



このところケンは、リビングにいてもスマホが鳴るとすぐに反応します。私の誕生日すらも忘れてしまっていました。当日はレストランで食事をすることになっていたのですが、羽田さんとの時間を優先したのか約束をすっぽかされました。


「再来週はテーマパークに行ってくる。イルミネーションを見たいって言われてて」ケンにそう言われ、私は思わず「え?」と声をあげます。そのテーマパークは子どもたちが行きたがっていた場所。来月家族そろって行くはずだったのに……?



私は決してケンと羽田さんの関係を疑っているわけではありません。ケンの行動がすべて「罪滅ぼし」の意識からきているということは分かっています。けれど自分の夫が他の女性と2人きりで出かけることを容認するほど、私はデキた人間ではないのです。嫌な気持ちになってしまうことは事実なのです。
私には自分や羽田さんの気持ちは分からないとケンは言いますが、私からすればケンも私の気持ちが分かっていません。しかしこれ以上騒いだところで言い合いになってしまうだけでしょう。だったら……。そのとき私の口からは「私たちも一緒に行きます」という言葉が出たのでした。
【第9話】へ続く。
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