カナダGP、第11戦オーストリアGPと使い続けるはずだ。これにより2基目を6戦使用し、第12戦イギリスGPに3基目のICE、MGU-KにモナコGPで投入した3基目のターボとMGU-Hを組み合わせたパワーユニットを投入するものと考えられる。このローテーションを崩したくなかったので、モナコGPで3基目のICEを投入したくなかったと思われる。

 さて、3連戦の最後の1戦となったスペインGPは、厳しい暑さのなかで行われ、どのチームもクーリングの調整を細かく行っていた。冷やすためだけなら、ルーバーなどの開口部を開ければいいが、それでは空力的にデメリットが多く、1000分の数秒だがタイムが落ちる。エンジンにダメージを与えないギリギリのレベルまで冷却用の開口部を閉じるという調整をフリー走行ではどのチームも行っていた。

 折原GMも土曜日のフリー走行3回目を終えた後もレッドブルのエンジニアと話し合い、予選とレースに向けての設定を決定した。

「どこまで開けるかをチームとフリー走行3回目でも話し合い、予選とレースに向けての設定を決定しました」(折原GM)

 その冷却用の開口部の設定でアタックに出たフェルスタッペン。Q3の最後のアタックではなんと4番手のジョージ・ラッセル(メルセデス)と1000分の1秒台まで同タイムだったが、先にタイムを記録したフェルスタッペンが予選3番手となった。もしフリー走行3回目後の話し合いで、ルーバーの設定を少しでも保守的にしていたら、この3番手はなかった。

 こうした努力の末につかんだフェルスタッペンの予選3番手。しかし、レースではセーフティカーの導入が味方せず、フェルスタッペンはペナルティもあって10位に終わった。

 折原GMはこう語る。

「バルセロナはいろいろな種類のコーナーがバランスよく配置されていますが、そのなかで低速コーナーが多いセクター3でライバルに差をつけられていました。次のカナダも低速コーナーが多いので、厳しいかもしれません。でも、やってみないとわからないので我々としてはしっかりと準備するだけです」

[オートスポーツweb 2025年06月09日]

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定